
こんにちは。相続した土地や実家の売却について一緒に考える、カズです。
私は不動産の仕事を20年以上やっていますが、相続した土地の相談では「相続税の手続きは終わったけど、土地を売ったらまた確定申告が必要ですか」と聞かれることがあります。
相続した土地を売却して譲渡所得が出た場合は、原則として確定申告が必要です。一方、売却による利益が出ておらず、申告を前提とする特例も使わないなら、その土地売却だけを理由とした所得税の確定申告が不要になるケースがあります。
ただし、売れた金額だけでは判断できません。親などから引き継ぐ取得費、売却に直接かかった費用、相続税を納めているか、使える特例があるかまで確認します。
- 相続した土地の売却で確定申告が必要になる条件
- 親の購入価格が分からない場合の取得費
- 確定申告で準備する書類と申告手順
- 取得費加算など特例を使うときの注意点
30秒で確認
- 売却益が出た → 原則として確定申告が必要
- 売却損になった → 特例等がなければ申告不要となる場合がある
- 取得費加算などを使う → 特例を受けるため申告が必要
- まだ土地を売っていない → 売却による譲渡所得の申告はまだ発生しない
相続した土地の売却で確定申告が必要なケース
まず確認したいのは、土地がいくらで売れたかではなく、売却による利益である「譲渡所得」が出ているかです。
相続税と土地売却後の所得税・住民税は別の税金です。そのため、相続税をすでに申告・納付していても、土地を売って利益が出れば別に確定申告が必要になることがあります。
売却益が出たら原則申告する
土地や建物を売却して譲渡所得が生じた場合は、原則として売却した年分の確定申告を行います。
課税譲渡所得=売却価額-取得費-譲渡費用-適用できる特別控除
たとえば土地を3,000万円で売ったからといって、3,000万円すべてが利益になるわけではありません。
親が土地を買ったときの取得費や、仲介手数料、売却のために必要になった測量費などを差し引いて利益を計算します。
反対に、取得費や譲渡費用を差し引いた結果として譲渡所得が生じず、申告によって利用する特例もない場合は、その土地売却だけを理由とする所得税の確定申告が不要になるケースがあります。
まず4項目で申告要否を確認
自分の場合に確定申告が必要か迷ったら、次の4項目を先に確認してください。
| 確認項目 | 確認する資料 | 見る理由 |
|---|---|---|
| 売却価額 | 売却時の売買契約書 | 譲渡所得の収入金額になる |
| 取得費 | 購入時の契約書・領収書 | 売却利益を大きく左右する |
| 譲渡費用 | 仲介手数料・測量費等 | 売却に直接必要な費用を差し引く |
| 使える特例 | 相続税申告書等 | 申告要否や課税額に影響する |
実際の税率や税額まで確認したい方は、相続した土地の売却税金と計算方法で詳しく解説しています。こちらの記事では確定申告の要否と申告手順を中心に見ていきます。
取得費は親の購入額を引き継ぐ
相続した土地の確定申告で、特に間違えやすいのが取得費です。
相続したときの土地の相続税評価額や固定資産税評価額が、そのまま売却時の取得費になるわけではありません。
原則として、亡くなった親など被相続人が土地を取得したときの購入代金や購入手数料などを引き継ぎます。土地を取得した時期についても、被相続人の取得時期を引き継いで判定します。
国税庁でも、相続によって取得した土地・建物について、被相続人が取得したときの購入代金等をもとに取得費を計算する扱いが示されています(出典:国税庁「相続や贈与によって取得した土地・建物の取得費と取得の時期」)。
コンサルタント @KAZU相続した家を片付けるとき、古い売買契約書や領収書を「もう使わない」と捨てないでください。土地を買ったときの金額が分かる資料は、売却後の税額に大きく影響することがあります。通帳、ローン資料、造成費の領収書なども一度確認してみてください。
取得費不明なら5%も使える
親が数十年前に購入した土地などでは、売買契約書が見つからず、いくらで取得したのか分からないことも珍しくありません。
このような場合などは、売却価額の5%相当額を概算取得費として使うことができます。3,000万円で売却した土地なら150万円です。
ただし、5%を使えば税金が安くなるという意味ではありません。
本当は親が1,000万円で購入していたとしても、150万円しか取得費にできなければ、その分だけ譲渡所得が大きくなります。
取得費が分からないからといって、最初から5%で申告すると決めないこと。購入時の契約書、領収書、通帳、ローン関係資料などが残っていないか先に探してください。
取得費加算を使える場合がある
相続税を納めた人が、相続や遺贈で取得した土地などを一定期間内に売却した場合は、相続税の一定額を取得費へ加算できることがあります。
これが「相続財産を譲渡した場合の取得費の特例」です。
主な要件は、相続や遺贈により財産を取得していること、その人に相続税が課税されていること、定められた期間内に譲渡していることです。
期間は、相続開始日の翌日から、相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日までが基本です。一般には「相続からおおむね3年10か月以内」と説明されることがありますが、実際の期限は相続開始日から個別に確認してください。
適用を受けるには、確定申告書と所定の計算明細書などが必要です(出典:国税庁「相続財産を譲渡した場合の取得費の特例」)。
親の自宅だった一定の家屋と敷地を相続した場合は、被相続人居住用財産の3,000万円特別控除を検討できるケースもあります。ただし、単に更地を相続しただけで使える制度ではなく、取得費加算と同じ不動産の譲渡について重ねて使うこともできません。
まだ売却前なら手取りを確認する
ここまで読んで「まだ土地は売っていない」という方は、税金だけを先に計算するより、まず現在いくらくらいで売れそうかを確認すると手取り額を考えやすくなります。
相続税評価額や固定資産税評価額は、実際の売却価格そのものではありません。特に土地は、接道、形状、間口、境界、周辺の成約事例などによって査定額が変わります。
1社だけでは査定額が高いのか低いのか判断しにくいため、売却前なら複数社の査定価格とその根拠を比べる方法があります。
\ 売却前に土地の査定価格を比較 /
査定を受けた段階で売却を決める必要はありません。税金や費用を考えるための売却価格の目安として比較できます。
相続不動産で査定額をどう比べればよいかは、相続不動産査定で価格・根拠・手取り額を比較する方法も参考にしてください。
相続した土地を売却した後の確定申告の進め方
土地を売却して申告が必要だと分かったら、次は取得費や譲渡費用を確認できる資料をそろえます。
申告画面を先に開くより、必要な数字を手元にそろえてから入力を始める方が途中で止まりにくくなります。
申告は売却した翌年に行う
土地・建物の譲渡所得は、原則として売却した年分として、その翌年の所得税の確定申告で申告します。
所得税の確定申告期間は原則として翌年2月16日から3月15日です。2026年中に土地を売却した場合も、この原則に沿って2027年に申告することになりますが、実際の受付日や期限は令和8年分の国税庁案内で最終確認してください。
注意したいのは、相続した年ではなく「土地を譲渡した年」が基準になることです。
契約日と引渡日が年をまたぐなど、どの年分で申告するのか判断しにくい場合は、申告前に税務署や税理士へ確認してください。
必要書類を先にそろえる
確定申告では、税務署へ提出・添付する書類と、数字を確認するために手元へ置いておく資料があります。
| 書類・資料 | 主な用途 |
|---|---|
| 売却時の売買契約書 | 売却価額や譲渡内容の確認 |
| 購入時の売買契約書 | 取得費の確認 |
| 購入時の領収書等 | 取得時にかかった費用の確認 |
| 仲介手数料等の領収書 | 譲渡費用の確認 |
| 譲渡所得の内訳書 | 土地・建物の譲渡所得を計算 |
| 相続税申告関係資料 | 取得費加算を検討する場合 |
| 特例ごとの証明書類 | 各種特例の適用を受ける場合 |
集める順番は、売却契約書 → 親の取得資料 → 売却費用の領収書 → 相続税・特例関係資料。最初から提出物だけを探すのではなく、まず正しく計算できる資料をそろえましょう。
相続登記から売買契約、確定申告まで必要になる書類をまとめて確認したい方は、相続した不動産の売却に必要な書類一覧で確認できます。
e-Taxなら自宅から申告できる
土地・建物を売却した場合の確定申告も、国税庁の確定申告書等作成コーナーを利用してe-Taxで提出できます。
売却価額、取得費、譲渡費用などを入力し、利用する特例があれば該当する項目を確認して進めます。
スマートフォンから申告する具体的な操作は、不動産売却の確定申告をスマホでe-Tax提出する方法で詳しく説明しています。
ただし、e-Taxが計算してくれるからといって、最初に入力する取得費や特例の判断まで自動的に正しくなるわけではありません。
取得費が不明、取得費加算を検討している、土地と建物を一緒に売却した、共有者が複数いるといったケースでは、入力前に計算の前提を確認しておいた方が安心です。
共有なら各人で持分を確認する
兄弟など複数人で土地を共有し、その共有状態のまま売却した場合は、一般に各共有者が自分の持分に対応する譲渡価額、取得費、譲渡費用などをもとに譲渡所得を確認します。
たとえば代表者の口座へ売却代金をまとめて振り込んでもらったからといって、それだけで代表者一人の譲渡所得になるわけではありません。
登記上の持分、遺産分割の内容、実際の売却代金の分配を合わせて確認します。
◆カズのワンポイントアドバイス
売却が終わったら、「売却契約書」「親の購入時資料」「売却費用」「相続税資料」の4つに分けて保管すると申告時にかなり確認しやすくなります。特に親の取得資料はあとから取り直せないものもあるので、大切に残してください。



売却が終わったら、「売却契約書」「親の購入時資料」「売却費用」「相続税資料」の4つに分けて保管すると申告時にかなり確認しやすくなります。特に親の取得資料はあとから取り直せないものもあるので、大切に残してください。
申告前に3ステップで確認
- 取得費と譲渡費用を確認する:親の購入資料と売却時の領収書を集める
- 譲渡所得と特例を確認する:利益が出るか、取得費加算等を使えるかを見る
- 申告方法を決める:自分でe-Taxを使うか、複雑なら税務署・税理士へ確認する
取得費がどうしても分からない、相続税を納めている、共有者が複数いる、複数の特例が候補になる場合は、申告書を作り終えてからではなく、計算を始める段階で確認した方が進めやすいです。
税金は税理士、相続登記は司法書士、売却価格や売り方は不動産会社と役割が違います。相談先に迷う方は、相続不動産の相談先と専門家の役割も参考にしてください。
相続土地の確定申告FAQ
Q1. 相続税を申告済みでも土地売却の確定申告は必要ですか?
A. 売却によって譲渡所得が出れば、原則として別に確定申告が必要です。相続税は財産を相続したことに対する税金で、土地売却による譲渡所得への課税とは別に考えます。
Q2. 土地を売って損が出たら給与所得と相殺できますか?
A. 一般の土地・建物を売却して生じた損失は、原則として給与所得や事業所得などと損益通算できません。一定の居住用財産には例外となる特例がありますが、相続した土地だから自動的に利用できるものではありません。
Q3. 兄弟共有の土地は代表者だけ申告すればいいですか?
A. 共有状態のまま売却した場合は、一般に各共有者が自分の持分に対応する譲渡所得を確認します。代表者が手続きをしたという理由だけで、代表者だけの所得になるとは限りません。
Q4. 確定申告の期限を過ぎたらどうすればいいですか?
A. 申告が必要だったと分かった時点で、できるだけ早く期限後申告を行います。状況により無申告加算税や延滞税などが生じる場合があるため、申告漏れに気付いたら税務署や税理士へ早めに確認してください。
相続した土地の売却と確定申告まとめ
相続した土地を売却したら、まず売却価額から取得費と譲渡費用を差し引き、譲渡所得が出るか確認します。利益が出れば、原則として確定申告が必要です。
取得費は、原則として亡くなった方が土地を取得したときの購入代金等を引き継ぎます。取得費が分からない場合などは売却価額の5%を使う方法がありますが、課税される利益が大きくなる可能性もあります。
そのため、確定申告を始める前に親の購入資料、売却時の費用、相続税関係資料をそろえ、取得費加算など使える特例も確認してください。
- まず親の購入時資料と売却費用を確認する
- 次に譲渡所得と使える特例を確認する
- 判断が難しい場合は申告前に税務署・税理士へ確認する
確定申告は「いくらで土地が売れたか」だけでは判断できません。取得費、売却費用、共有持分、特例まで合わせて確認することが大切です。
まだ売却前なら:査定価格と税金・売却費用を分けて考え、最終的にいくら手元へ残りそうかまで確認すると判断しやすくなります。
相続した土地について、売却価格・名義・家族の状況・どの専門家へ相談すべきかが重なっていると、一般論だけでは進め方を決めにくいことがあります。
KAZUへの相談では、税務判断そのものではなく、相続土地の売却準備や必要な専門家へ相談する順番を一緒に整理できます。
\ 売却前後の進め方を一緒に整理 /
売却を決めていない段階でも、現在分かっている内容から整理できます。
まだ相談内容がまとまっていない場合は、LINEから短く状況を伝えることもできます。












