
こんにちは。相続した土地や実家の売却について一緒に考える、カズです。
私は不動産の仕事を20年以上やっていますが、相続した土地の相談では「3,000万円で売れたら、その3,000万円全部に税金がかかるんですか?」と聞かれることがあります。
実際には、売却代金の全額に税金がかかるわけではありません。親が土地を買ったときの取得費や売却に直接かかった費用などを差し引き、利益が残った部分をもとに税金を計算します。
そのため、同じ3,000万円で土地が売れても、親がいくらで取得したのか、所有期間は何年か、使える特例があるかによって税額はかなり変わります。
相続した土地では、親の購入価格が分からないケースも珍しくありません。査定価格だけを見るのではなく、税金や売却費用を引いたあとにいくら残りそうかまで確認しておくことが大切です。
30秒で確認したいポイント
- 売却代金全額ではなく、基本的に利益へ課税される
- 長期譲渡なら税率は約20.315%、短期譲渡なら約39.63%が基本
- 取得費が分からない場合などは売却価額の5%を使える
- 取得費加算や空き家3,000万円控除は期限と条件を確認する
相続した土地の売却税金はいくらかかる?
相続した土地を売ったときに特に大きくなりやすいのが、譲渡所得に対する所得税・復興特別所得税・住民税です。
そのほか、紙の売買契約書を作成する場合の印紙税や、売却前の相続登記で登録免許税がかかることもあります。まず、税金の種類を分けて見ていきましょう。
売却で関係する税金の全体像
| 税金 | いつ関係するか | 主な考え方 |
|---|---|---|
| 所得税・復興特別所得税・住民税 | 売却で利益が出たとき | 課税譲渡所得に税率をかける |
| 印紙税 | 紙の不動産売買契約書を作るとき | 契約書の記載金額などで税額が変わる |
| 登録免許税 | 相続登記などをするとき | 相続による所有権移転は原則として固定資産税評価額の0.4% |
相続税は、相続によって財産を取得したことに対する税金です。土地を売ったときの譲渡所得に対する税金とは別なので、相続税を払った人でも、その後の売却で利益が出れば別に税金が発生することがあります。
なお、相続した土地を実際に売るには、名義や遺産分割の状況も確認する必要があります。売却までの流れを先に知りたい方は、相続不動産の売却手続きと8つの流れも参考にしてください。
売却代金全額には課税されない
土地を3,000万円で売ったからといって、3,000万円全部に約20%の税金がかかるわけではありません。
課税譲渡所得=売却価額-取得費-譲渡費用-適用できる特別控除
例えば、土地を3,000万円で売却し、取得費が1,000万円、仲介手数料や測量費などの譲渡費用が100万円だったとします。
特別控除を考慮しなければ、課税譲渡所得は1,900万円です。
逆に、取得費や譲渡費用を差し引いた結果、課税される譲渡所得が出なければ、原則としてその売却に対する所得税や住民税は発生しません。
譲渡費用には、仲介手数料、売主が負担した売買契約書の印紙税、土地を売るために必要になった測量費や一定の建物取壊し費用などが含まれる場合があります。
一方、通常の維持管理費や毎年の固定資産税などを何でも差し引けるわけではありません。
取得費は親の購入額を引き継ぐ
相続した土地で特に間違えやすいのが取得費です。
相続した時点の土地価格や相続税評価額へ、取得費がリセットされるわけではありません。
原則として、亡くなった親など被相続人がその土地を取得したときの購入代金や購入手数料などを引き継ぎます。
例えば、現在5,000万円で売れそうな土地でも、親が1,000万円で取得していたなら、基本となる取得費はその1,000万円をもとに考えます。
土地だけを売る場合、建物のような減価償却計算はありません。古家付きで土地と建物を一緒に売る場合は、建物部分の取得費の考え方が変わるため、相続した家を売却するときの税金と取得費も確認してください。
相続した土地の取得費と取得時期については、国税庁も被相続人の取得内容を引き継ぐ考え方を案内しています(出典:国税庁「相続や贈与によって取得した土地・建物の取得費と取得の時期」)。
◆カズのワンポイントアドバイス
相続した土地では、片付けの途中で古い書類を捨ててしまわないでください。購入時の契約書や領収書が見つかれば、5%の概算取得費ではなく実際の取得費を使える可能性があります。権利証や登記識別情報だけでなく、売買契約書、ローン資料、通帳なども一度確認しておきたいところです。
取得費不明なら5%を使える
親が数十年前に買った土地では、購入時の売買契約書が見つからないこともあります。
その場合でも、取得費をまったく計上できないわけではありません。
取得費が分からない場合や、実際の取得費が売却価額の5%を下回る場合は、売却価額の5%相当額を概算取得費として使うことができます。
3,000万円で売った土地なら、5%にあたる150万円です。
ただし、5%を使うと利益が大きく計算されることがあります。親が実際には1,000万円で取得した土地でも、その資料を確認できず150万円の概算取得費を使えば、課税される譲渡所得が大きくなります。
そのため、概算取得費を使う前に、購入時の契約書だけでなく、領収書、金融機関の資料、造成関係の資料、過去の申告書なども探してみてください。
どこまで取得費として認められる資料になるかは個別事情で変わります。金額が大きい場合は、税務署や税理士へ確認するのが安全です。
相続税評価額は取得費ではない
「相続税の計算で土地を2,000万円と評価したから、売却時の取得費も2,000万円になる」と思う方もいますが、原則としてそうではありません。
相続税評価額、固定資産税評価額、売却査定額、譲渡所得を計算する取得費は、それぞれ目的が違う数字です。
相続税では路線価や倍率方式などによって土地を評価します。
一方、土地を売ったときの譲渡所得では、原則として被相続人が取得したときの金額を引き継ぎます。
さらに、実際に市場でいくらで売れるかも別の話です。接道、土地の形、面積、駅からの距離、周辺の成約事例などによって売却価格は変わります。
税務上の評価額だけを見て「この土地はこの値段で売れる」と判断しない方がいいでしょう。
長期と短期は親の取得日で判定
土地の譲渡所得は、売却した年の1月1日時点の所有期間によって、長期譲渡所得と短期譲渡所得に分かれます。
| 区分 | 所有期間 | 一般的な税率 |
|---|---|---|
| 長期譲渡所得 | 5年超 | 約20.315% |
| 短期譲渡所得 | 5年以下 | 約39.63% |
ここで重要なのは、相続した日から5年を数えるわけではないことです。
原則として、親など被相続人の取得時期を引き継ぎます。
例えば、親が30年前に買った土地を今年相続し、その年に売却したとしても、通常は親の所有期間を含めて判定します。
つまり、「相続してまだ1年だから短期譲渡」ということではありません。
上記は所得税、復興特別所得税、住民税を合わせた基本税率です。実際の計算は適用できる特例や譲渡内容によって変わることがあります。
売却税金を数字で計算する
単純な例で見てみましょう。
相続した土地を3,000万円で売却し、親から引き継いだ取得費が1,000万円、譲渡費用が100万円、特別控除なし、長期譲渡所得だったとします。
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 売却価額 | 3,000万円 |
| 取得費 | 1,000万円 |
| 譲渡費用 | 100万円 |
| 課税譲渡所得 | 1,900万円 |
| 税額の概算 | 約386万円 |
1,900万円×約20.315%で、税額はおよそ386万円です。
ところが購入資料がなく、取得費を売却価額の5%である150万円とすると、課税譲渡所得は2,750万円になります。
同じ条件なら税額は約559万円。取得費の違いだけで約173万円の差です。
もちろん、これは制度を理解するための単純な試算です。実際の税額は取得費に含められる金額、譲渡費用、共有持分、利用できる特例などによって変わります。
相続した土地の売却税金を抑える特例と申告
相続した土地では、条件によって相続税の取得費加算や、被相続人の居住用財産に関する3,000万円特別控除を使える場合があります。
ただし、「相続から3年以内なら必ず安くなる」「土地を相続すれば3,000万円控除が使える」という制度ではありません。
期限と対象条件を分けて確認しましょう。
取得費加算は期限を確認する
相続税を納めた人が、相続によって取得した土地を一定期間内に売却した場合、その土地に対応する一定額の相続税を取得費へ加算できる特例があります。
一般に「相続税の取得費加算」と呼ばれる制度です。
対象になるのは、相続または遺贈によって財産を取得し、その人に相続税が課税されていることなどが条件です。
売却期限は、相続開始日の翌日から、相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日まで。
通常の相続税申告期限が10か月であるため、一般に「相続から約3年10か月以内」と説明されることがあります。
3年10か月は覚え方の目安です。実際の期限は相続開始日と相続税の申告期限から確認してください。また、取得費へ加算できるのは納めた相続税の全額とは限りません。
相続不動産には「3年」「3年10か月」「5年」など、似た数字がいくつも出てきます。期限の違いを確認したい方は、相続不動産の3年・3年10か月・5年の違いも参考にしてください。
土地だけでは3,000万円控除にならない
相続した土地について調べていると「3,000万円控除」という言葉を目にすることがあります。
ただし、相続した土地なら何でも3,000万円控除が使えるわけではありません。
被相続人の居住用財産に係る特例は、亡くなった方が住んでいた一定の家屋と、その敷地等を相続した場合に検討する制度です。
一定の要件を満たすと、譲渡所得から最高3,000万円を控除できます。
2024年1月1日以後の一定の譲渡で、対象財産を取得した相続人が3人以上の場合は、1人あたりの控除上限が2,000万円になります。
対象となる家屋には、原則として1981年5月31日以前に建築されたこと、区分所有建物ではないことなど複数の条件があります。
さらに、相続開始直前の居住状況、相続後の利用状況、売却時期、売却価額なども確認しなければなりません。
土地の記事で特に大事なのは、対象となる家屋を取り壊して、その敷地を売却する場合でも、条件を満たせば特例の対象になり得ることです。
一方、最初から家屋と関係のない更地だけを相続したという理由で、この控除が使えるわけではありません。
現行制度では一定の譲渡について2027年12月31日までが対象です。詳しい要件は(出典:国税庁「被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」)で確認してください。
相続税の取得費加算と、相続空き家の3,000万円特別控除は、同じ不動産の譲渡について併用できません。両方の条件に当てはまりそうなら、売買契約前にどちらを使えるのか、どちらが有利なのかを税務署や税理士へ確認してください。
査定額から税引後の手取りを見る
ここまで税金を見てきましたが、実際の手取りを知るには、もう一つ数字が必要です。
その土地が、現在いくらで売れそうなのか。
固定資産税評価額や相続税評価額を見ても、実際の成約価格は分かりません。
まず現在の査定価格を確認し、そこから仲介手数料、測量・解体などの売却費用、想定される税金を差し引いて比較すると、売却後に残る金額を考えやすくなります。
| 確認する数字 | 見るポイント |
|---|---|
| 査定価格 | 価格だけでなく査定根拠も見る |
| 売却費用 | 仲介手数料・測量・解体などを確認する |
| 想定税額 | 取得費・所有期間・特例をもとに試算する |
| 最終手取り | 費用と税金を引いた後の金額で比べる |
一般的な土地の仲介売却を考えているなら、1社だけの査定額で決めず、複数の不動産会社の査定内容を比べる方法があります。
リビンマッチでは土地の査定にも対応しており、一度の入力で条件に合う複数の不動産会社へ査定を依頼できます。査定価格だけでなく、売却方法や提案内容を比べてから依頼先を考えたい方と相性のよいサービスです。
\ 土地の査定額と提案を複数社で比較 /
査定内容を確認してから、実際に売却するか決められます。
一括査定を利用するときの比較ポイントについては、相続不動産の一括査定比較でも詳しく紹介しています。
◆カズのワンポイントアドバイス
土地では、先に古家を壊したり、大きな測量費をかけたりする前に、現状のまま査定を取った方がいいケースがあります。私は「今の状態で売った場合」と「費用をかけてから売った場合」で、最終的な手取りがどう変わるのかを見てから判断する方がいいと思っています。空き家特例を考えているなら、解体時期も税務上の条件と合わせて確認してください。
確定申告が必要なケース
相続した土地を売却して譲渡所得が生じた場合は、原則として売却した年分の確定申告が必要です。
また、取得費加算や空き家の3,000万円特別控除など、申告を前提とする特例を使う場合は、特例によって最終的な課税譲渡所得がゼロになるケースでも申告や必要書類の提出が必要になります。
「税金が出なさそうだから何もしなくていい」と自己判断しない方が安全です。
譲渡所得に関する確定申告は、原則として売却した年の翌年に行います。実際の申告期間や必要書類は、その年の国税庁情報を確認してください。
特に、取得費が分からない、相続税を納めている、親の自宅跡地を売る、兄弟などとの共有名義になっている場合は、売買契約前に税務署や税理士へ確認しておくと安心です。
相続した土地の税金に関するよくある質問(FAQ)
Q1. 更地を相続しただけでも3,000万円控除を使えますか?
A. 更地を相続したという理由だけでは使えません。被相続人の居住用財産に係る特例は、一定の被相続人居住用家屋とその敷地等を相続したケースが対象です。対象家屋を取り壊して敷地を売る場合に対象となることはありますが、建築時期、利用状況、売却期限など複数の条件を満たす必要があります。
Q2. 相続税を払っていなくても取得費加算は使えますか?
A. 取得費加算の特例は、その財産を取得した人に相続税が課税されていることなどが要件です。相続税を納めていない場合は基本的にこの特例の対象にはなりません。個別の適用可否は税務署や税理士へ確認してください。
Q3. 兄弟で共有する土地を売った場合の税金はどうなりますか?
A. 共有土地を売却した場合は、原則として各共有者が自分の持分に対応する譲渡価額・取得費・譲渡費用などをもとに譲渡所得を計算します。遺産分割や売却代金の分け方によって確認事項が変わるため、共有で売る前に税理士へ確認しておくと安心です。
Q4. 相続した土地を売って利益がなければ確定申告は不要ですか?
A. 譲渡所得が生じず、適用する特例などもない場合は、土地売却だけを理由とする所得税の確定申告が不要となるケースがあります。ただし、特例を利用する場合や他の所得・損失との関係では扱いが変わります。最終的な判断は税務署または税理士へ確認してください。
相続した土地の売却税金まとめ
相続した土地の売却税金は、売却価格だけでは決まりません。
売却価額から、親から引き継いだ取得費、譲渡費用、利用できる特別控除を差し引き、残った課税譲渡所得をもとに計算するのが基本です。
土地では親の取得費と取得時期を原則として引き継ぎます。購入資料が見つからない場合などは売却価額の5%を概算取得費として使えますが、本来の取得費より低くなれば税負担が大きくなることがあります。
相続税を支払っているなら取得費加算、親の自宅とその敷地を相続した場合は空き家の3,000万円特別控除を使える可能性があります。ただし、期限や条件があり、同じ不動産について両方を併用することはできません。
売却前にまず確認したいのは3つです。
- 親の売買契約書や領収書など取得費の資料を探す
- 使える特例と期限を税務署・税理士へ確認する
- 現在の査定価格を確認し、費用と税金を引いた手取りを比べる
相続不動産の売却全体を確認したい方は、相続不動産売却の完全ガイドもあわせて確認してください。
税額や特例の個別判断は、税務署や税理士への確認が必要です。
一方、土地をいつ査定するか、何を準備してから不動産会社へ相談するか、家族とどこまで話しておけばいいのかといった売却の進め方は、私と一緒に確認できます。
\ 売却を決める前に進め方を確認 /
売却を決めていない段階でも、進め方から確認できます。
査定前の資料や家族で確認することから相談できます。
