
こんにちは。相続した実家や空き家の売却について一緒に考える、カズです。
私は不動産の仕事を20年以上やっていますが、空き家を売った方から「売却したら全員が確定申告するんですか」「3,000万円控除は空き家なら使えるんですか」と聞かれることがあります。
ここで最初に分けたいのが、その空き家に自分が住んでいたのか、親から相続したのか、それとも賃貸・投資用などの家なのかという点です。
同じ「空き家売却」でも、使える3,000万円控除や確認する条件が違います。まず自分の空き家がどの種類なのかを確認すると、確定申告の考え方がかなり分かりやすくなります。
- 空き家を売却したとき確定申告が必要になる条件
- 自宅・相続・賃貸用で異なる税金の考え方
- 3,000万円控除を使える主な条件
- 確定申告で準備する書類と申告時期
空き家売却の確定申告を30秒で確認
- 売却益が出た:原則として確定申告が必要
- 3,000万円控除などを使う:税額が0円でも申告が必要
- 売却損で申告を要する特例も使わない:売却だけを理由とする所得税の申告は原則不要の場合あり
- 3,000万円控除:元自宅と相続空き家では別の制度として条件を確認
空き家売却の確定申告を30秒判定
確定申告が必要かを考える前に、まず「どんな空き家を売ったのか」を分けてみましょう。ここを飛ばすと、別の3,000万円控除を自分にも使えると思ってしまうことがあります。
まず空き家の種類を分ける
| 空き家の種類 | 税務上の主な確認点 | 3,000万円控除 |
|---|---|---|
| 以前、自分が住んでいた家 | 住まなくなった時期、売却時期、買主との関係など | 通常のマイホーム特例を使える可能性あり |
| 親などから相続した空き家 | 建築時期、相続直前の居住状況、相続後の利用、売却期限など | 相続空き家の特例を使える可能性あり |
| 賃貸・投資用などの空き家 | 取得費、譲渡費用、所有期間、売却益など | 空き家というだけでは居住用3,000万円控除の対象にならない |
「空き家だから3,000万円まで非課税」という制度ではありません。誰が住んでいた家なのかによって確認する特例そのものが変わります。
売却益が出たら原則申告する
土地や建物を売ったときの譲渡所得は、基本的に次の式で計算します。
譲渡所得=売却価格-取得費-譲渡費用-特別控除
例えば2,000万円で売れたからといって、2,000万円全部に税率を掛けるわけではありません。
購入したときの取得費や、売却のために直接かかった仲介手数料などの譲渡費用を差し引きます。そのうえで課税される譲渡所得が生じれば、原則として確定申告が必要です。
土地や建物の譲渡所得は給与所得などとは分けて計算します。詳しい基本計算は、国税庁「土地や建物を売ったとき」で確認できます。
売却損なら不要な場合がある
売却価格より取得費と譲渡費用の合計が大きく、譲渡損失になった場合は、その売却だけを理由とした所得税の確定申告が不要になることがあります。
ただし、土地や建物の譲渡損失は、原則として給与所得などから自由に差し引けるものではありません。一方、自分が住んでいた住宅では一定の譲渡損失について特例が使える場合があります。
そのため「赤字だったから何も確認しなくていい」と決めるのではなく、元自宅だった場合は利用できる特例がないかまで確認してください。
会社員は20万円ルールに注意
会社員の場合、一定の条件を満たし、給与以外の所得が年間20万円以下なら所得税の確定申告をしなくてよい場合があります。
ただし、3,000万円控除など申告が必要な特例を利用する場合や、医療費控除など別の理由で確定申告をする場合は扱いが変わります。住民税の申告が別に必要になることもあるため、「利益が20万円以下なら絶対に申告不要」とは考えない方が安全です。
空き家売却の税金と取得費
税金がどのくらいになるかを見るときは、売却価格より先に取得費を確認したいところです。特に相続した古い家では、親が購入した当時の書類が残っているかどうかで計算が大きく変わる場合があります。
取得費と譲渡費用を確認する
取得費には、土地や建物の購入代金、購入時の一定の手数料などが含まれます。ただし建物は、購入金額をそのまま取得費にできるわけではなく、所有期間に応じた減価償却費相当額を差し引きます。
相続した空き家の場合は、相続したときの固定資産税評価額や相続税評価額へ置き換えるのではありません。原則として被相続人の取得費と取得時期を引き継ぎます。
譲渡費用には、売却時の仲介手数料や売主が負担した一定の測量費、売却するために直接必要となった一定の費用などが該当します。
◆カズのワンポイントアドバイス
相続した実家では、親が買った当時の契約書が見つからないことが本当に多いです。権利証の近く、住宅ローン関係の書類、古い通帳、建築会社の資料なども確認してみてください。売ってから探すより、査定を始める頃に探しておく方がいいですよ。
取得費不明なら5%を使える
実際の取得費が分からない場合や、実際の取得費が売却価格の5%より少ない場合は、売却価格の5%を概算取得費として計算できることがあります。
例えば3,000万円で売却した場合、5%なら150万円です。
5%で済むという意味ではありません。
取得費を150万円として扱うため、実際には親が高い金額で購入していた物件でも課税対象となる譲渡所得が大きくなる可能性があります。購入時の資料はできるだけ探してから判断してください。
所有期間で税率が変わる
2026年中に売却する場合、売却した年の1月1日時点で所有期間が5年を超えていれば長期譲渡所得、5年以下なら短期譲渡所得になるのが基本です。
相続物件では、相続した日からではなく被相続人の取得時期を引き継ぎます。
| 区分 | 所得税 | 住民税 | 2026年売却の合計目安 |
|---|---|---|---|
| 長期譲渡所得 | 15% | 5% | 約20.315% |
| 短期譲渡所得 | 30% | 9% | 約39.63% |
上記の合計目安には復興特別所得税を含めています。税制は改正されることがあるため、売却した年分の最新税率を国税庁で確認してください。
売却価格だけでは税額は決まらない
取得費が分からない空き家を3,000万円で売却し、概算取得費150万円、譲渡費用100万円だったケースを単純化してみます。
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 売却価格 | 3,000万円 |
| 概算取得費 | 150万円 |
| 譲渡費用 | 100万円 |
| 特別控除前の譲渡所得 | 2,750万円 |
2026年の長期譲渡所得として単純に約20.315%を掛けると、特例適用前の税額は約558万円です。
一方、条件を満たす3,000万円特別控除を利用できれば、課税譲渡所得が大きく減る場合があります。実際には建物の減価償却、取得費、共有持分、ほかの特例などで変わるため、この数字は仕組みを確認するための一般的な例です。
3,000万円控除は空き家の種類で違う
空き家売却で特に間違えやすいのが3,000万円控除です。「自分が住んでいた家」と「親などから相続した空き家」では確認する制度が違います。
元自宅ならマイホーム特例を確認
以前自分が住んでいた家を売る場合は、通常の居住用財産の3,000万円特別控除を使える可能性があります。
住まなくなった家の場合は、原則として住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売ることなどが条件になります。
親から相続して自分では住んでいなかった家に、この通常のマイホーム特例がそのまま使えるわけではありません。
相続空き家は別の特例を確認
親などが住んでいた家を相続した場合は、「被相続人の居住用財産に係る譲渡所得の特別控除」を利用できる可能性があります。
2026年10月現在の主な確認項目は次のとおりです。
| 確認項目 | 主な条件 |
|---|---|
| 建築時期 | 原則1981年5月31日以前に建築された家屋 |
| 建物 | 区分所有建物ではないこと |
| 相続直前 | 原則として被相続人以外に居住者がいなかったこと |
| 相続後 | 売却まで事業・賃貸・居住などに使われていないこと |
| 売却期限 | 相続開始から3年を経過する日の属する年の12月31日まで |
| 売却価格 | 一定の判定対象となる譲渡価額が1億円以下 |
| 制度期限 | 現行制度では2027年12月31日までの一定の譲渡 |
老人ホームなどに入所していた被相続人の家でも、一定の条件を満たせば対象になる場合があります。
また、2024年1月1日以後の一定の譲渡では、売却後に買主が翌年2月15日までに耐震改修または取壊しを行う形でも対象となる場合があります。
さらに、2024年1月1日以後の譲渡で対象財産を取得した相続人が3人以上の場合は、1人当たりの控除上限が2,000万円になる場合があります。
詳しい条件と必要書類は、国税庁「被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」で確認してください。
相続した実家の確定申告に絞って確認したい場合は、実家売却の確定申告は必要?税金・3,000万円控除と手続きを解説で詳しく解説しています。
取得費加算とは併用できない
相続税を納めた人が一定期間内に相続財産を売却した場合は、「相続財産を譲渡した場合の取得費の特例」を使えることがあります。
一般的なケースでは、相続開始日の翌日から相続税申告期限の翌日以後3年を経過する日までが対象期間となり、死亡からおおむね3年10か月以内が一つの目安です。
ただし、同じ不動産の譲渡について相続空き家の3,000万円特別控除と取得費加算を重ねて使うことはできません。
相続税を納めている場合は、売買契約を進める前にどちらが利用できるか、税理士や税務署で確認しておくと安心です。
空き家売却の確定申告に必要な書類
申告時になってから資料を集めると、親の購入契約書や自治体の確認書が見つからず慌てることがあります。売却した年のうちから準備しておきましょう。
通常の申告でそろえる資料
| 書類・資料 | 主な用途 |
|---|---|
| 確定申告書 | 所得税の申告 |
| 譲渡所得の内訳書 | 売却価格・取得費・譲渡費用などの計算 |
| 売却時の売買契約書 | 売却価格や契約内容の確認 |
| 購入時の売買契約書・領収書 | 取得費の確認 |
| 仲介手数料等の領収書 | 譲渡費用の確認 |
| 登記関係資料 | 物件・所有関係等の確認 |
すべてを紙で税務署へ提出するという意味ではありません。申告方法や利用する特例によって提出・提示・保存する資料が変わるため、実際の申告年の案内を確認してください。
相続空き家特例は追加書類がある
相続空き家の3,000万円特別控除を使う場合は、通常の譲渡所得の申告に加えて追加書類が必要です。
代表的なものが、空き家所在地の市区町村から交付を受ける被相続人居住用家屋等確認書です。
そのほか、売買契約書の写し、登記事項を確認できる資料、耐震改修や取壊しの方法によって必要となる証明書など、売り方に応じて書類が変わります。
確認書を受け取っただけで3,000万円控除の適用が確定するわけではありません。
市区町村の確認書は必要な書類の一つです。最終的に税法上のすべての要件を満たしているかは、確定申告時に確認されます。
申告は空き家を売った翌年
空き家の譲渡所得は、原則として売却した年分について翌年に確定申告します。
所得税の確定申告期間は通常、翌年2月16日から3月15日です。例えば2026年中に売却した場合は、原則として2027年の確定申告で申告します。
土地・建物の譲渡所得はe-Taxでも申告できます。スマートフォンでの入力手順を確認したい方は、不動産売却の確定申告をe-Taxで行う手順も参考にしてください。
売買契約日と引渡日が年をまたぐなど、どの年の譲渡として扱うか判断が必要な場合があります。迷うケースは自己判断せず、税務署または税理士へ確認してください。
空き家を売る前に確認したいこと
確定申告そのものは売却後ですが、税金で困りにくくするには売る前の確認が大切です。特に取得費、特例の期限、片付けや解体のタイミングは先に見ておきたいところです。
取得資料と特例期限を先に見る
最初に、購入時の売買契約書や建築請負契約書、仲介手数料の領収書など取得費を確認できる資料を探します。
相続空き家なら、被相続人がいつから住んでいたか、建築時期、相続後に貸したり誰かが住んだりしていないか、売却期限までどのくらいあるかも確認してください。
売却期限を過ぎてから「3,000万円控除を使えると思っていた」と気付いても戻せません。税金が大きくなりそうな場合ほど、売却前に税務確認をしておく価値があります。
片付けや解体を先に決めない
私は実家の売却相談で「家の中を全部空にしてからでないと査定できませんよね」と聞かれることがあります。
実際には、査定だけなら家財が残った状態でもできることが多いです。売り方が決まる前に何十万円もかけて片付けたり、解体を決めたりする必要がない場合もあります。
◆カズのワンポイントアドバイス
古い空き家では、建物を残して売る、売主が解体して土地で売る、買主側で解体する、という選択肢があります。特に相続空き家特例を考えるなら、税務条件も確認してから解体時期を決めた方がいいですよ。
空き家売却全体の流れを先に確認したい方は、空き家売却の流れと売る前に確認するポイントも参考にしてください。
まだ売却前なら査定額を確認する
譲渡所得を概算するには、取得費だけでなく「今ならいくらで売れそうか」という売却価格の見込みも必要です。
まだ売却前で価格が分からない場合は、複数の不動産会社から査定を取り、査定額だけでなく価格の根拠も比較すると、売却後に残る金額を考えやすくなります。
査定サービスの違いを先に確認したい方は、不動産一括査定サービスの比較と選び方で詳しく紹介しています。
売却済みの方は査定する必要はありません。これから売却を考えていて、税金を含めた手取り額を見積もりたい方だけ利用してください。
\ 売却前に査定額と価格の根拠を比較 /
査定結果を見てから、売るかどうかを判断できます。
空き家売却と確定申告のよくある質問(FAQ)
Q1. 不動産会社へ買取してもらった場合も確定申告は必要ですか?
A. 仲介か買取かだけで申告の要否が決まるわけではありません。不動産会社へ直接売却した場合でも譲渡所得が生じれば原則として確定申告が必要です。利用する特例がある場合も申告要件を確認してください。
Q2. 兄弟で共有する相続空き家は誰が確定申告しますか?
A. 共有不動産を売却した場合は、代表者が全員分をまとめて申告するのではなく、原則として共有者それぞれが自分の持分に応じた譲渡所得を計算して申告します。取得費や特例の適用も各人について確認が必要です。
Q3. 被相続人居住用家屋等確認書があれば3,000万円控除を必ず使えますか?
A. 必ず使えるという意味ではありません。確認書は特例申請で必要となる書類の一つで、売却期限、譲渡価額、相続後の利用状況、買主との関係など、ほかの要件も満たす必要があります。
Q4. 親の準確定申告と空き家売却後の確定申告は同じですか?
A. 別の手続きです。準確定申告は亡くなった方の死亡した年の所得について相続人が行う申告です。その後、相続人が空き家を売却して譲渡所得が生じた場合は、相続人自身の譲渡所得として別に確定申告を検討します。
Q5. 確定申告の期限を過ぎたらどうすればいいですか?
A. 本来申告が必要だった場合は、放置せずできるだけ早く税務署や税理士へ確認してください。期限後申告となり、状況によって無申告加算税や延滞税が発生する可能性があります。特例についても期限後の扱いを個別に確認する必要があります。
相続した家の税額そのものを詳しく確認したい方は、相続した家の売却でかかる税金と3,000万円控除・取得費加算も参考にしてください。
建物ではなく相続した土地を売った場合は、相続した土地を売却したときの確定申告と必要書類で土地に絞って解説しています。
空き家売却の確定申告は3ステップで進める
空き家を売却したときは、難しい税金の話から始めるより、次の順番で確認すると進めやすいです。
- 空き家の種類と取得費を確認する:元自宅・相続空き家・その他の空き家を分け、購入資料を探す
- 使える特例と期限を確認する:3,000万円控除や取得費加算を売却前から確認する
- 申告が必要なら翌年に手続きする:売買契約書、譲渡費用、特例書類をそろえて申告する
特に相続空き家は、建築時期、誰が住んでいたか、相続後の利用、相続人数、売却時期によって結論が変わります。
税額や特例の最終判断は税務署または税理士へ確認してください。税金の制度は改正されることがあるため、正確な情報は国税庁の最新案内をご確認ください。
一方、「税金の話は税理士へ聞くとして、空き家をどの状態で査定に出せばいいのか」「片付けや解体を先にすべきか」といった売却準備については、私も一緒に考えています。
\ 税務以外の売却準備を一緒に確認 /
売却を決めていない段階でも、片付け・査定・売り方から相談できます。
一般論では決めにくい売却準備も、状況を伺いながら確認できます。
