古家付き地売却の全知識!解体VSそのままで損しない選択

古家付き地売却の全知識!解体VSそのままで損しない選択
  • URLをコピーしました!

終活だよドットコムの運営者、終活・相続・不動産の専門家のカズです。

相続などで取得した「古家付き地売却」を考え始めたものの、そのまま売るべきか、それとも解体すべきかで悩んでいませんか?解体費用や税金のことも気になりますし、売却後にトラブルが起きないか不安ですよね。

特に、古家付き地売却のデメリットや、売却後の契約不適合責任のことを考えると、なかなか一歩が踏み出せないかもしれません。

この記事では、古家付き地売却におけるあらゆる疑問、例えば解体費用の相場、固定資産税の違い、さらには相続空き家の3000万円控除の活用法まで、専門家の視点から徹底的に解説していきます。あなたの状況に合わせた最適な売却戦略を見つけるお手伝いをしますので、ぜひ最後までご覧ください。

また、再建築不可物件ではないかの確認や、買取相場を知ることも重要です。この記事を読めば、こうした複雑な古家付き地売却の全体像を理解し、安心して売却活動を進めるための具体的なステップが明確になりますよ。

この記事のポイント
  • 「そのまま売却」と「解体して売却」のメリット・デメリットがわかる
  • 売却にかかる解体費用や税金(固定資産税・譲渡所得税)の知識が身につく
  • 売却後の法的リスク(契約不適合責任)とその回避策が理解できる
  • 自分の状況に合った最適な売却戦略(仲介・買取など)を選べるようになる
コンサルタント @KAZU

私がこれまで見てきた中で、一番もったいないのは「なんとなく解体した」というケースです。解体費用をかけたのに、売却価格が思ったより上がらない…なんてことも。まずは「なぜ解体するのか」「なぜそのままなのか」の理由を明確にすることが、成功への第一歩ですよ。

まずは無料で数社一括査定で相場を知る!

目次

古家付き地売却の悩みと選択肢

古家付き地売却の悩みと選択肢

古家付き地売却を検討する際、誰もが最初にぶつかるのが「古家をどうするか」という大きな分岐点です。この選択が、手出しの費用から税金、売却価格、さらには法的なリスクまで、あらゆる側面に影響を与えます。ここでは、それぞれの選択肢が持つメリットとデメリットを、専門家の視点から徹底的に比較検討していきましょう。

なお、古家付きかどうかに関わらず、空き家売却全体の流れや注意点を先に整理しておきたい方は、空き家売却の全手順を専門家が解説したガイドもあわせてチェックしてみてください。

そのまま売るメリットとデメリット

まずは、古家を解体せずに「古家付き土地」として、そのまま売却する戦略を見ていきましょう。一見すると古い家がマイナスに思えるかもしれませんが、多くのメリットも隠されています。

メリット:初期費用と税金の負担軽減

なんといっても、売主にとって最大のメリットは、解体費用が一切かからないことです。売却のためとはいえ、先に数百万円もの現金を手出しする必要がないのは、精神的にも経済的にも非常に大きな安心材料となります。

さらに、税務上のメリットも強力です。建物が存在する限り、その土地は「住宅用地」として扱われ、「住宅用地の特例」が適用され続けます。これにより、固定資産税が最大6分の1、都市計画税が最大3分の1に軽減されたままの状態で売却活動ができるのです。

【住宅用地の特例とは?】

小規模住宅用地(200㎡以下の部分):固定資産税の課税標準が 6分の1 に減額されます。

一般住宅用地(200㎡を超える部分):課税標準が 3分の1 に減額されます。

家が建っているだけで、この大きな優遇を受け続けられるわけです。

また、市場戦略の面でも利点があります。買主のターゲットが「新築希望者」だけに絞られません。

  • リフォーム・中古住宅需要層:建物の状態が良ければ、リフォームして安く住みたい層にとって魅力的です。
  • 「古民家」としての価値:非常に古い建物でも、太い梁や柱、希少な建材が「古民家」として評価され、プラスの価値を持つことがあります。
  • 住宅ローンの利用:土地のみでは住宅ローンの審査が通りにくいことがありますが、建物が残っていれば「中古住宅」として扱われ、買主が住宅ローンを利用しやすくなる可能性があります。

デメリット:売却価格の低下と法的リスク

一方で、もちろんデメリットも明確です。市場の主要ターゲットである「新築を希望する買主」からは、老朽化した外観がマイナスの印象を与え、そもそも選択肢から除外されてしまうリスクがあります。

また、買主の多くは購入後にご自身で解体することを前提に購入を検討します。そのため、売買交渉の場では「解体費用相当額(場合によってはそれ以上)の値引き」を要求されるのが一般的です。結果として、更地で売る場合の相場価格よりも、どうしても成約価格は安くなる傾向にあります。

そして、最大のデメリットが「契約不適合責任」です。これは売主にとって非常に重いリスクとなります。

詳しくは後ほどじっくり解説しますが、売却後に「雨漏り」「シロアリ」「配管の詰まり」など、契約書に記載のない不具合(欠陥)が見つかった場合、売主が買主に対して法的な責任(修補、代金減額、損害賠償など)を問われるリスクが残ってしまうのです。

解体するメリットとデメリット

解体するメリットとデメリット

次に、思い切って古家を解体し、スッキリとした「更地」として売却する戦略です。これには先行投資が必要ですが、リターンも明確です。

メリット:高値売却とリスク回避

更地にすることで、土地を探している最も多い層である「新築希望者」に真正面からアピールできます。買主は古い建物の印象に惑わされず、土地本来の価値(立地、形状、広さ、日当たりなど)で正当に評価しやすくなります。

自由に建築プランを立てられるため、売却の機会そのものが最大化され、古家付きに比べて高い価格での売却が期待できるのです。

そして、法的リスクの面でも絶大なメリットがあります。それは、建物に関する契約不適合責任が完全にゼロになることです。

「雨漏り」も「シロアリ」も「建物の傾き」も、建物自体がなくなるわけですから、それらに関する責任を問われる心配が一切なくなります。これは売主にとって、計り知れないほどの精神的な安心感につながります。

さらに、解体プロセスにおいて、土地の状況を事前に確認できるという隠れたメリットもあります。万が一、地中からコンクリートガラなどの埋設物が見つかっても、それは「売却前」です。買主とのトラブルになる前に自ら処理できるため、土地に関する売却後のトラブルも大幅に予防できます。

デメリット:先行投資と税金の激増

最大のデメリットは、売主が高額な解体費用(木造でも100万円以上、場合によっては数百万円)を「先行投資」として、売れる前に現金で支払う必要がある点です。手元の資金に余裕がないと、そもそも選択しづらい戦略と言えます。

そして、解体した後に訪れる最大の罠が、税金の問題です。

【更地化の最大の罠:固定資産税の激増】

これが最も注意すべき点です。建物を解体した結果、土地が「住宅用地」とみなされなくなり、「住宅用地の特例」が解除されます。その結果、翌年から課される固定資産税が最大で6倍、都市計画税が最大で3倍に跳ね上がるのです。

高額な解体費用を投じたにもかかわらず、希望の価格でなかなか売れず、高額化した固定資産税を毎年支払い続ける…というのが、経済的にも精神的にも最も追い込まれる最悪のシナシナリオです。

解体費用の相場と注意点

解体を決断する上で、費用の正確な把握は欠かせません。よく「坪単価いくら」と言われますが、これはあくまで目安。実際には様々な要因で変動します。

構造別シミュレーション

解体費用の概算は「坪単価 × 延床面積」で計算されますが、この坪単価は建物の構造によって大きく変動します。あくまで一般的な目安としてご覧ください。(※地域や業者、現場の状況によって大きく変動します)

構造坪単価(目安)延床面積30坪の場合(目安)
木造(W造)3万円~6万円120万~180万円
鉄骨造(S造)5万円~7万円150万~210万円
鉄筋コンクリート造(RC造)6万円~8万円180万~240万円

RC造(鉄筋コンクリート)が最も高額になるのは、構造が堅牢であるため解体に手間と大型重機が必要な上、コンクリートガラという重くて処分費が高い廃棄物が大量に発生するためです。

費用が高騰する要因

上記のシミュレーション(表)は、あくまで「標準的」な工事の目安です。以下の要因が存在する場合、費用は相場よりも大幅に高騰する可能性があります。

  • 立地条件: 最も影響が大きい要因の一つです。前面道路が狭く、重機や大型トラックが敷地内に入れない場合、小型重機や「手壊し」での作業が中心となります。これにより工期が延び、人件費が大幅に増加します。
  • アスベスト(石綿)の有無: 特に1975年~2006年頃に建てられた建物では、屋根材(スレート)や外壁材、内装材にアスベストが使用されている可能性があります。2022年からは一定規模以上の解体でアスベスト調査が義務化されており、除去作業が必要となると、専門の資格者による厳重な飛散防止措置が必要となり、数十万円から百万円単位の追加費用が発生します。
  • 残置物(家財道具): 建物内に家具、家電、衣類、ゴミなどが大量に残っている場合、その処分費用が別途請求されます。これは解体業者が処分すると「産業廃棄物」扱いとなり、ご自身で自治体の粗大ごみ(一般廃棄物)として処分するよりも高額になります。解体費用を少しでも抑えるため、処分する前に一度、出張査定無料の買取業者に相談してみるのも一つの手です。思わぬ価格がつくかもしれませんよ。例えば「満足価格!ブランド品買取【バイセル】」や「骨董品買取のバイセル」、「着物買取のバイセル」などは、実家に眠りがちな品物も幅広く対応しています。
  • 付帯工事の多さ・地中埋設物: 建物本体以外の撤去費用です。ブロック塀、門扉、カーポート、庭木、庭石、物置、浄化槽、古い井戸の埋め戻しなど、撤去すべきものが多いほど費用はかさみます。また、解体作業中に地中から、浄化槽や以前の建物の基礎など、図面にない埋設物が見つかった場合、その撤去費用が追加で発生します。

解体費用を抑える方法

高額になりがちな解体費用ですが、以下の方法で負担を軽減できる可能性があります。

  1. 残置物(家財道具)は自分で処分する 前述の通り、家財道具やゴミは「一般廃棄物」として自治体のルールに従って処分する方が、解体業者の「産業廃棄物」として処分するよりも安価です。手間はかかりますが、最も確実に費用を抑えられる方法です。
  2. 補助金(助成金)を活用する 多くの自治体(市区町村)が、老朽化した危険な空き家の解体に対して補助金制度を設けています。制度の有無、補助金額、適用条件(例:耐震診断の結果、特定空き家への認定など)は自治体によって全く異なるため、必ず物件所在地の役所に確認が必要です。
  3. 複数の解体業者に相見積もりを取る 費用を比較検討することで、不当に高額な請求を避けられます。不動産会社から紹介された1社のみに決めるのではなく、自らも複数の業者に見積もりを依頼することが望ましいです。

【補助金申請の注意点】

ほとんどの補助金は「工事着工前の事前申請」が必須です。解体業者と契約した後や、工事が始まった後では絶対に申請できません。検討の初期段階で調べることが極めて重要です。

固定資産税が6倍になる罠

固定資産税が6倍になる罠

先ほどから何度も触れていますが、これは本当に重要なポイントなので、もう少し詳しく、なぜそうなるのかを解説しますね。

理由はシンプルで、「住宅用地の特例」が解除されるからです。この特例は、土地の上に住宅(古家)が建っていることで適用されています。

この特例がなくなると、土地の税額計算の元となる「課税標準」が、最も軽減率の高い「6分の1」から「1分の1(元の価格)」に戻ってしまいます。だから、理論上、固定資産税の請求額が最大で6倍に跳ね上がるのです。

この税額変更のタイミングが、また厄介です。固定資産税は、毎年1月1日時点(これを「賦課期日」と呼びます)の土地の状況に基づいて、その年度(4月~翌3月)の税額が決定されます。

例えば、2025年10月に解体を完了したとします。年内に無事売却できれば問題ありません。しかし、買主が見つからずに年を越し、2026年1月1日を迎えた瞬間、その土地は「更地」として認定されます。その結果、2026年度(2026年4月)から、売却が完了するまで、高額化(最大6倍)した固定資産税を支払い続けなければならないのです。

更地化戦略は、「高額な固定資産税」という時限爆弾を抱えることになります。だからこそ、解体は「売却の目処が立ってから」(例えば、買主との契約後、引渡し前に行うなど)実行するのが、リスク管理上、賢明な場合も多いのです。

ただし、勘違いしてはいけないのが、「じゃあボロボロでも家を残しさえすれば税金が安いんだ」と安心してしまうことです。管理状態が著しく悪く、放置すれば倒壊の危険や衛生上の問題があると自治体に判断され、「特定空き家」に指定され、さらに改善を求める「勧告」を受けた場合、建物が建っていても「住宅用地の特例」が解除されます。

つまり、「税金対策のためにボロボロの家を放置する」という選択肢は、行政の介入によって封じられています。売主は「適切に管理する」か「(特定空き家に指定される前に)売却・解体する」かの選択を迫られることになるのです。こうした空き家売却の全手順については、別の記事でも詳しく解説しています。

実際の現場では、「固定資産税の増額」だけでなく、売却戦略の選び方を誤ったことで数百万円単位の損失につながった事例も少なくありません。こうしたリアルな失敗例を知っておきたい方は、不動産売却やばいケースをまとめた解説記事もあわせてご覧ください。

契約不適合責任のリスクとは

これは特に「古家付き」で売却する際の、金銭的なリスクとして最大のものです。2020年4月の民法改正で、従来の「瑕疵(かし)担保責任」に代わって導入された制度ですが、この変更によって売主の責任は、実質的に「重く」なりました。

簡単に言えば、「売買契約書に記載された内容と『種類、品質、数量』が異なる(適合しない)物件を引き渡した場合、売主が買主に対して責任を負わなければならない」というルールです。

旧制度(瑕疵担保責任)との違い

旧制度の「瑕疵担保責任」では、売主が責任を負うのは「隠れた瑕疵(=買主が通常の注意を払っても知り得なかった欠陥)」に限られていました。

しかし、新制度の「契約不適合責任」では、欠陥が「隠れていたか」どうかは問われません。「契約書の内容と違う」という事実が問題であり、売主が負う責任の範囲は、従来よりも広くなったと言えます。

古家の場合、典型的なのは以下のトラブルです。

  • 売却後に雨漏りが発覚した
  • 床下を調べたらシロアリの被害があった
  • 給排水管が詰まっていた、または故障していた
  • 建物の基礎に重大なヒビや傾きがあった
  • 解体しようとしたら地中からコンクリートガラや古い浄化槽などが出てきた

これらの不具合が見つかると、買主は売主に対して以下の権利を行使できます。

  • 追完請求:「契約と違うから、ちゃんと修理してください」
  • 代金減額請求:「修理できないなら、その分、代金を安くしてください」
  • 損害賠償請求:「不具合のせいで仮住まいが必要になった。その費用を賠償してください」
  • 契約解除:「不具合が重大すぎて住めない。契約を解除します」

リスク回避策:「免責特約」

この重大なリスクを回避するために、個人間の売買(売主が宅建業者でない場合)で用いられるのが「免責特約」です。

売買契約書に「本物件は現状有姿(あるがままの状態)で引き渡し、売主は契約不適合責任を一切負いません」という条項(特約)を盛り込むことです。買主との合意があれば、この特約は原則として有効です。

【最重要】ただし、この特約は万能ではありません。免責特約を結んでいたとしても、もし売主が、雨漏りやシロアリの害といった不適合の事実を「知っていたにもかかわらず、買主に告げなかった」場合、その不適合については免責特約が無効となり、売主は責任を負わなければなりません。

したがって、売主の最善の防衛策は、以下の2つを両方行うことです。

  1. 契約不適合責任の「免責特約」を契約書に盛り込む。
  2. 既知の不具合(例:「○年に雨漏り修理歴あり」「現在、台所の水道の出が悪い」など)は、隠さず全て書面(『物件状況報告書』や『付帯設備表』)で買主に告知する。

正直に告知することで、その事項については「契約内容に適合している」ことになり、後から責任を追及されることがなくなるのです。

古家付き地売却を成功させる鍵

古家付き地売却を成功させる鍵

ここまで「古家付き」と「更地」の基本的な違いを見てきました。どちらの戦略を選ぶにしても、売却を成功に導く(=手取り額を最大化し、リスクをゼロにする)ためには、さらに知っておくべき重要な「鍵」があります。特に税金の特例や法的な制限、そして売却方法の選択は、あなたの最終的な手取り額に直結しますよ。

コンサルタント @KAZU

古家付き地売却は、パズルのようなものです。「税金」「法律」「費用」というピースを、どう組み合わせれば一番得するかを考えるゲーム。特に相続が絡むと複雑ですが、使える制度(ピース)を知っているかどうかが、手取り額に数百万円の差を生むことも珍しくありませんよ。

相続空き家と3000万円控除

もし、その古家付き土地が「相続」によって取得したものであれば、この特例が使えないか真っ先に、絶対に確認してください。正式名称を「被相続人の居住用家屋(空き家)に係る譲渡所得の特別控除の特例」と言います。

簡単に言えば、一定の要件を満たして相続した空き家を売却した場合、売却益(譲渡所得)から最大3,000万円を控除できるという、非常に強力な節税策です。(出典:国税庁「No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」

【譲渡所得とは?】

譲渡所得(売却益)は、単純な「売却価格」ではありません。以下の計算式で算出されます。

譲渡所得 = 売却価格 -( 取得費 + 譲渡費用 )

取得費:その物件を(親などが)購入した時の代金や手数料。

譲渡費用:売却にかかった仲介手数料や、更地にした場合の「解体費用」。

例えば、譲渡所得が3,000万円出た場合、この特例を使えば課税対象額は0円となり、譲渡所得税(通常約600万円)もゼロになります。使わなければ約600万円もの税金がかかるため、その差は歴然です。

特例適用のための【最重要要件】

この特例を受けるには多くの詳細な要件(例:売却代金が1億円以下であること、親族などへの売却でないこと等)がありますが、古家付き地売却における最大のポイントは、売却する物件が以下のいずれかの状態であることが求められる点です。

  1. 家屋(古家)ごと売る場合:その家屋が現行の耐震基準を満たしていること。
  2. 取り壊して売る場合:家屋を解体し、更地として売却すること。

ここで問題となるのが1です。相続した古い実家(特に昭和56年5月31日以前の旧耐震基準の建物)のほとんどは、現行の耐震基準を満たしていません。売却のために数百万円かけて耐震リフォームをするのは非現実的です。

その結果、この「3,000万円特別控除」の適用を受けるためには、「2. 解体して更地として売却する」が実質的に唯一の選択肢となるケースが非常に多いのです。

このシナリオに該当する場合、解体費用(例:200万円)は「コスト」ではなく、「税金600万円を回避するために必要な『投資』」と考えるべきです。この場合、戦略は自動的に「解体して売却」に決定されます。

適用のための期限(タイムリミット)

ただし、この強力な特例には厳格なタイムリミットがあります。それは、「相続開始の日(亡くなった日)から3年を経過する日の属する年の12月31日まで」に売却(決済・引渡し)を完了させなければならない点です。

相続手続き(遺産分割協議、相続登記)には時間がかかりますし、解体業者の選定・工事にも1~2ヶ月は必要です。そこから売却活動をスタートするため、残された時間は意外と短いのです。相続が発生したら、この期限を意識して速やかに行動を開始することが求められます。

相続で取得した不動産は、税金だけでなく名義変更や必要書類など、手続き面でもやることが多くなります。全体の流れを一度整理しておきたい方は、相続不動産 売却 手続きの完全ガイドも参考にしてみてください。

再建築不可物件の確認は必須

再建築不可物件の確認は必須

これは、古家付き地売却において、売主が犯しうる「最大の失敗」につながる法的リスクであり、解体を決断する前に「絶対に」確認しなければならない事項です。

「再建築不可物件」とは、その名の通り、今建っている建物を壊してしまうと、二度と新しい建物を建てることが法的に許可されない土地のことです。

なぜそんなことが起きるのか? ほとんどは、建築基準法で定められた「接道義務」(原則として「幅員4m以上の道路に2m以上接すること」)を満たしていないためです。

今建っている古家は、法律が制定される前から建っていた「既存不適格」建築物として、その存在を例外的に認められているに過ぎません。しかし、この建物を一度取り壊して更地にしてしまうと、その「例外」の権利も消滅してしまうのです。

【最悪のシナリオ(資産価値の消滅)】

売主がこの重大な事実に気づかず(役所で調査せず)、「売れやすくするため」「見た目を良くするため」に良かれと思って古家を解体してしまうケースです。

その結果、その土地は「家が建てられない土地」となり、「住宅地」としての価値を完全に失います。用途が駐車場や資材置き場などに限定されるため、資産価値がゼロ、または激減します。

解体費用という高額なコストを支払って、自らの手で資産を破壊するに等しい行為であり、絶対に取り返しがつきません。

回避策はただ一つ。解体業者に見積もりを依頼するより前に、必ず物件所在地の役所(建築指導課、道路課など)の窓口で、その土地が「再建築可能」かどうかを確認することです。不動産会社に査定を依頼する際も、真っ先に確認してもらうべき最重要事項です。

売却方法は仲介か買取か

売却戦略(そのまま vs 解体)が決まったら、次に「どう売るか」の方法を選びます。大きく分けて「仲介」と「買取」の2つの方法があり、それぞれ一長一短です。

仲介(Brokerage)

不動産会社に「売主の代理人」として依頼し、広告活動(レインズ登録、ポータルサイト掲載など)を行って、一般市場から買主(主に個人)を探してもらう、最も一般的な方法です。

  • メリット:市場競争の原理が働くため、買取よりも高く売れる(市場相場に近い価格)可能性があります。
  • デメリット:買い手が見つかるまで時間がかかります(平均3~6ヶ月、場合によっては1年以上)。また、売買契約の相手は一般個人であるため、前述の「契約不適合責任」のリスクは売主が負うことになります(免責特約を結ぶのが通例ですが)。

買取(Buyout)

不動産会社(または専門の買取業者)に、直接「買主」として、売主から物件を買い取ってもらう方法です。

  • メリット:
    1. スピード:価格交渉がまとまれば、即時に(最短1週間程度で)現金化が可能です。
    2. 契約不適合責任の免責:これが最大のメリットです。買主がプロ(宅建業者)であるため、交渉により契約不適合責任が「全免責」となるのが一般的です。売却後のあらゆるリスクから解放されます。
    3. 手間ゼロ:現状のままで買い取るため、売主によるリフォーム、解体、残置物の処理が不要となるケースが多いです。(「ゴミもそのままでOK」という業者も多いです)
  • デメリット: 価格です。買取業者は、買い取った物件にリフォームや解体などのコストをかけ、利益を乗せて「再販」します。そのため、買取価格は「仲介」の市場相場価格よりも大幅に安くなります(一般的に相場の5割~7割程度)

【買取価格の安さの正体】

「買取」の価格の安さは、単なる「安買い」を意味するのではありません。

売主が「仲介」を選んだ場合、[①売れるまで時間がかかるリスク]、[②売却活動中の固定資産税負担リスク]、[③売却後の契約不適合責任リスク]、[④近隣トラブル等のリスク] のすべてを自ら引き受けることになります。

「買取」とは、これら全ての「将来発生しうる不確実なリスク」と「時間」を、不動産会社に「価格の差額(仲介相場の3~5割)」という手数料を支払って引き取ってもらう取引、と解釈できます。

したがって、物件のリスクが高い(例:ボロボロの古家、再建築不可物件、境界未確定、相続トラブルを抱えている、など)ほど、価格が安くても「買取」を選択する合理性が高まるのです。こうした一般的な不動産会社では扱いにくい訳あり不動産・相続の総合的なガイドも参考にしてください。

「買取」の合理性が高いかも…と感じたら。

複雑な事情を抱えた物件こそ、専門家にご相談ください。

「仲介」では売却が難しいかもしれない「古家」「共有名義」「再建築不可」などの物件は、専門の買取業者への相談が最適解となるケースが多いです。

「ワケガイ」は、まさにそうした複雑な事情を持つ不動産を専門に買い取る業者です。売却後のリスクをゼロにし、素早く現金化したい方は、ぜひ一度無料査定をお試しください。

共有名義・訳あり専門まずは無料相談で我が家の診断

査定依頼で失敗しないコツ

査定依頼で失敗しないコツ

どの戦略を選ぶにせよ、まずは「自分の物件がいくらで売れそうか」を知るために、不動産会社に査定を依頼します。ここにも、絶対に失敗しないための重要なコツがあります。

絶対に「先に」解体・リフォームしない

これは本当に重要なので繰り返しますが、良かれと思って不動産会社に相談する前に解体やリフォームをしてしまうのは、最悪の選択となる可能性があります。

  • 先に解体 → もし「再建築不可物件」だったら、価値がゼロになります。
  • 先にリフォーム → 買主層が「新築」を希望するエリアだった場合、そのリフォーム費用は1円も評価されず、結局解体されるため、リフォーム代(例:100万円)は完全な無駄金となります。買取業者は「自社で安くリフォームするノウハウ」を持っているため、売主が中途半端に手を入れると、逆に買い取りにくくなることさえあります。

「解体すべきか、リフォームすべきか、そのまま売るべきか」は、必ず不動産のプロ(査定に来た担当者)の意見を聞いてから決定してください。

必ず「複数社」に「訪問査定」を依頼する

最初から1社に絞ると、その査定額が適正価格なのか、安すぎるのか(または高すぎるのか)を判断できません。必ず複数の会社に「訪問査定」を依頼し(古家付き土地の場合、建物の状態や道路状況を見ないと正確な査定は不可能です)、提示された査定額と、その「根拠」を比較検討することが重要です。

査定依頼は「戦略」です。

タイプの違う会社に依頼して、多角的に判断しましょう。

「複数社に依頼」と言っても、どこに頼めばいいか迷いますよね。私のおすすめは、「一括査定」と「大手」の両方に声をかけることです。

① まずは相場観を掴みたい方

あらゆる不動産物件を一括査定

いえカツLIFE

「古家付き」や「空き家」など、あらゆる物件種別に対応した一括査定サイトです。まずは複数の業者(仲介・買取含む)から幅広く提案を受け、あなたの物件の「相場観」を掴むのに最適です。

▶ 複数の仲介・買取業者に一括で査定を依頼する(いえカツLIFE)

② じっくり相談したい方

売上高 No.1 の実績

三井のリハウス

「やっぱり大手にも話を聞きたい」という方は、実績No.1の三井のリハウスが安心です。豊富な販売網とデータに基づき、あなたの古家付き土地の最適な売却戦略(仲介か買取か、解体すべきか)を、じっくり相談できます。

▶ 実績1位の三井のリハウスに無料査定を申し込む

そして、ただ査定額を聞くだけでなく、以下の「魔法の質問」を必ずしてください。

【プロを見極める魔法の質問】

  • 「この物件の最大の魅力(強み)と、最大の懸念点(弱み)は何ですか?」
  • 「古家(建物)をどのように評価しましたか?(プラス評価、マイナス評価、ゼロ評価?)」
  • 「もし解体する場合、解体費用はいくらと見積もりましたか?」
  • 「『古家付き』で売る場合と、『更地』で売る場合、どちらを推奨しますか? その理由も教えてください」
  • 「もし御社で『買取』をするとしたら、いくらになりますか?」

これらの質問への回答の具体性、論理の明快さで、その不動産会社の経験値や信頼度が見えてきます。「新築マンション専門」の会社ではなく、「古家付き土地」の売却実績が豊富な会社や、「買取再販」事業を専門に行っている会社を選ぶことが成功の鍵です。

空き家バンクの危険性

不動産会社を介さない売却手段として、自治体が運営する「空き家バンク」があります。不動産会社に支払う仲介手数料が不要で、多くの場合、無料で物件情報を掲載できるというメリットがあります。

また、資産価値が低く、一般の不動産会社が「仲介」を断るような物件(例:地方の築古物件)も登録できる場合があります。

しかし、私は専門家として、この方法には大きな危険性が潜んでいると考えています。

最大の危険性は、「交渉とトラブルがすべて自己責任」になる点です。多くの自治体は、物件のマッチング(引き合わせ)までしか関与せず、その後の売買契約交渉や条件協議、契約書の作成には一切介入しません。

法務知識のない個人売主が、法務知識のない個人買主と、直接交渉・契約する必要があるのです。特に、この記事で何度も解説してきた「契約不適合責任」について、その危険性を認識しないまま(あるいは不適切な内容で)契約書を交わしてしまい、売却後に重大な金銭トラブルに発展するケースが後を絶ちません。

安心して契約を結ぶためにも、空き家バンクを利用する場合であっても、契約手続きや重要事項の説明だけは、不動産会社(宅建士)に仲介を依頼し、法的に安全な手続きをサポートしてもらうことを強く推奨します。

古家付き地売却についてよくあるご質問FAQ

古家付き地売却についてよくあるご質問FAQ
売却前にリフォームした方が高く売れますか?

おすすめしません。買主が新築を希望する場合、リフォーム費用は無駄になる可能性が高いです。リフォームは「買取業者」が自社で行う方が安価なため、そのままの状態で査定に出すのが最善です。

建物内の不用品(残置物)はどうすればいいですか?

「仲介」で売る場合は、売主が引渡しまでに全て撤去するのが原則です。解体業者の「産業廃棄物」として処分すると高額になるため、自分で自治体のルールに従い「一般廃棄物」として処分する方が安価です。

「現状有姿(げんじょうゆうし)」と書けば責任を負わなくて済みますか?

「現状有姿」と記載するだけでは、契約不適合責任を免れることはできません。前述の通り、「契約不適合責任の免責特約」を明記し、かつ「知っている不具合は全て告知する」ことが必要です。

Q4. 相続した土地ですが、取得費が不明な場合はどうなりますか?

A4. 取得費が不明な場合、売却価格の5%を「概算取得費」として計上します。取得費が低いと売却益(譲渡所得)が大きくなり税金が高くなるため、当時の契約書などを探す努力が重要です。

古家付き地売却は終活だよドットコムへ

ここまで、古家付き地売却における「そのまま VS 解体」の比較から、解体費用、固定資産税の罠、契約不適合責任のリスク、3,000万円控除という税務特例、再建築不可の恐怖、そして売却方法の選択まで、網羅的に解説してきました。

ご覧いただいた通り、古家付き地売却の最適な戦略は、物件の状況(再建築可能か、耐震基準はどうか)や、売主の状況(相続か、3,000万円控除は使えるか、何を優先するか=手取り額か、スピードか、リスクゼロか)によって、本当に全く異なります。

コンサルタント @KAZU

古家付き地売却の成功の鍵は、「①法的な確認(再建築・税務特例)を先に行う」「②自己判断で解体・リフォームをしない」「③信頼できるプロ(不動産会社)をパートナーに選ぶ」の3点に尽きます。あなたの貴重な資産を守るためにも、この順番を間違えず、慎重な判断を心がけてください。

「自分一人で判断するのは不安だ…」

「どの不動産会社に相談すればいいか分からない」

「相続が絡んでいて、何から手をつければいいか…」

終活だよドットコムでは、そうした古家付き地売却に関するあらゆるお悩みや、相続不動産に関するご相談を承っています。私カズが、あなたの状況を丁寧にお伺いし、専門家として最適な解決策(解体すべきか、買取がよいか、仲介か)をご提案します。

【今日からできるアクションプラン】

この記事を読んで「やらなきゃ」と思ったら、まずはこの3つから始めてみてください。

  1. 「固定資産税納税通知書」を準備する まずは物件の基本情報(地番、面積、税額)を確認しましょう。これが全ての基本データになります。
  2. 役所の「建築指導課(または同等の窓口)」に電話する 「〇〇(地番)は、再建築可能ですか?」と「前面道路の幅員は何メートルですか?」の2点だけでも確認しましょう。電話一本で、最悪の事態(再建築不可)を回避できます。
  3. 「相続」なら、いつ相続が発生したか(相続開始日)を確認する 3,000万円控除の期限(3年後の年末)に関わる最重要情報です。カレンダーで期限日を確認してみましょう。

小さな一歩ですが、この3つを確認するだけで、あなたの物件の「解体すべきか否か」が明確に見えてきますよ!

売却はゴールではなく、次の人生への大切なスタートです。あなたの大切な資産を、最も良い形で次につなげるお手伝いができることを楽しみにしています。

なお、古家付き土地だけでなく、孤独死・共有名義・再建築不可・相続した家の片付けなど、より複雑なケースもまとめて整理したい方には、訳あり不動産・相続・遺品整理の総合ガイドもご用意しています。状況別に取りうる選択肢を整理していますので、あわせて目を通していただくと全体像がつかみやすくなります。

それでも解決しない「訳あり物件」の悩みをお持ちの方へ

この記事で解説した方法を試しても、売却が難しい物件(共有名義者が多数、再建築不可、深刻な近隣トラブルなど)も存在します。

そうした「訳あり」物件は、一般の不動産会社(仲介)では解決できません。

「ワケガイ」は、そうした超難関物件を専門に買い取る、いわば「最後の砦」です。あなたの悩みをリスクごと買い取ってもらう最終手段として、ぜひご相談ください。

共有名義・訳あり専門まずは無料相談で我が家の診断

▼あわせて読みたい関連記事▼

古家付き地売却の全知識!解体VSそのままで損しない選択

この記事が気に入ったら
いいねしてね!

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた専門家

保有資格: 相続診断士 / 宅地建物取引士 / AFP(日本FP協会認定)など20種以上

不動産・金融業界で15年以上の実務経験、1,500件以上の相談実績を持つ相続・終活・不動産相続のプロフェッショナル。法律・税務・介護の専門家と連携し、ご家族に寄り添った円満な終活・相続を実現します。

▶︎ 詳しいプロフィールは下記リンクマークから

目次