
「老後の生活費、持ち家があれば本当に安心なのかな…?」
こんにちは!終活・相続の専門家、カズです。15年以上この仕事をしていると、皆さん同じような不安を口にされます。特に、老後の一人暮らしで持ち家がある方の生活費って、実は見えにくい部分が多いんですよね。
今回の記事では、老後一人暮らしの生活費の平均や内訳はもちろん、持ち家なし、つまり賃貸の場合との比較も交えながら、リアルな金額をシミュレーションしていきます。
特に気になるシニア女性の一人暮らしの生活費や、70歳、70代の女性がどう生活しているのか、具体的な数字を見ていきましょう。
「65歳でいくら貯蓄あればいいですか?」という切実な疑問や、持ち家があれば老後はいくら必要なのか、そしてゆとりのある老後生活費とは、といったテーマにも踏み込んでいきます。
僕と一緒に、お金の不安を「見える化」して、具体的な安心に変えていきませんか?
- 持ち家と賃貸それぞれの老後の生活費がわかる
- 年代や性別によるリアルな支出モデルを把握できる
- 今からできる具体的な老後資金の準備方法がわかる
- 専門家の実体験に基づいたリアルな注意点を知れる

老後の生活費、特に持ち家がある場合、「家賃がないから大丈夫」と思いがちですが、実は固定資産税や修繕費など見えない支出があります。この記事では、漠然とした不安を具体的な数字に落とし込み、ご自身の状況に合わせた資金計画を立てる第一歩となる情報をお届けします。
老後一人暮らし生活費持ち家の基本をデータで解説


老後一人暮らし生活費の平均はいくら?
【事実】データで見る高齢単身世帯の家計の現実
総務省統計局が公表している「家計調査年報(家計収支編)2023年」によると、65歳以上の単身無職世帯の1ヶ月の家計収支は以下のようになっています。
- 実収入(年金など):126,339円
- 実支出(生活費など):157,939円
- 不足分:31,600円
このデータは、多くの単身高齢者世帯で公的年金等の収入だけでは生活費がまかなえず、毎月貯蓄を取り崩しながら生活している現実を明確に示しています。
(出典:総務省統計局「家計調査報告」)
「老後の一人暮らし、みんなは毎月いくらくらいで生活しているんだろう?」これは、僕がお客様から本当によく聞かれる質問の一つです。
まず結論からお伝えすると、公的なデータが非常に参考になります。総務省統計局が毎年公表している「家計調査報告」は、まさに日本の家計の縮図です。
その2023年のデータによると、65歳以上の単身無職世帯(一人暮らし)の消費支出の月平均額は約14万3,000円となっています。一方で、年金などの社会保障給付による実収入の平均は約12万2,000円。つまり、毎月約2万1,000円の赤字が出ているのが平均的な姿なんです。
「え、毎月赤字なの!?」って驚きますよね。でも、これはあくまで平均値。この金額には持ち家の方も賃貸の方も含まれています。ここからさらに深掘りして、ご自身の状況に近いリアルな数字を見ていくことが大切なんです。この「平均」という数字は、あくまで現在地を知るためのスタートラインだと考えてくださいね。
僕が担当したお客様の中にも、「平均より年金が少ないからもっと切り詰めないと」と焦る方がいましたが、支出の内訳を見直すことで、意外なところで節約できるポイントが見つかったケースも少なくありません。まずはこの平均金額を一つの基準として知っておくことが、賢い資金準備の第一歩になります。
より詳しい老後資金の考え方については、こちらの記事も参考にしてみてくださいね。
老後までに必要なお金はいくら?不安を解消する徹底ガイド
参考情報サイト: 総務省統計局「家計調査報告(家計収支編)2023年(令和5年)平均結果の概要」
URL: https://www.stat.go.jp/data/kakei/sokuhou/tsuki/index.html
老後一人暮らし生活費の詳しい内訳


では、先ほどの月平均約14万3,000円という支出は、一体何に使われているのでしょうか。この内訳を知ることで、ご自身の生活費と比較し、見直しのヒントを見つけることができます。
同じく総務省の家計調査から、具体的な内訳を見てみましょう。金額の大きい順に並べてみますね。
費目 | 月平均額(円) | 割合 | 専門家カズのワンポイント |
---|---|---|---|
食料 | 約37,500円 | 26.2% | 一人暮らしは割高になりがち。健康維持のための重要な支出です。 |
その他の消費支出(交際費など) | 約31,900円 | 22.3% | 人との繋がりは心の健康に不可欠。削りすぎは禁物です。 |
光熱・水道 | 約14,700円 | 10.3% | 基本料金の負担が重くのしかかります。電力会社の切り替えも有効。 |
交通・通信 | 約14,600円 | 10.2% | スマホのプラン見直しは効果大。車の維持費も大きな支出。 |
教養娯楽 | 約14,500円 | 10.1% | 人生を楽しむための大切な費用。図書館の活用なども良いですね。 |
住居 | 約12,700円 | 8.9% | 持ち家率が高いため低め。賃貸の場合はここに家賃が加わります。 |
保健医療 | 約8,100円 | 5.7% | 年齢と共に増加傾向に。持病があるとさらに必要になります。 |
注目すべきは「住居費」の低さです。これは高齢者の持ち家率が8割を超えているため、平均値が低く算出されているからです。もしあなたが賃貸暮らしなら、この金額に家賃が丸ごと上乗せされると考える必要があります。逆に言えば、持ち家の方はこの部分で大きなアドバンテージがあると言えますね。
また、「その他の消費支出」の中には交際費が約1万8,000円も含まれています。これは友人とのランチや趣味のサークル、お孫さんへのお小遣いなど、社会とのつながりを維持するための大切な生活費です。老後の生活の質は、こうしたお金の使い方が大きく影響してくるんです。
持ち家ありの一人暮らし生活費の目安
「持ち家があるから、住居費の心配はない!」本当にそうでしょうか?これは、老後の資金計画における最大の落とし穴の一つだと、僕はいつもお客様にお伝えしています。
確かに、毎月の家賃支払いはありません。これは精神的にも経済的にも非常に大きなメリットです。しかし、持ち家には家賃の代わりに固定資産税と修繕費という2つの大きな支出が必ず発生します。
固定資産税・都市計画税
これは土地や建物を所有している限り、毎年必ず支払う必要のある税金です。金額はお住まいの自治体や物件の評価額によって異なりますが、年間で10万円前後かかるケースも珍しくありません。月々にならすと約8,000円~1万円以上の支出になる計算です。
修繕費
これが一番見落とされがちで、かつ金額が大きくなる可能性のある支出です。例えば、10年~15年に一度は必要と言われる外壁や屋根の塗装には100万円以上の資金が必要になることも。給湯器の交換(約20万円)、水回りのリフォームなど、突発的な出費は避けられません。
【失敗談:突然の出費で貯蓄が激減…】
私のお客様で、70代のAさんは「持ち家だから安泰」と旅行などを楽しんでいました。しかし、ある冬に給湯器が壊れ、さらにその翌年には雨漏りが見つかり屋根の修理が必要に。
結局、立て続けに150万円以上の支出となり、老後資金として準備していた貯蓄が大きく減ってしまったのです。「修繕費を毎月積み立てておくべきだった…」と後悔されていました。
これらの持ち家特有の費用を考慮すると、家賃がないからといって住居費がゼロになるわけではありません。最低でも毎月2万円~3万円は、家の維持管理費として見積もっておく必要があるのです。この金額をあらかじめ老後の生活費に組み込んでおくことが、安心して暮らすための重要な準備です。
ご自宅を資産としてどう残すか、という視点も大切です。不動産の名義変更についてはこちらの記事で詳しく解説しています。
不動産名義変更相続で損しないための注意点と費用相場を解説
老後生活費で一人暮らし賃貸の場合


一方、賃貸住宅で一人暮らしをする場合はどうでしょうか。持ち家と比べて、生活費の構造が大きく異なります。
最大のポイントは、やはり毎月の家賃です。これまで見てきた生活費の平均額(約14万3,000円)には、低い住居費しか含まれていませんでした。ここに家賃が加わることで、支出の合計金額は一気に跳ね上がります。
令和5年の住宅・土地統計調査によると、高齢単身世帯が住む民営借家(アパート・マンション)の平均家賃は月額約5万1,000円。これを先ほどの支出平均に加えると、
14万3,000円 + 5万1,000円 = 19万4,000円
これが賃貸暮らしの場合の、よりリアルな毎月の支出の目安となります。収入が平均の約12万2,000円だとすると、毎月7万円以上の赤字となり、貯蓄の取り崩しペースが非常に速くなることが分かります。
賃貸のメリット・デメリット
- メリット:固定資産税や修繕費の心配がない。設備の故障は大家さん(管理会社)が対応してくれる。ライフスタイルの変化に合わせて住み替えやすい。
- デメリット:家賃の支払いが一生続く。高齢になると新規契約が難しくなる「賃貸の壁」問題がある。契約更新料が必要な場合も。
僕がご相談に乗ったお客様の中には、「若い頃は身軽で良かったけど、年を取ってからの賃貸探しは本当に大変だった」と語る方が少なくありません。保証人が見つからなかったり、保証会社の審査が厳しかったりするのです。
持ち家と賃貸、どちらが良い・悪いということではありません。それぞれのメリット・デメリットを正しく理解し、ご自身のライフプランや価値観に合った住まい方を選択し、必要な資金を準備しておくことが何よりも重要です。
この選択は、将来の相続にも関わってきます。万が一のケースですが、相続放棄の手続きについても知識として知っておくと良いかもしれません。
【事実】データに見る「ゆとりある老後」の生活費
「ゆとりある老後」とは、具体的にどれくらいの費用を指すのでしょうか。公益財団法人 生命保険文化センターの調査が参考になります。
- 夫婦2人でゆとりある老後生活を送るための費用として、月額で平均37.9万円が必要と考えられています。
- これは、最低日常生活費(平均23.2万円)に、旅行やレジャー、趣味や教養などのための「ゆとりのための上乗せ額」(平均14.7万円)を加えた金額です。
一人暮らしの場合でも、ご自身の「最低日常生活費」に、どのような「ゆとり」をどれくらい上乗せしたいかを考えることで、具体的な目標金額を設定する指標になります。
ゆとりのある老後生活費は一人暮らしでいくら?
ここまでは、あくまで「平均的な」生活費を見てきました。でも、せっかくの老後ですから、「たまには旅行に行きたい」「趣味にもっとお金をかけたい」と思いますよね。
生命保険文化センターの調査によると、「ゆとりのある老後生活」を送るために必要と考える生活費の平均額は、なんと月額約37万9,000円!…と言われていますが、これは二人以上世帯のデータなので、一人暮らしの場合は少し割り引いて考える必要があります。
では、一人暮らしの「ゆとり」とは何でしょうか?これは、先ほどの平均的な生活費(約14万3,000円)に、ご自身が「プラスアルファで楽しみたいこと」の金額を上乗せすることで見えてきます。
例えば、こんな感じです。
- 毎月の国内旅行(温泉など):+3万円
- 友人との外食や観劇:+2万円
- 趣味(習い事や道具代):+1万5,000円
- 孫へのお祝いやプレゼント:+1万円
これを合計すると、+7万5,000円。平均の生活費に上乗せすると、約21万8,000円が、この方にとっての「ゆとりのある老後生活費」の目安となります。
大切なのは、ご自身にとっての「ゆとり」とは何かを具体的にイメージすることです。僕のお客様には、よく「理想の1ヶ月を想像してみてください」とお伝えします。朝起きて、何をして、誰と会って、何を食べたいか。それを書き出すことで、必要な金額がよりリアルになります。
どんな趣味があるか知りたい方は、こちらの記事がヒントになるかもしれません。
シニア習い事人気ランキング|60代から始める趣味特集
【専門家カズの体験談】
以前、ご夫婦で相談に来られた方がいました。ご主人は「ゴルフ三昧の老後」、奥様は「世界一周クルーズ」が夢。お互いの「ゆとり」が全く違ったんです。このように、まずはご自身の価値観を知ることが、満足度の高いお金の使い方の第一歩。その想いをエンディングノートに記しておくのも、とても素敵なことだと思いますよ。



ここまで、老後一人暮らしの生活費の基本データを見てきました。平均、内訳、持ち家と賃貸の違い。これらの数字は、あくまで地図の役割です。ご自身の現在地を把握し、これからどこへ向かいたいのか(ゆとりのある生活)を考えるためのツールとして活用してくださいね。
ケース別に見る老後一人暮らし生活費持ち家の実態


シニア女性の一人暮らし生活費のリアル
さて、ここからはより具体的なケースに焦点を当てていきます。特に、シニア女性の一人暮らしは、男性とは少し異なる視点が必要です。
なぜなら、一般的に女性の方が平均寿命が長く、そして平均的な年金受給額が少ない傾向にあるからです。つまり、より長い期間を、より少ない収入で生活していくための計画が必要になるのです。
厚生労働省の「令和5年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、厚生年金(国民年金含む)の平均年金月額は、
- 男性:約16万7,000円
- 女性:約10万7,000円
と、月額で約6万円もの差があります。これは、現役時代の働き方(正社員かパートかなど)や収入の違いが反映されているためです。
【シニア女性が直面しがちな課題】
- 収入の課題:平均年金額が男性より少なく、支出(平均約14万3,000円)に対して赤字額が大きくなりやすい。
- 期間の課題:平均寿命が長いため(女性87歳、男性81歳)、赤字を補填するための貯蓄がより多く必要になる。
- 健康の課題:医療や介護が必要になる期間も長くなる可能性があり、そのための資金準備も欠かせない。
僕がご相談に乗ってきた中でも、夫に先立たれた後、ご自身の年金額の少なさに驚く女性は少なくありませんでした。「夫の年金で生活していたから、自分のはお小遣い程度にしか考えていなかった…」と。遺族年金が支給される場合もありますが、それでも現役時代の収入を維持するのは難しいのが現実です。
だからこそ、シニア女性の場合は特に、早めに自身の年金見込み額を正確に把握し、長期的な視点で生活費を考えることが何よりも大切になります。
万が一、ご自身の判断能力が低下した時のために、財産管理の方法を知っておくことも重要です。
家族信託の落とし穴とは?契約前に知るべき注意点15選
70代女性の一人暮らし生活費を考察


【事実】データで見る「介護」にかかるリアルな費用
老後資金計画で大きな変動要因となるのが介護費用です。公益財団法人 生命保険文化センターの調査によると、介護にかかる費用は以下のようになっています。
- 住宅改修や介護用ベッド購入など一時的な費用の合計:平均 74万円
- 月々の介護費用:平均 8.3万円
- 介護期間:平均 61.1ヶ月(約5年1ヶ月)
これらの平均値から単純計算すると、介護費用総額の平均は「74万円 + (8.3万円 × 61.1ヶ月) ≒ 約581万円」となります。老後資金の中から、これだけの金額が介護費用として必要になる可能性を考慮しておくことが重要です。
では、さらに年齢を重ねた「70代女性」に焦点を当ててみましょう。60代と70代では、心身の状態やライフスタイルが変化し、それに応じてお金の使い方も変わってきます。
70代になると、一般的に以下のような変化が見られます。
- 活動範囲の変化:車の運転をやめたり、遠出が減ったりすることで、交通費や交際費が減少する傾向があります。
- 健康への関心の高まり:一方で、保健医療費や、健康食品、マッサージといった身体のメンテナンス費用が増加する可能性があります。
- 住まいへのニーズの変化:家の段差が気になりだしたり、掃除が大変になったりと、住環境の改善(リフォームなど)にお金が必要になることも。
私が担当した75歳のB子さんは、まさにこのケースでした。60代の頃は友人との旅行が一番の楽しみでしたが、70代に入り膝を痛めてからは外出が減り、代わりに自宅で楽しめる手芸や園芸に時間を使うようになりました。
その結果、交際費や交通費は減りましたが、材料費や庭の手入れにお金がかかるようになったそうです。支出の費目は変わっても、生活の質を保つためには、やはり一定の金額が必要だということですね。
また、70代は「介護」が現実的なテーマになってくる年代でもあります。要介護認定を受けると介護保険サービスを利用できますが、自己負担分は生活費から支出しなければなりません。在宅介護か、施設入居か。その選択によって、必要な資金は大きく変わってきます。
70代の生活費を考える上では、「今の生活」だけでなく、「将来の身体の変化」も見据えて、医療や介護のための資金を別に準備しておくという視点が非常に重要です。この時期の住まいの選択肢として、お墓をどうするかという問題と合わせて、住み替えの検討を始める方もいらっしゃいます。
老後一人暮らし生活費をシミュレーション
さあ、ここまでの情報をもとに、具体的な人物像で生活費をシミュレーションしてみましょう。数字を自分事に置き換えることで、課題がより明確になります。
【モデルケース:70歳・持ち家一人暮らしの和子さん】
- 収入:年金 月額12万円(国民年金+遺族厚生年金)
- 性格:節約家だが、友人との付き合いは大切にしたい。健康に不安あり。
▼和子さんの1ヶ月の支出シミュレーション▼
費目 | 金額(円) | 備考 |
---|---|---|
食料 | 35,000 | 自炊中心で節約。 |
光熱・水道 | 15,000 | 平均的な金額。 |
交通・通信 | 12,000 | スマホは格安プラン。移動はバスや電車が中心。 |
保健医療 | 15,000 | 持病の通院と薬代。サプリメントも購入。 |
教養娯楽・交際費 | 20,000 | 月2回の友人とのランチと趣味の会費。 |
家の維持費 | 20,000 | 固定資産税と将来の修繕費のための積立。 |
その他雑費 | 10,000 | 衣類、日用品、慶弔費など。 |
支出合計 | 127,000 |
【シミュレーション結果】
収入120,000円 ー 支出127,000円 = 毎月7,000円の赤字
このシミュレーションから分かるように、和子さんはかなり切り詰めた生活をしても、毎月赤字になってしまいます。年間で8万4,000円、10年で84万円の貯蓄を取り崩す計算です。もし、この先大きな病気をしたり、家のリフォームが必要になったりすれば、赤字額はさらに膨らみます。
これが、老後資金計画のリアルです。でも、落ち込む必要はありません。このように「数字で把握する」ことができれば、次の一手を考えることができます。「じゃあ、あと7,000円どこを削ろうか?」ではなく、「この赤字をどう補うか?」という視点で対策を考えることが大切なんです。
65歳でいくら貯蓄あればいいですか?という疑問


「で、結局のところ、65歳でいくら貯金があれば安心なの?」
これは究極の疑問であり、僕も毎回聞かれる質問ですが、「答えは人それぞれです」としか言いようがありません。なぜなら、必要な貯蓄額は、これまで見てきたように、あなたの年金額、生活レベル、そして持ち家か賃貸かによって全く異なるからです。
ただ、それではあまりに不親切なので、一つの考え方のフレームワークを提示します。以下の計算式に、ご自身の数字を当てはめてみてください。
【老後に必要な貯蓄額の計算式】
(毎月の生活費 ー 毎月の年金収入) × 12ヶ月 × 老後年数 + 予備費 = 必要な貯蓄額
【例:先ほどの和子さん(70歳)で計算】
※65歳時点での計算と仮定し、老後年数を25年(65歳~90歳)とします。
- 毎月の不足額:7,000円
- 老後年数:25年
- 予備費:医療・介護・リフォーム代などとして500万円と仮定
計算式:
(7,000円 × 12ヶ月 × 25年) + 500万円 = 710万円
この計算によると、和子さんの場合、65歳時点で最低でも710万円の貯蓄が必要、ということになります。これは、あくまでシミュレーション上の生活を維持するための金額です。「ゆとり」をプラスするなら、さらに多くの資金が必要になります。
いかがでしょうか。こうして計算してみると、漠然としていた「必要な貯蓄額」が、かなり具体的な目標金額として見えてきませんか?まずは「ねんきん定期便」などでご自身の年金額を正確に把握し、この計算式に当てはめてみてください。それがすべてのスタートです。
持ち家があれば老後はいくら必要か解説
ここまで何度も触れてきましたが、「持ち家」という資産をどう捉えるかは、老後資金計画の最重要ポイントです。持ち家があることで、老後に必要な「現金(貯蓄)」の金額を大きく左右します。
改めて、持ち家がある場合のメリットと注意点を整理しましょう。
持ち家が老後資金に与える影響
- プラスの影響(必要貯蓄額が減る要因):
- 毎月の家賃支払いが不要。
- いざとなれば「売却」してまとまった資金を得られる。
- 「リバースモーゲージ」や「リースバック」で住みながら資金を調達できる。
- 賃貸と違い、資産として残るため相続が可能。
- マイナスの影響(必要貯蓄額が増える要因):
- 固定資産税が毎年かかる。
- 外壁、屋根、水回りなどの修繕費が不定期に発生する。
- マンションの場合は管理費・修繕積立金が毎月かかる。
- 資産価値が下落するリスクがある。
結論として、「持ち家があれば、賃貸よりは必要な現金の準備額は少なくて済む可能性が高い。ただし、ゼロではない」ということです。
僕の経験上、家の維持費として最低でも500万円~1,000万円は、生活費とは別に現金で準備しておくことをお勧めしています。この金額があれば、突然の大きな修繕にも慌てず対応できますし、精神的な安心感が全く違います。
大切なのは、ご自宅を「住む場所」としてだけでなく、「資産」として客観的に評価してみることです。今いくらで売れるのか、どんな活用法があるのか。それを知っておくだけで、いざという時の選択肢が大きく広がります。最近は不動産会社が無料査定をしてくれるので、一度試してみるのも良いでしょう。その上で、ご自身の意思を遺言書という形で残しておくことも、家族のための大切な準備になります。
老後一人暮らし生活費よくある質問(FAQ)
老後一人暮らし生活費持ち家の備えと計画


ここまで、老後の一人暮らし、特に持ち家がある場合の生活費について、様々な角度から見てきました。最後に、この記事の要点をまとめ、明日からできる具体的なアクションプランをリストアップします。
- 老後一人暮らしの平均支出は約14万円だが年金収入だけでは赤字が平均
- 支出で大きいのは食費と交際費で生活の質を保つ重要な費用
- 持ち家は家賃不要だが固定資産税と修繕費という大きな支出がある
- 家の維持費として毎月2~3万円は積み立てておく意識が必要
- 賃貸暮らしは平均家賃5万円が上乗せされ支出が約19万円になる
- ゆとりのある生活費は平均額に自分が楽しみたい金額を上乗せして考える
- 女性は平均寿命が長く年金額が少ない傾向にあり長期的な計画が必須
- 70代は活動の変化で支出項目が変わるが医療や介護の費用が増えやすい
- まずは自分の年金額を把握し毎月の収支をシミュレーションしてみる
- 必要な貯蓄額は「毎月の不足額×12ヶ月×老後年数+予備費」で計算
- 持ち家がある場合でも家の維持や介護のために500万円以上の予備費は準備したい
- ご自宅を「資産」として捉え売却価格や活用法を調べておく
- 生活費の見直しでは固定費、特に通信費や保険から手をつけるのが効果的
- iDeCoやNISAなどを活用し現役時代から計画的に資金準備を進める
- いざとなれば持ち家を活用した資金調達法もあることを知っておく



老後の資金計画は、暗いトンネルの中を手探りで進むようなものかもしれません。しかし、この記事でご紹介したように、データを元に一つずつ「見える化」していけば、必ず道筋は見えてきます。まずは第一歩として、ご自身の収支を書き出してみてください。それが、安心で豊かな老後へのスタートラインです。
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