
終活だよドットコムの運営者、終活・相続・不動産の専門家のカズです。
「成年後見制度を使うと親の不動産売却ができない」という話を聞いて、不安になっていませんか? この記事では、なぜ「成年後見制度で不動産売却ができない」と感じるのか、その本当の理由と、実際に売却するための手続きやデメリット、そしてもっとスムーズな解決策まで、専門家の視点でわかりやすく解説していきます。
特に、介護費用を捻出するために実家を売りたいのに、成年後見制度の手続きが複雑で前に進めない、というご相談は本当に多いんです。家庭裁判所の許可がなぜ必要なのか、親族の同意はどこまで影響するのか、売却に必要な費用はいくらかかるのか…。そういった具体的な疑問も解消します。
実は、認知症になる前であれば、家族信託という方法で、成年後見制度のデメリットを回避できる可能性もあります。成年後見制度で不動産売却ができないという壁にぶつかる前に、ぜひ知っておいてほしい情報です。この記事を読んで、あなたのご家族にとって最適な選択肢を見つけてくださいね。
成年後見制度の複雑な手続きや将来の資産凍結リスクに不安を感じたら…
\ 手遅れになる前に、専門家への相談が解決の第一歩です! /
- 成年後見制度で不動産売却が難しい本当の理由
- 家庭裁判所の許可を得るための具体的な手続き
- 売却を阻む「デメリット」や「費用」の実態
- 成年後見制度を避ける「家族信託」という選択肢
コンサルタント @KAZUこの制度の目的は「ご本人の財産を守ること」が最優先です。特にご自宅は、ただの資産である以上に、ご本人の生活の基盤であり、思い出の詰まった大切な場所です。それを後見人が勝手に売ってしまい、ご本人が路頭に迷う…なんてことを防ぐための「強力なブレーキ」なんですね。面倒ですが、ご本人を守るためと理解することが第一歩です。
成年後見制度で不動産売却できない理由


「売却できない」と聞いて、まず不安になりますよね。でも安心してください、これは「一切売却できない」という意味ではなく、正確には「後見人が独断で(自由に)売却することはできない」という意味なんです。
まずは、なぜ制度がそんな一見「面倒」とも思える厳しい制限を設けているのか、その根本的な理由、制度の「心」の部分から一緒に見ていきましょう。
家庭裁判所の許可という高いハードル
「成年後見制度で不動産売却ができない」と感じる最大の理由は、家庭裁判所の「許可」という、非常に高く、そして厳格なハードルがあるためです。
先ほどのアドバイスでも触れましたが、成年後見制度の根本的な目的は、認知症や障害などで判断能力が不十分になったご本人(法律用語で「被後見人」といいます)の「財産保護」です。不動産は、その方の財産の中で最も価値が大きいことが多く、何より生活の基盤となる最重要資産ですよね。
この最重要資産を、後見人が独断で(例えば、ご本人に不利益な安い条件で知人に売ったり、不必要な売却をしたり)処分してしまうリスクを防ぐため、法律は厳格な制限を設けているんです。
特に、ご本人が住んでいる(または過去に住んでいた)「居住用不動産」を売却するには、「居住用不動産処分許可」を家庭裁判所に申し立て、許可を得ることが法律で厳格に義務付けられています。(出典:裁判所『居住用不動産の処分許可』)
もし、この許可を得ずに売買契約を結んでしまうと、その契約は法的に「無効」となります。これが一番怖いところです。
不動産取引では、通常、買主様は銀行から住宅ローンを組みます。しかし、銀行は「無効」になるリスクのある取引には絶対にお金を貸してくれません。
また、不動産業者も、契約が白紙に戻るリスクを極端に嫌います。これが「成年後見人の物件は取引できません(扱いたくありません)」と敬遠され、結果として”売却できない”という誤解が広まる大きな理由なんです。
居住用不動産は売却が無効になる?


前述の通り、裁判所の許可なく居住用不動産を売却した場合、その契約は「無効」になります。ここで非常に重要な注意点は、裁判所が判断する「居住用不動産」の定義が、私たちが「今住んでいる家」と考えるより、ずっと広い範囲を指すということです。
「居住用」とみなされるケース
以下のケースはすべて「居住用」に該当する可能性が極めて高いです。なぜなら、裁判所は「ご本人の生活基盤を守る」という観点から広く解釈するからです。
- 現在住んでいる家(住民票がある) これは当然ですね。生活のまさに中心です。
- 住民票は施設に移したが、事実上生活の拠点となっている 例えば、週末だけ一時帰宅するなど、ご本人にとって「帰る場所」として機能している場合です。
- 施設や病院に入る「前」に住んでいた家 ここが一番の注意点です。たとえ何年も前に施設に入所していても、そこが「ご本人が元々住んでいた場所」であれば、居住用と判断されます。
- 現在は空き家だが、将来ご本人が戻って居住する可能性がある家 ご本人が「家に帰りたい」と話していたり、医学的に在宅介護の可能性がゼロではないと判断されたりする場合も含まれます。
自己判断は絶対にNG!
「もう施設に入って5年経つし、住民票も移したから居住用ではないだろう」とか「登記簿の地目が宅地だけど、実際は更地だから」といった後見人による自己判断は非常に危険です。
裁判所が「居住用」とみなした場合、許可のない売買契約は法的に「無効」となり、買主や関係者に多大な迷惑をかけることになります。判断に迷う場合は、必ず事前に家庭裁判所に相談するか、許可申立を前提として手続きを進めるべきです。
売却以外の行為も対象です
また、家庭裁判所の許可が必要なのは「売却」だけではありません。ご本人の居住環境に重大な影響を与える以下の行為も対象となります。
- 賃貸(家を貸す):他人に貸してしまえば、ご本人が戻りたくなった時に戻れなくなりますよね。
- 抵当権の設定(家を担保にお金を借りる):もし返済が滞れば、家が競売にかけられてしまいます。
- 賃貸借契約の解除(本人が借りて住んでいる家の契約をやめる):これも住む場所を失うことに直結します。
これらもすべて、ご本人の生活基盤を揺るがす行為として、裁判所の許可が必要とされています。
売却が却下される具体的なケースとは
では、いざ「居住用不動産処分許可」の申立てをしても、許可が出ない(却下される)のはどのような場合でしょうか。 家庭裁判所が審査する基準はただ一つ、「その売却が、ご本人(被後見人)の利益になるか」という点です。この「本人の利益」にならないと判断されると、申立ては却下されます。
本人の利益(必要性)が明確でない
まず、なぜ今、売る必要があるのか、その「必要性」が厳しく問われます。
「将来なんとなく不安だから、今のうちに現金化しておきたい」「不動産価格が高いうちに売っておきたい」といった、具体的必要性に欠ける漠然とした理由はまず許可されません。
また、「相続税対策のために生前贈与の資金にしたい」といった、ご本人の「現在の生活」に直結しない理由も難しいです。
「ご本人の介護費用や施設利用料で毎月○万円の赤字が出ており、預貯金残高から計算してあと○ヶ月で生活費が破綻する」といった、切迫した必要性を、収支報告書などの客観的な資料で証明する必要があります。「施設入所の一時金が払えない」「高額な医療費が今すぐ必要」なども、明確な理由になります。
生活基盤を失うリスク
ご本人の生活基盤を守ることが制度の目的なので、当然、売却によって生活基盤が失われるリスクがあれば許可は出ません。
- 代替住居が確保されていない:ご本人がまだその家に住んでおり、売却後の転居先(代替住居)が確保されていない場合は、当然ながら許可は出ません。
- 住環境の悪化:代替住居が確保されていても、それが現在の住環境より著しく劣る(例:バリアフリーでない、医療機関から遠くなる)場合、本人の利益にならないと判断されることがあります。
- 本人の意思:施設に入所中であっても、ご本人が「家に帰りたい」という意思を時折見せている場合、裁判所は「在宅介護の可能性がゼロではない」と判断し、売却には極めて慎重になります。
売却条件が不相当
売却の必要性が認められても、その「売り方」が不適切であれば許可は出ません。
例えば、特定の親族(後見人の兄弟など)に、市場価格とかけ離れた安い金額で売却するような申立ては、「本人の利益」に明らかに反するため、まず許可されません。これは「贈与」に近い行為であり、本人の財産を不当に減少させるからです。
そのため、申立時には、売却価格が客観的に妥当であることを証明するため、通常、複数の不動産業者による査定書の提出が求められます。1社だけだと、その業者が後見人と結託していないか疑われる可能性があるため、客観性を担保するために複数(通常2社以上)が必要とされるのです。
手続きが複雑で長期間かかるデメリット


「売却できない」と感じさせるもう一つの実務的な要因が、手続きの「順序」と「時間」です。これが本当に厄介なんです。
正しい手続きの順序(ここが落とし穴!)
多くの方が誤解するのがこの順序です。「まず裁判所の許可をもらってから、安心して売却活動を始めよう」ではありません。正しくは、ほぼ逆です。
- 不動産業者と媒介契約を結び、売却活動を始めます。 (この段階ではまだ許可は不要です)
- 購入希望者が見つかります。 (価格や条件の交渉を行います)
- その購入希望者と「売買契約書(案)」を作成します。 (「案」というのがポイントです。まだ正式契約ではありません)
- その「売買契約書(案)」や査定書などを添付して、家庭裁判所に「居住用不動産処分許可」を申立てます。 (ここで初めて裁判所が登場します)
- 裁判所が審査し、「許可」の審判を下します。 (通常1ヶ月程度かかります)
- 許可審判書をもって、正式な売買契約を締結(または契約の効力を発生させ)、決済・引き渡しを行います。 (ここでやっと取引完了です)
そうなんです。なぜこんな面倒な順序なのか? それは、「いくらで、誰に売るのか」という具体的な売却条件が決まっていない段階では、裁判所は「その売却が本人の利益になるか(価格が妥当か)」を判断できないからです。
この手続きは、買主にも「この契約は、家庭裁判所の許可が下りなければ白紙撤回されます」という「停止条件付売買契約」であることを理解してもらう必要があります。
買主からすれば、いつ許可が下りるかわからない(しかも許可されない可能性もある)取引に付き合うことになります。この交渉と、許可が下りるまでの待機期間こそが、売却を難しくさせる実務的な要因です。
トータルで1年~2年もかかる
売却までのタイムライン目安(ゼロから始めた場合)
- ステップ1:成年後見の申立〜選任:約3〜4ヶ月(裁判所の混雑具合や書類不備で延びることも)
- ステップ2:売却活動〜買主決定:約半年〜1年程度(物件の状況や市況によります)
- ステップ3:売却許可申立〜許可:約1ヶ月(ここも書類不備などがあれば延びます)
ゼロから(成年後見の申立から)始めた場合、不動産売却が完了するまでトータルで1年〜2年かかることも珍しくありません。これは順調に進んだ場合の目安です。
「すぐに介護費用が必要なのに!」という切迫した状況では到底間に合わない、これが制度の大きなデメリットであり、「使えない」「売却できない」と感じる最大の理由かもしれません。
親族の同意がないと難しい?
「私は売りたいけど、他のきょうだいが『実家を売るなんてとんでもない』と反対している」というケースも、本当によくあるご相談です。
まず法律上のルールから言うと、他の親族(ご本人の子など、将来の相続人)の同意は、売却許可の「必須要件ではありません」。理論上は、後見人が本人の利益になると判断し、裁判所がそれを認めれば、他の親族が反対していても売却は可能です。
しかし、これはあくまで理論上。実務上は、親族の意向は極めて重要です。
家庭裁判所は、許可の判断をする際に、親族(推定相続人)に「後見人がお父さんの家を売ろうとしていますが、何か意見はありますか?」という内容の照会書(アンケートのようなもの)を送付することが多いです。
ここで強い反対意見が書かれていると、裁判所は「なぜ反対するのか?」「本当に今売る必要があるのか?」をより慎重に審査します。
特に「その家は思い出のある実家だから、親が亡くなるまで売らないでほしい」といった感情的な反対が強く、かつ売却の必要性が切迫していない(例:預貯金がまだ十分にある)場合、裁判所は「本人の利益」よりも「親族間のトラブル回避」を優先し、許可に慎重になる傾向があります。
実務上のテクニック:説得と同意書
申立てをスムーズに進めるため、実務上は、事前に他の親族(推定相続人)としっかり話し合い、「親族の同意書」を申立書に添付するのが非常に有効なテクニックとなります。
感情論で反対している親族には、感情でぶつかっても解決しません。後見人として作成した「収支報告書(案)」や「介護費用の見積書」など客観的な資料を見せ、「このままではあと1年で親の預金が底をつき、介護サービスを止めざるを得ない。だから売却が必要だ」と、売却の必要性を冷静に説明することが説得の鍵となります。



ここまで読んで、「うわ、面倒くさい…」「親族ともめそう…」と思われたかもしれません。その通り、本当に大変なんです。特に親族間の感情的な対立があると、手続きは一気に停滞します。だからこそ、私は「元気なうちに次の手を打っておく」ことの重要性を強く訴えています。それが次のH2のテーマです。
成年後見制度の複雑な手続きに不安を感じていませんか?
\ 「売却できない」壁にぶつかる前に、今すぐできる対策があります! /
成年後見制度で不動産売却できない壁を避けるには


成年後見制度(特に「法定後見」)の「厳しさ」は、ご本人の判断能力が失われた「後」の財産保護が目的なので、どうしても手続きが複雑になり、ブレーキがかかります。
では、そうなる「前」、つまり親御さんがまだ元気で判断能力がしっかりしているうちにできる対策はないのでしょうか?
実は、あります。それが「任意後見制度」と「家族信託」です。
任意後見制度との違いとは?
成年後見制度には、大きく分けて2種類あります。判断能力が低下した「後」に申立てる「法定後見」(いわゆる成年後見、保佐、補助)と、判断能力がある「前」に備える「任意後見」です。
任意後見制度は、ご本人が元気なうちに、将来判断能力が低下した時に備えて、「誰に(例:長男に)」「何をしてほしいか(例:預金管理と不動産売却)」を自ら選び、公証役場で「公正証書」による契約で決めておく制度です。
| 法定後見 | 任意後見 | |
|---|---|---|
| 開始時期 | 判断能力が低下した「後」 | 判断能力がある「前」に契約 |
| 後見人 | 家庭裁判所が選任(親族がなれない場合も) | 本人が自由に選べる(契約相手) |
| 代理権の範囲 | 法律で定められた範囲 | 契約(公正証書)で自由に決められる |
| 不動産売却 | 裁判所の許可が必須(居住用) | 原則不要(契約書に記載があれば) |
最大のメリット:裁判所の許可が原則不要
これが法定後見との決定的な違いです。本人が元気なうちに作成した「任意後見契約書(公正証書)」の代理権目録に、「不動産の売却に関する代理権」が適切に記載されていれば、たとえ居住用不動産であっても、家庭裁判所の「居住用不動産処分許可」(法定後見で必要な許可)は原則として不要です。
これは、法律が「本人が元気なうちに、将来の売却を自ら決断し、代理権を与えた」という自己決定権(本人の意思)を、裁判所の画一的な判断よりも優先して尊重するためです。
ただし、契約書に「不動産を売却する権限」としっかり明記しておくことが大前提です。文言が曖昧だと機能しないリスクもあるため、作成時は専門家への相談が必須です。
ただし監督人は選任される
ただし、ご本人の判断能力が低下し、任意後見が「開始」されると、家庭裁判所は必ず「任意後見監督人」(通常、弁護士や司法書士などの専門家)を選任します。任意後見人(例:長男)は、この監督人に業務を報告し、監督を受けることになります。
裁判所の「許可」は不要でも、任意後見人が独断で不適切な売却(例えば、相場より著しく安い価格で知人に売るなど)をすれば、監督人から差し止められたり、義務違反を問われたりします。これは、任意後見人が権限を濫用しないための「監視機能」であり、むしろ他の親族にとっては安心材料になるとも言えますね。
売却に必要な費用や専門家報酬


「売却できない」と感じるもう一つの現実的な理由が、「想定外の費用」です。成年後見制度の利用には、大きく分けて「継続的にかかる費用」と「一時的にかかる費用」があります。「成年後見制度の費用や「おやとこ」との料金比較を解説した記事で詳しくまとめています。」
これらの費用はすべて、原則としてご本人の財産から支払われます。
継続的にかかる費用(報酬)
弁護士や司法書士などの専門家が後見人や監督人(法定後見でも任意後見でも)に選任された場合、家庭裁判所の決定に基づき、報酬(月額)が発生します。これはご本人が亡くなるまで、または財産が尽きるまで、ずっと継続的に発生するのが一般的です。これが長期化すると、かなりの負担になります。
| 役職 | 管理財産額 | 報酬目安 |
|---|---|---|
| 後見人 | 1,000万円以下 | 2万円 |
| 後見人 | 1,000万円超 5,000万円以下 | 3万〜4万円 |
| 後見人 | 5,000万円以上 | 5万〜6万円 |
| 監督人 | 5,000万円以下 | 1万〜2万円 |
| 監督人 | 5,000万円以上 | 2.5万〜3万円 |
※上記はあくまで基本報酬の目安です。不動産売却のような特別な業務(これを「身上監護」に対し「財産管理」の「付加事務」と言ったりします)を行った場合、これらの基本報酬に上乗せして「付加報酬」(売却代金の0.5%〜1%程度など)が認められることもあります。
一時的にかかる費用(申立・依頼料)
制度の利用開始(「開始の審判」申立)や、不動産売却の許可申立自体にも、実費(収入印紙、郵便切手、医師の診断書代などで数万円程度)がかかります。
さらに、これらの複雑な申立手続き(特に開始の申立)を司法書士や弁護士に依頼する場合、別途報酬(手数料)が発生します。
- 成年後見「開始」申立の依頼報酬:一般的に10万〜20万円程度(書類収集や裁判所への提出を代行)
- 居住用不動産処分「許可」申立の依頼報酬:司法書士事務所の相場で4万〜8万円程度(申立書や理由書の作成代行)
ご注意ください
記載の金額はあくまで一般的な目安です。都市部と地方でも差がありますし、事案の難易度(例:親族間で争いがある)や各専門家の報酬基準によって異なります。正確な費用は、必ず事前に見積もりを取得し、専門家にご相談ください。
認知症になる前の対策:家族信託
成年後見制度(法定後見・任意後見)は、良くも悪くもご本人の「判断能力が低下した後」の財産「保護」に重点が置かれています。裁判所や監督人が関与するため、財産を積極的に活用(売却や組換え)することには、どうしてもブレーキがかかります。
そこで今、「成年後見制度で不動産売却ができない」という問題を、別の角度から根本的に回避する仕組みとして、最も注目されているのが「家族信託(民事信託)」です。そもそも認知症の方の不動産売却方法や資産凍結対策について全体像を知りたい方は、こちらの記事もご覧ください。
家族信託とは?
ご本人が元気なうち(判断能力があるうち)に、信頼できるご家族(例:長男)との間で「信託契約」を結びます。「この実家の不動産を、将来もし自分が認知症になったら、長男が売却して、自分の介護費用や施設費用に充てる」といった内容を、契約で柔軟に決めておく仕組みです。
この場合、財産を託すお父さんを「委託者」、財産の管理・売却を託される長男を「受託者」、その財産から生じる利益(売却代金や家賃収入)を受けるお父さん本人を「受益者」と呼びます。(この場合、委託者=受益者ですね)
家族信託なら売却がスムーズな理由


家族信託が、なぜ成年後見制度のデメリットを回避できるのか、その決定的な理由を解説します。
①家庭裁判所の許可が不要
最大のメリットはこれです。成年後見制度と違い、家族信託では不動産の名義(登記簿)が「(委託者)お父さん」から「(受託者)長男」に形式的に変わります(※「信託のため」と登記簿にしっかり明記されます)。
「名義が変わる」というのがポイントです。 これにより、お父さん(委託者)が将来認知症になり判断能力を失っても、不動産の所有者(登記名義人)である受託者(長男)は、自身の権限と責任において、家庭裁判所の許可を得ることなく、売却手続きが可能です。
不動産業者との媒介契約、買主との売買契約、決済、登記手続きのすべてを、受託者(長男)が契約の当事者として行えます。
もちろん、信託契約で定められた目的(例:介護費用の捻出)のためにしか売却できませんが、成年後見制度のように「買主が決まってから許可申立」といった時間のかかるプロセスが一切不要。「すぐに費用が必要」という事態にもスムーズに対応できるのです。
②柔軟な財産管理が可能
成年後見制度が「財産を守る(減らさない)」ことを主眼にするのに対し、家族信託は契約内容に応じて「財産を活用する」ことも可能です。
例えば、成年後見制度ではまず不可能な「実家を売却した資金で、より利回りの良い別の収益物件に買い換える」といった積極的な資産活用や、「アパートが古くなったので、取り壊して駐車場経営に切り替える」といったことも、あらかじめ契約に盛り込んでおけば可能になります。
(もちろん、すべては「受益者」であるお父さんの利益のため、という目的の範囲内に限られます)
③継続的な専門家報酬が原則不要
成年後見制度のように、ご本人が亡くなるまで月額数万円の専門家報酬が継続的に発生することもありません。
もちろん、信託契約という高度な法律行為を行うため、契約書(通常、公正証書にします)の作成やコンサルティングを司法書士などの専門家に依頼する「初期費用」(数十万〜百数十万円程度が相場です)や、不動産の名義変更の「登記費用」(登録免許税など)はかかります。
しかし、ランニングコストが原則かからない点は、トータルで見ると大きなメリットと言えますね。
(※ただし、任意後見と同様に、受託者(長男)を監督する「信託監督人」をあえて設定する場合は、その専門家報酬が別途発生するケースもあります)
このように、家族信託は「成年後見制度で不動産売却ができない」という将来の壁を、ご本人の判断能力があるうちに対策しておくことで回避できる、非常に有効な手段なんです。
ただし、家族信託にももちろん注意点があります。「家族信託の落とし穴や注意点」については、別の記事で詳しく解説していますので、契約前に必ず確認しておきましょう。
専門家への相談は「おやとこ」へ
「家族信託にすごく興味があるけれど、何から始めたらいいかわからない…」 「うちのケースでは、成年後見と家族信託、どっちが合っているんだろう?」 「そもそも、親にどうやってこの話を切り出したらいいんだろう…」
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一番避けたいのは、対策を先延ばしにした結果、親御さんの判断能力が低下してしまい、「家族信託」という有効な選択肢が取れなくなってしまうことです。「まだ元気だから大丈夫」と思っている今こそが、対策のベストタイミングです。手遅れになる前に、ぜひ一度、お気軽にお問い合わせください。


成年後見制度の不動産売却に関するFAQ





「成年後見制度」と「家族信託」は、どちらが優れているというものではなく、目的が異なります。判断能力が低下した「後」の保護が目的なら成年後見制度、低下する「前」に柔軟な対策をしたいなら家族信託です。ご自身の親御さんの状況や希望に合わせて、最適な「備え」を選んでくださいね。
成年後見制度で不動産売却できない悩みと家族信託
今回は、「成年後見制度で不動産売却ができない」というお悩みの真相について、専門家の視点から、かなり詳しく解説しました。
結論をもう一度まとめますね。 成年後見制度(法定後見)で不動産売却は、「一切できない」のではなく、「本人の財産を守るために、家庭裁判所の厳格な許可と複雑な手続きが必要で、非常にハードルが高い」というのが実態です。
特にご本人が住んでいた(または住む可能性がある)居住用不動産はハードルが高く、「買主を見つけてから許可申立」という独特な手続きが必要なため、売却完了まで1年以上の時間と多くの費用がかかります。これが「売却できない」と感じる正体です。
そして、この「売却できない」という将来のリスクを回避する最も有効な手段の一つが、ご本人が元気なうちに契約する「家族信託」です。
ご本人の判断能力が失われてからでは、もう「家族信託」という選択肢はとれません。成年後見制度しか道がなくなってしまいます。「まだ大丈夫」な今だからこそ、将来の財産管理についてご家族で話し合い、対策を始めることが重要です。
「おやとこ」では、そうしたご家族の第一歩を全力でサポートします。「成年後見制度で不動産売却ができない」といった将来のお悩みも、家族信託で解決できるかもしれません。ぜひお気軽にご相談ください。
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今日からできるアクションプラン
- 親御さんと「将来のお金の話」をする時間を作る (まずは「介護費用ってどれくらいかかるんだろうね?」といった軽い話題から始めてみましょう。ご自身の終活の話として切り出すのも良いですね)
- 売却の可能性がある不動産をリストアップする (実家、空き家、アパートなど。誰の名義になっているか登記簿(全部事項証明書)も確認してみましょう。法務局で誰でも取得できますよ)
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行動あるのみ、です!大切なご家族のために、今日一歩踏出してみましょう!
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