
終活だよドットコムの運営者、終活・相続・不動産の専門家のカズです。
「不動産査定仕組み」と聞くと、なんだか複雑で難しそうと感じていませんか。「訪問査定と机上査定の違いは?」「最近よく聞くAI査定ってどうなの?」など、ご自身の不動産、特に土地や家の価格がどう決まるのか、不安に思う方も多いでしょう。
この記事では、そんな不動産査定仕組みの基本から、一括査定の賢い使い方まで、専門家の視点からわかりやすく解説していきます。売却を検討し始めたばかりの方も、すでに査定を依頼中の方も、この記事を読めば「なるほど、そういうことか!」と納得できるはずです。
大切な資産を損せずに売却するための第一歩として、ぜひ最後までお付き合いください。
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- 査定価格が決まる3つの基本的な方法
- AI査定と訪問査定のメリット・デメリット
- 不動産会社によって査定額が違う本当の理由
- 損をしないための査定依頼のコツと注意点
コンサルタント @KAZU査定価格は「売れる保証価格」ではありません。あくまで「3ヶ月以内に売れるであろう予測価格」なんです。この違いを理解することが、不動産売却のスタートラインです。提示された金額に一喜一憂せず、その「根拠」をしっかり聞く姿勢が何より大切ですよ。
不動産査定仕組みの基本と2つの流れ


不動産の売却を考えたとき、最初の一歩が「査定」です。でも、その価格がどうやって決まるのか、ブラックボックスのように感じていませんか?
まず大切なのは、「価格」には3種類あると知ることです。不動産会社が提示する「査定価格」、それを基に売主が決める「売り出し価格」、そして最終的に売買が成立する「成約価格」。これらは必ずしもイコールではありません。
ここでは、その大元となる「査定価格」がどう決まるのか、複雑に見える不動産査定仕組みの「基本のキ」を、誰にでも分かるように丁寧に解き明かしていきます。
なお、とくに空き家をどうするか悩んでいる方は、査定のあとの流れまで一気にイメージできるように、空き家売却の全手順と法改正・税金対策をまとめたガイドもあわせてチェックしてみてください。


机上査定と訪問査定の流れ
不動産査定には、大きく分けて2つの種類があります。「机上査定(簡易査定)」と「訪問査定(現地査定)」です。この2つは、調査の深さと精度がまったく異なります。それぞれの特徴と流れをしっかり理解しておきましょう。
机上査定(簡易査定)
机上査定は、その名の通り「机の上で」完結する査定です。不動産会社の担当者は現地を訪問しません。
【流れ】 売主がインターネットや電話で、物件の所在地、面積、間取り、築年数といった基本情報を提供します。不動産会社は、その情報と、過去の取引事例データベース(レインズなど)や公的なデータ(路線価、公示地価など)を照合して、おおよ部の価格を算出します。結果はメールや電話で知らされることが多く、非常にスピーディーです。
- メリット: 手軽でスピーディー(最短即日~数日)。複数社の価格感を比較しやすい。現地対応が不要なので、まだ売却を迷っている段階でも気軽に頼めます。
- デメリット: あくまで「概算」であり、精度は低いです。なぜなら、リフォームによる内装の綺麗さ、日当たり、眺望の良さ、隣地の騒音、建物の劣化具合といった「物件固有の状態」が一切反映されないからです。
- 推奨シーン: 「まずは相場を知りたい」「まだ具体的に売るか決めていない」という売却検討の初期段階。
訪問査定(現地査定)
訪問査定は、不動産会社の担当者が実際に現地を訪問し、物件の状態を細かく確認して価格を算出する、より本格的な査定方法です。
【流れ】 まず担当者と日程を調整し、物件に立ち会います(所要時間は30分~1時間程度が一般的です)。担当者は、机上査定で使うデータに加え、以下の点をプロの目で厳しくチェックします。
- 内部・設備: 室内の損傷や劣化具合(壁紙の汚れ、床の傷み)、水回り(キッチン、浴室、トイレ)の状態、リフォーム履歴、収納の充実度など。
- 外部・土地: 敷地の形状(整形地か不整形地か)、土地と道路の境界、外壁のひび割れや塗装の状態、駐車スペースなど。
- 個別要因(データ化困難な要素): 日当たり、眺望、騒音の有無、風通しなど、データでは分からない「五感」で感じる要素。
- 周辺環境: 最寄り駅からの実際の距離感、周辺道路の交通量、近隣の利便施設(スーパー、学校、病院)の状況など。
これらの現地調査の結果と、法務局での権利関係調査などを経て、数日~1週間後に詳細な「査定書」が提示されます。
カズの豆知識:査定時に「不用品」も相談してみる
家の売却と同時に、家財の整理(遺品整理や生前整理)が必要になるケースは非常に多いです。訪問査定の際に、家の中にある不用品の処分についても相談してみましょう。
不動産会社が提携する業者を紹介してくれることもありますが、価値があるかもしれない品(着物、骨董品、ブランド品など)は、先に専門の買取業者に見積もりを依頼するのがおすすめです。
「これって捨てるしかないのかな?」と思う家財の中にも、意外と査定額がつくものがあります。どんなモノに値段がつきやすいかは、家財で値段がつくものの具体例と高く売るコツをチェックしてから整理を進めると安心ですよ。
メリット: 物件の個別事情(良い点も悪い点も)が反映されるため、極めて精度の高い、現実的な売却予測価格がわかります。この価格が、実際の「売り出し価格」を決めるための信頼できる基準となります。
デメリット: 立ち会いが必要で、結果が出るまでにも時間を要します。 推奨シーン: 「具体的に売却を決めている」「売り出し価格を決定したい」という本格的な売却活動のフェーズ。
価格を決める3つの評価方法とは


では、不動産会社は具体的にどうやって価格を計算しているのでしょうか。魔法のように数字が出てくるわけではなく、不動産鑑定評価の基準に基づいた、主に3つのロジック(評価方法)を組み合わせて使っています。
1. 取引事例比較法
最も一般的に使われる、査定の主流となる方法です。特にマンションや住宅地の戸建てなど、居住用不動産の査定で中心となります。
これは、査定する物件と条件が似ている「近隣の物件」が、「過去にいくらで取引されたか」という実際の成約価格を基に算出する方法です。
例えば、「Aマンションの7階、南向き、70平方メートル」を査定する場合、同じマンションや近隣の同等マンションの「5階、東向き、68平方メートルが〇〇万円で売れた」というデータを参考にします。
ただし、そのまま比較するのではなく、「補正」というプロセスが加わります。これが担当者の腕の見せ所です。
- 時点修正: 過去の取引時点と現在とで、市場価格が変動(例:上昇傾向)していれば補正します。
- 個別要因の比較: 「南向きだからプラス」「階数が上だからプラス」「内装が劣るからマイナス」といった個別の条件差を価格に反映させます。
この「補正」のさじ加減が、後述する「会社によって査定額が違う理由」の最大の要因となります。
2. 原価法
これは「土地」と「建物」を別々に評価し、それらを合計して価格を導き出す方法です。主に一戸建ての査定、特に建物の評価で使われます。
土地は取引事例比較法や路線価などで評価されますが、建物の評価ロジックが特徴的です。
建物の評価額 = 再調達価格 - 減価修正
- 再調達価格: 査定対象の建物と「同じ品質・構造の建物を、現時点で新築した場合にかかる費用」です。
- 減価修正: 新築時からの「経年劣化」による価値の減少分を差し引くプロセスです。
この「減価修正」の基準として、税法上で定められた「法定耐用年数」が参考にされます。この耐用年数を超えると、税務上の建物価値はゼロに近くなります(ただし、市場価値がゼロになるわけではありません)。
参考:主な構造と法定耐用年数
| 建物の構造 | 法定耐用年数(居住用) |
|---|---|
| 木造 | 22年 |
| 軽量鉄骨造(骨格材肉厚により変動) | 19年または27年 |
| 重量鉄骨造 | 34年 |
| RC造(鉄筋コンクリート造) | 47年 |
(※これはあくまで税法上の基準であり、実際の建物の寿命や市場での評価とは異なります)
3. 収益還元法
これは主に、アパートや賃貸マンション、オフィスビルといった「収益を生み出す不動産(投資用不動産)」の査定で使われる方法です。
その物件が将来にわたって「どれくらいの家賃収入を生み出すか(収益性)」に着目し、そこから現在の価値を逆算します。「直接還元法(年間の純収益を還元利回りで割る)」や「DCF法(将来の収益を現在価値に割り引く)」といった専門的な手法が用いられます。
ご自身の「自宅」を売却する場合(実需物件)は、この方法がメインになることは稀ですが、賃貸併用住宅や、立地が良く「貸すこともできる」物件の場合は、この収益性が査定価格に加味されることもあります。
ポイント
一般的なマンションや戸建ての売却(実需物件)では、「取引事例比較法」がメインで使われ、一戸建ての建物評価などで「原価法」の考え方が補助的に使われる、と覚えておくと良いでしょう。
AI査定の精度と限界
最近、「AI査定」という言葉をよく耳にします。これは、AI(人工知NODE)が膨大な過去の取引データ、公的な統計データ、物件情報などを統計的に分析し、推定価格を「自動で」算出するシステムです。多くの場合、机上査定の一形態として提供されています。
メリットは、その匿名性と即時性です。サービスによっては個人情報の入力を最小限にでき、24時間いつでも即時に価格がわかります。不動産会社からの「しつこい営業電話」を避けたい方には非常に便利なツールと言えます。
しかし、大きな限界もあります。AI査定はあくまで「データのみ」で判断するため、机上査定と同様に、現地を見なければわからない「物件固有の事情」を価格に反映することができません。
AI査定の注意点:1,000万円の損?
ある事例では、AIが同じマンションの「低層階の成約事例」データに基づき査定額を算出しました。しかし、実際の売却物件は「高層棟で視界が開け、眺望と風通しが抜群の部屋」でした。
この「データ化されていない付加価値(眺望の良さ)」をAIは認識できず、結果として、AIの査定額通りに売却していたら最大で1,000万円も損をしていた可能性があったと報告されています。
AI査定は、「プライバシーの確保(営業電話の回避)」と引き換えに、「査定の精度(高値売却のチャンス)」を犠牲にする可能性をはらんでいることを理解しておく必要があります。
鑑定評価との決定的な違い
「査定」とよく似た言葉に「鑑定評価」があります。「プロが価格を出す」という点は同じですが、この2つは、目的、資格者、費用、法的拘束力が全く異なるものです。
私たちが「家を売りたい」と考えて不動産会社に依頼するのは、無料の「査定」です。これはなぜ無料かというと、鑑定評価のような中立的な価値評価ではなく、あくまで「仲介手数料」という成功報酬を得るための「営業活動の一環」だからです。
一方で、「鑑定評価」は、不動産鑑定士(国家資格)だけが行える有料の専門業務です。税務署や裁判所への公的な証拠資料として使われることを目的としており、国土交通省が定めた厳格な「不動産鑑定評価基準」(出典:国土交通省)に基づき評価額が算出されます。
| 比較項目 | 不動産会社の「査定」 | 不動産鑑定士の「鑑定評価」 |
|---|---|---|
| 目的 | 売却(仲介)のため。「いくらで売れそうか」という予測。 | 公的な価値証明のため。税務署や裁判所への証拠資料。 |
| 資格者 | 不動産会社(宅地建物取引士など) | 不動産鑑定士(国家資格) |
| 費用 | 無料(仲介手数料を得るための営業活動) | 有料(数十万円が一般的) |
| 法的拘束力 | なし(あくまで目安) | あり(公的機関への証明力を持つ) |
「鑑定評価」が必要になるのは、主に以下のような法的な証明が必要なケースに限られます。
- 不動産相続(遺産分割協議で揉めている場合)
- 離婚(財産分与のため)
- 裁判(係争物件の価値証明)
- 税務申告(相続税、贈与税など)
一般的なご自宅の売却であれば、不動産会社の「査定」で十分です。
会社で査定額が違う理由
複数の会社に査定を依頼すると、A社は3,000万円、B社は3,300万円、C社は2,900万円と、価格が数百万円単位でバラバラになることは珍しくありません。これには明確な「仕組み」上の理由が存在します。
1. 比較物件(取引事例)の選定差
査定の主流は「取引事例比較法」だとお伝えしましたが、どの取引事例を「類似物件」として選ぶかは、不動産会社の判断に委ねられています。A社は最近の高値成約事例を参考に強気な査定をし、B社は少し前の弱気な成約事例を参考に慎重な査定をすれば、査定額は当然異なります。
2. 得意分野と販売力の差
不動産会社には、それぞれ「得意なエリア」や「得意な物件種別」(例:マンション売却が得意、戸建て売却が得意)があります。
例えば、そのエリアでマンションを探している「購入希望者のリスト(顧客台帳)」を豊富に持っている会社は、「この価格でも買ってくれるお客様がいる」という自信があるため、他社よりも強気(高め)の査定額を提示できる可能性があります。
3. 販売戦略(値付け)の差
査定額は「販売戦略の提案」でもあります。
- 「売主様の希望を汲み、まずは相場より1割高い『チャレンジ価格』で市場の反応を見ましょう」という戦略の会社。
- 「相場通りの価格で早期(3ヶ月以内)に確実に売却し、次のステップへスムーズに進みましょう」という戦略の会社。
どちらの戦略を提案するかによって、提示する査定額(の根拠)は変わってきます。
4. 担当者の経験値の差
最終的に査定を行うのは「人」です。市場動向の読み取り方、データの使い方、そして訪問査定での「この眺望をいくらと評価するか」「この内装の傷をどれだけマイナスと見るか」という個別要因の判断は、担当者の経験や知見に大きく依存します。したがって、同じ不動産会社であっても、担当者が異なれば査定額が変わるケースもあり得ます。
「共有名義や再建築不可で、他社に断られた…」 一般的な不動産会社では査定額が出にくい物件もあります。そうした「訳あり物件」を専門に扱う買取業者なら、売却の道が開けるかもしれません。
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実践的な不動産査定仕組みと注意点


査定の基本的な仕組みがわかったところで、次は「実務」の世界、もう少し踏み込んだお話をしましょう。ここは、売主様が損をしないために、ぜひ知っておいていただきたい「防衛術」でもあります。
実際に「高すぎる査定額」や囲い込みが原因で、数百万円単位の損につながったケースも少なくありません。具体的なNG事例や気をつけたいポイントは、不動産売却で本当にあった“やばいケース”と損しないための実例ガイドで詳しく解説していますので、あわせて参考にしてください。
なぜ高すぎる査定額が出てくるのか、業界の慣習や、私たちが賢い売主になるためにどう動けばいいのか、具体的な注意点と実践的なテクニックをお伝えします。
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複数の会社から査定が出たら、「一番高い会社」ではなく「査定の根拠を一番ちゃんと説明してくれた会社」を選んでください。高すぎる査定は、後で値下げ交渉される「撒き餌」かもしれません。信頼できるパートナー探しこそが、売却成功の秘訣です。
高い査定額の裏にあるリスク
複数社のうち1社だけが突出して高い査定額を提示してきた場合、とても魅力的に見えますよね。「ここなら高く売ってくれるかも!」と期待してしまうお気持ち、よくわかります。しかし、その「高すぎる」査定額には注意が必要です。
不動産会社にとって、査定は「無料の営業活動」です。彼らの最終目的は、売主と「媒介契約(ばいかいけいやく)」(売却の専任窓口となる契約)を締結し、売買成立時に「仲介手数料」を得ることにあります。
この契約欲しさに、売主の「少しでも高く売りたい」という心理を利用し、意図的に相場よりも高い(実現可能性の低い)査定額を提示して契約を取ろうとする会社が、残念ながら存在するのです。これを業界用語で「高預かり(たかあずかり)」と呼ぶこともあります。
高すぎる査定額がもたらす「負のスパイラル」
根拠の薄い高値で売り出すと、以下のようなリスクを負うことになります。
- 売れ残り(販売の長期化): 相場よりも著しく高いため、買い手の候補が現れず、問い合わせも内覧も入らない状態が続きます。
- 市場での評価低下(物件が“汚れる”): 「長期間売れ残っている=何か問題があるのではないか?」と市場から見なされ、物件の鮮度が落ちてしまいます。
- 値下げ提案と大幅な価格交渉: 売れ残った結果、契約欲しさに高値を提示した担当者から「市場の反応が悪いので、値下げしましょう」と提案されます。最終的に、稀に現れた購入希望者から足元を見られ、「大幅な価格交渉(値下げ)」を受け入れざるを得なくなり、本来売れるはずだった適正価格よりも、さらに低い価格でしか売れなくなってしまう可能性もあります。
相場より1~2割高い「チャレンジ価格」での売却が、必ずしも悪いわけではありません。しかし、それが「売主の希望を叶えるための戦略」なのか、それとも「契約欲しさに提示された、根拠の薄い高値」なのかを、売主自身が見極める必要があります。
知っておくべき囲い込みとは


「高すぎる査定額」の背景には、不動産会社の収益構造(ビジネスモデル)が深く関わっています。その中でも、売主様が最も注意すべき悪質な営業手法が「囲い込み」です。
不動産会社の利益(仲介手数料)には、2つのパターンがあります。
- 片手取引: 売主側の不動産会社(A社)と、買主側の不動産会社(B社)が異なる取引。A社は売主からのみ、B社は買主からのみ、それぞれ仲介手数料を受け取ります。(利益:1社分)
- 両手取引: 1つの不動産会社(A社)が、売主と買主の両方を見つけてくる取引。A社は、売主と買主の「両方」から仲介手数料を受け取ることができます。(利益:2社分=2倍!)
当然ながら、不動産会社にとっては、利益が2倍になる「両手取引」が最も望ましい形態です。
「囲い込み」とは、この両手取引を意図的に狙うため、一部の不動産会社が行う悪質な営業手法です。
「囲い込み」の具体的手法と売主の不利益
【手法】 売主から売却依頼(媒介契約)を受けた物件情報を、意図的に他の不動産会社に共有しない行為を指します。例えば、他社(B社)から「その物件を買いたいというお客様がいるので、紹介させてほしい」と連絡があっても、「既に商談中です」「契約予定です」などと嘘をついて断り、自社で買主が見つかるのを待つのです。
【売主の不利益】 囲い込みが行われると、売主は「他社(B社)が抱える潜在的な購入希望者」にアプローチする機会を全て失うことになります。その結果、以下のような深刻な不利益を被ります。
- 売却機会の損失と長期化: 本来であればすぐにでも売れたはずのチャンスを逃し、売却が長期化します。
- 不必要な値下げ: 囲い込みを行っている会社は、自社で買主が見つからない場合、「市場の反応が悪いので、値下げしましょう」と売主に提案します。売主は、本当は他社に多くの希望者がいた可能性を知らないまま、値下げに応じざるを得なくなります。
この「高すぎる査定額」(第3-3部)と「囲い込み」(第3-4部)は、連動する可能性があります。「高額査定」で売主から媒介契約(特に専任媒介契約)を獲得し、その後「囲い込み」を行って「両手取引」を狙う。
これは売主の利益(より早く、より高く売る)とは相反する結果をもたらすリスクがあり、宅地建物取引業法にも抵触する可能性のある行為です。
査定時に必要な書類一覧
査定を依頼する際、特に精度の高い「訪問査定」では、事前にいくつかの書類を準備しておくと、物件の情報を正確に把握でき、より正確な査定額が期待できます。また、担当者の「本気度」も伝わりますよ。
以下は、査定依頼時に準備しておくと役立つ主な書類です。すべて揃っていなくても査定は可能ですので、ご安心ください。
| 書類名 | 目的・役割 | 取得場所(参考) |
|---|---|---|
| 登記済権利証 または 登記識別情報 | 物件の所有者本人であることの確認のために必要です。 | 売主が保管(法務局) |
| 登記簿謄本(登記事項証明書) | 正確な権利関係(甲区:所有者情報、乙区:抵当権(住宅ローン残債)の有無など)を確認します。 | 法務局 |
| 固定資産税(・都市計画税)納税通知書 | 固定資産税評価額の確認(査定の参考情報の一つ)。また、年間の税額(ランニングコスト)の把握。 | 市区町村(毎年送付) |
| 公図、地積測量図、境界確認書 | (特に一戸建ての場合)土地の正確な情報確認。土地の形状、正確な面積(地積)、隣接地との境界線の確認。 | 法務局 |
| 建物図面・間取り図 | 建物の詳細確認。正確な間取り、設備仕様、敷地と建物の位置関係などを把握するために用います。 | 不動産会社(購入時に受領) |
| 購入時の売買契約書・重要事項説明書 | 購入時の価格や物件の詳細な情報(仕様など)を確認するための重要な資料となります。 | 不動産会社(購入時に受領) |
| (あれば尚良い書類) | リフォーム履歴が分かる書類(契約書、図面など)、住宅ローンの残債状況が分かる書類(返済予定表など)。 | – |
もちろん、これらの書類が全て揃っていなくても査定は可能です。「探したけれど見つからない」という場合でも、不動産会社が代わりに取得できるものもありますので、まずは手元にあるものだけで構いません。担当者に見せてみてください。
一括査定と電話への対処法


今や査定依頼の主流となった「不動産一括査定サイト」。一度の入力で複数の会社にまとめて査定を依頼できる、非常に便利なサービスです。
しかし、利用した方が驚くのが、申し込み直後から複数の会社から一斉に電話がかかってくる、いわゆる「電話ラッシュ」です。これにはちゃんと「仕組み」があります。
一括査定のビジネスモデル
- なぜ無料?: 私たち売主は無料で利用できますが、不動産会社はサイト運営会社に「広告費(情報料)」を支払っています。相場としては、売主からの査定情報1件あたり1万円程度のコストがかかっていると言われています。
- なぜ電話が?: 不動産会社は「1万円」といったコストを既に支払って情報を得ているため、そのコストを無駄にしないよう、また、他の5社(競合)に契約を取られる前に、一刻も早く売主と接触しようとします。そのため、スピード勝負で必死に電話をかけてくるのです。
電話ラッシュへの賢い対処法
この仕組みを理解した上で、賢く対処する方法は以下の通りです。
- 申し込みフォームの「備考欄」を活用する
査定依頼時のフォームに「備考欄」などがあれば、「連絡はまずメールのみを希望します。」「電話は平日の19時~20時の間のみ希望します」と、こちらの希望を明確に明記しましょう。この一文があるにもかかわらず、構わず日中に電話をかけてくる会社は「顧客への配慮に欠ける」と判断し、その後の断る材料にすることができます。 - はっきりと断る(期待を持たせない)
電話がかかってきた際に、すでに検討対象外と決めた会社であれば、「(御社ではなく)他の不動産会社と契約することに決めましたので、今後は連絡不要です」と、期待を持たせずにはっきりと断ることが重要です。曖昧な態度が、しつこい営業電話を助長させてしまいます。 - あまりにしつこい場合は「法律違反」も示唆
万が一、深夜や早朝の勧誘、勤務先への執拗な電話など、売主を「困惑させる行為」があった場合、それは「宅地建物取引業法」で禁止されている違法な勧誘行為にあたる可能性があります。そのような場合は、利用した一括査定サイトの運営元に連絡するのも一つの方法です。
「複数の会社の査定額を、電話なしで比較したい…」 一括査定サイトの中には、しつこい電話営業を避けられるよう配慮されたサービスもあります。複数の選択肢を比較検討したい方におすすめです。
不動産査定仕組みについてよくあるご質問FAQ



不動産売却は、人生で何度も経験することではありません。だからこそ、不安や疑問は「契約する前」にすべて解消しておくことが重要です。小さなことでも遠慮せず、担当者に質問しましょう。その対応こそが、会社を見極める一番の材料になりますからね。
不動産査定仕組みの悩みは相談から


ここまで不動産査定の仕組みについて、基本的な流れから業界の裏側まで、かなり詳しく解説してきましたが、いかがでしたでしょうか。
本レポートで解明してきた通り、「不動産査定の仕組み」とは、単一の絶対的な計算式ではありません。それは、
- データ(取引事例、原価法、公的データ)
- 実地調査(訪問査定による個別要因の確認)
- 市場心理(金利動向、需給バランス)
- 不動産会社の営業戦略(高額査定、両手取引の意図)
これら全てが複雑に絡み合って機能する「エコシステム」そのものです。
最も重要な核心は、不動産会社が提示する「査定額」は「確定した未来の価格」ではなく、あくまで「専門家による予測」であり、同時に「媒介契約を獲得するための営業ツール」としての一面も強く持つ、ということです。
AI査定の手軽さ、一括査定の利便性、それぞれのメリットとデメリット(トレードオフ)を理解した上で、私たち売主が取るべき行動は、「価格の高さ」だけに飛びつくのではなく、その「価格に至った根拠」を厳しく比較検討することです。
そして、自らの利益を最大化するために、最も信頼できるパートナー(不動産会社・担当者)を見極めることです。
「終活だよドットコム」では、こうした不動産査定の仕組みに関するお悩みや、終活・相続に伴う不動産売却のご相談を承っています。特に相続が絡む不動産売却は、通常の売却よりも手続きが複雑になりがちです。
空き家や共有名義、再建築不可物件、遺品整理が必要なケースなど、状況が少し複雑な方は、まず全体像をつかんでおくと不安が和らぎます。そうした「訳あり不動産」まわりの基本から解決策までをまとめた入口として、訳あり不動産・相続・遺品整理の総合ガイドもあわせて読んでみてください。
どの会社に依頼すればいいか分からない、提示された査定額が妥当か判断できない、そんな時は一人で抱え込まないでください。
今日からできるアクションプラン
まずは、売却の第一歩として、ご自身の資産の「現状把握」から始めてみましょう。
- 1. 自宅の「良いところ」と「気になるところ」を書き出す
(例:良い点「5年前にキッチンをリフォームした」、気になる点「北側の部屋の壁紙にカビがある」など、具体的に) - 2. 国土交通省の「不動産情報ライブラリ」で近所の成約価格を調べる
(国が提供する信頼できるデータです。まずは大まかな相場観を掴んでみましょう) - 3. 査定依頼時の「窓口」と「希望」を決めておく
(例:「連絡は妻の〇〇に」「電話は平日の19時以降」「まずはメールで」など、家族内でルールを決めておくとスムーズです)
最初の一歩を踏み出すのは勇気がいりますが、知ることから始めましょう!その一歩が、大切な資産を守ることに繋がりますよ。
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