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相続した家を売却することになり、「相続した家売却税金っていくらになるの?」と不安になっていませんか。多くの方が、税金がいつ払うものなのか、計算はどうするのか、そして「3000万円控除」のような特例が使えるのかどうかで悩んでいらっしゃいます。
この記事では、相続した家売却税金に関するあらゆる疑問に答えます。特に多くの方がつまずく取得費不明の場合の対処法から、具体的な税金シミュレーション、節税のための特例、そして忘れてはならない確定申告の手続きまで、専門家の視点から分かりやすく解説していきます。
ご自身のケースでいくらになるのか、損をしない最適な方法はどれか、まずは無料相談で専門家に確認してみませんか?
相続税の計算や特例の適用は非常に複雑です。
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- 相続した家の売却で発生する税金の種類とタイミング
- 税額が決まる「譲渡所得」の詳しい計算方法
- 納税額が0円になる可能性もある「3000万円控除」の条件
- 税金対策で最も有利な特例を選ぶための比較ポイント
コンサルタント @KAZU相続不動産の売却で一番大切なのは、「知っているか、知らないか」です。特に税金の特例は、ご自身で「使います」と申告しなければ適用されません。期限を1日過ぎただけで数百万円の税金を余計に払うケースも見てきました。まずは全体像を把握し、ご自身のケースで使える制度は何かを知ることから始めましょう。
相続した家売却税金の基礎知識と計算


相続した家の売却に関する税金、と一口に言っても、実はいくつかの種類があります。最も重要な「譲渡所得税」を中心に、いつ、どれくらいの税金がかかる可能性があるのか、その基本的な仕組みと計算方法をしっかり押さえましょう。
「そもそも相続せずに放棄したほうがいいのでは…」と迷っている方へ


売却のプロセスに沿って、どのタイミングでどの税金が発生するのかを知るだけで、漠然とした不安はかなり解消されますよ。
売却の流れ全体を先に把握しておきたい方へ
相続不動産 売却 手続きの完全ガイド では、「相続発生」から「売却完了」までの具体的な流れや必要書類をステップ順にまとめています。
相続不動産売却、税金はいつ払う?
相続した家を売却する際、税金はいくつかのタイミングで発生します。時系列で見ていきましょう。
印紙税(いんしぜい)
タイミング:売買契約の締結時
これは、売主と買主の間で「不動産売買契約書」を取り交わす際に、その契約書に貼付する収入印紙の代金です。売却金額によって納める税額が決まっています。
例えば、契約書に記載された売却金額が5,000万円超 1億円以下の場合、本則の税額は6万円ですが、2024年3月31日までは軽減措置が適用され、3万円となっています。これは売主・買主が1通ずつ契約書を保管する場合、それぞれが負担するのが一般的です。
| 契約金額 | 本則税額 | 軽減税率(〜2024年3月31日) |
|---|---|---|
| 1,000万円超 5,000万円以下 | 2万円 | 1万円 |
| 5,000万円超 1億円以下 | 6万円 | 3万円 |
| 1億円超 5億円以下 | 10万円 | 6万円 |
登録免許税(とうろくめんきょぜい)
タイミング:登記申請時(名義変更時)
登録免許税は、不動産の名義変更(登記)の際に法務局へ納める税金です。相続売却のケースでは、実は2回発生します。
- 相続登記(被相続人 → 相続人へ) 売却の前提として、まず家の名義を亡くなった親御さんなど(被相続人)から、ご自身(相続人)へ変更する必要があります。この「相続登記(不動産の名義変更)」の際、不動産の固定資産税評価額の0.4%が登録免許税としてかかります。これは売主である相続人が負担します。(2024年4月から相続登記は義務化されており、売却する・しないにかかわらず、相続を知った時から3年以内の登記申請が必要となっています。)
- 所有権移転登記(相続人 → 買主へ) 売却が成立し、買主さんへ家の所有権を移す際にも登録免許税がかかります。こちらは「売買による所有権移転」となり、税率も異なります(通常、土地2.0%、建物2.0% ※軽減措置あり)。この費用は、商慣習上、買主さんが負担するのが一般的です。
譲渡所得税(所得税・住民税)
タイミング:売却した年の翌年(確定申告時)
これが税金計算の「本丸」です。家を売却して「利益(もうけ)」が出た場合にのみ、その利益(譲渡所得)に対して課税されます。売却価格そのものではありません。もし利益が出ていなければ(購入時より安く売れた場合)、この税金は1円もかかりません。
支払うのは、売却してすぐ(決済時)ではなく、売却した年の翌年2月16日〜3月15日にご自身で「確定申告」を行って納税します。納税資金を準備する時間的な猶予があることを覚えておきましょう。
消費税
タイミング:売却代金の受領時(該当する場合)
「家を売ったら消費税もかかるの?」と心配されるかもしれませんが、個人が相続した「自宅(居住用財産)」を売却する場合、その売却代金(土地・建物)に消費税はかかりません。
なぜなら、土地の売買はもともと非課税であり、建物の売買も「事業として」行なっていない限り、課税対象にならないためです。ほとんどの個人の方は「事業者」ではないため、消費税はかからない、と覚えておいて大丈夫です。
ただし、相続した家がアパートや店舗、駐車場など「事業用」の不動産であった場合は、売却代金のうち「建物部分」について消費税が課税されるケースがありますので注意が必要です。
譲渡所得税の計算方法を解説


「税金がいくらかかるか」の答えは、この「譲渡所得税」の計算にかかっています。大前提として、売却価格の全額に税金がかかるわけではありません。あくまで「利益」に対してのみ課税されます。
計算式は以下の通りです。これがすべての基本となります。
【課税譲渡所得の計算式】
課税譲渡所得 = 売却収入 – (取得費 + 譲渡費用) – 特別控除
この「課税譲渡所得」という利益の部分に、後述する税率をかけて納税額を計算します。まずは、この計算式の各項目を詳しく見ていきましょう。
売却収入(収入金額)
これはシンプルに、買主さんに家と土地が売れた実際の金額です。売買契約書に記載された金額ですね。
取得費
これが非常に重要なポイントです。取得費とは、その不動産を「購入したときにかかった費用」のこと。相続の場合、ご自身が0円で相続したから取得費0円、とはなりません。
税務上は、親御さんなど(被相続人)がその不動産を過去に購入した時の金額や、当時の仲介手数料などを、そのまま「取得費」として引き継ぎます。例えば、親御さんが30年前に2,000万円で購入した家なら、あなたの取得費も2,000万円として計算できるわけです。
建物の「減価償却」に注意
ただし、一つ注意点があります。取得費のうち「建物」の部分については、親御さんが購入してから売却するまでの間、年数の経過とともに価値が減少したとみなす「減価償却(げんかしょうきゃく)」という計算が必要です。
親御さんが購入した当時の建物価格から、この減価償却費相当額を差し引いた金額が、建物の取得費となります。(土地は価値が減らないので減価償却はしません)。この計算は少し複雑なので、詳しくは専門家に相談することをおすすめします。
譲渡費用
これは、今回の売却のために「直接かかった費用」です。いわば経費ですね。これを漏れなく計上することが、節税の第一歩となります。しっかり領収書を保管しておきましょう。
【譲渡費用に含められるもの(例)】
- 不動産会社へ支払った仲介手数料
- 契約書に貼付した印紙税
- 売却のための測量費
- 更地で売るために要した建物の解体費用、解体業者への支払い
- 借家人がいた場合に(身内以外へ)支払った立退料
- 売却の前提として行ったハウスクリーニング代(※認められる可能性あり)
【譲渡費用に含められないもの(例)】
- 相続登記にかかった費用(登録免許税、司法書士報酬)
- ご自身が住むために行ったリフォーム費用
- 通常の維持管理費、固定資産税
- 抵当権の抹消費用
税率は「所有期間」で決まる
さて、上記の計算式で「利益(譲渡所得)」が出たら、その利益に「税率」をかけて納税額を計算します。この税率が、不動産の「所有期間」によって約2倍も変わるんです。
「えっ、自分が相続してからまだ1年しか経ってないから、税率が高い『短期譲渡』(約40%)になっちゃうの?」
こう心配される方が非常に多いのですが、ご安心ください。ここでも「引き継ぎ」のルールが適用されます。
最重要ルール:所有期間は、被相続人(親など)がその不動産を「取得した日」から通算して計算します。
親御さんが30年前に購入した実家なら、ご自身が相続してすぐに売却したとしても、所有期間は「30年超」となり、税率が低い「長期譲渡所得」(約20%)が適用されます。相続で取得した実家の売却は、ほとんどのケースで「長期譲渡」に該当するはずです。
| 区分 | 所有期間(売却した年の1月1日時点) | 所得税 | 復興特別所得税 | 住民税 | 合計税率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 長期譲渡所得 | 5年超 | 15% | 0.315% | 5% | 20.315% |
| 短期譲渡所得 | 5年以下 | 30% | 0.63% | 9% | 39.63% |
「5年」のカウント方法に注意
ちなみに、この「所有期間」は、売却した日ではなく、「売却した年の1月1日時点」で判定されるのがポイントです。例えば、ご自身で2020年5月に購入した家を2025年8月に売却した場合、所有期間は5年3ヶ月ですが、2025年1月1日時点ではまだ4年8ヶ月しか経っていないため、「短期譲渡」の扱いになってしまいます。
この判定は非常に間違いやすいので注意が必要ですが、前述の通り、相続の場合は親御さんの所有期間を引き継ぐため、この心配はほとんどないでしょう。
取得費不明だと税金は高くなる?


ここまで読んで、「取得費(親の購入価格)が税額を決める鍵」だということがお分かりいただけたかと思います。しかし、相続不動産の売却で最大の問題が、「親がいくらで買ったかなんて分からない…」という「取得費不明」のケースです。
何十年も前の売買契約書や領収書が残っていないことは、本当によくあります。登記済権利証(いわゆる「権利証」)が見つかっても、あれは所有権を証明する書類で、購入金額は書いていないことが多いんです。
5%ルール(概算取得費)の恐怖
概算取得費5%ルールの恐怖
取得費を証明する書類が一切見つからない場合、税務上のルールとして、「売却した金額の5%」を取得費とみなして計算する規定があります。これを「概算取得費」といいます。
これは「5%認めてもらえる」という救済措置ではなく、実質的なペナルティです。例えば5,000万円で売却した場合、取得費はたったの250万円(5%)とみなされます。
本来の購入価格が2,000万円だったとしても、それを証明できなければ、利益が不当に大きく計算され、納税額が何百万円、何千万円も増えてしまう恐れがあるのです。
5%ルールを回避する合理的な調査方法
「契約書がないから」と諦めてはいけません。5%ルールを安易に受け入れる前に、税務署に対して「合理的」と認められる根拠をもって取得費を算出できる可能性があります。
登記簿謄本(全部事項証明書)の確認
法務局で登記簿謄本を取得します。謄本の「抵当権」の欄に、親御さんが購入した当時の住宅ローンの情報(金融機関、借入額)が記載されていれば、そこから当時の購入価格を推測できる場合があります。
当時の販売資料の調査
もし親御さんが購入した不動産業者が今も存在すれば、当時の販売パンフレットや価格表が残っていないか問い合わせてみましょう。また、国会図書館などで、購入当時の「市街地価格指数」や「路線価」といった公的統計を調べ、現在の価格から合理的に推計する方法もあります。
不動産鑑定士への依頼
費用はかかりますが、不動産鑑定士に依頼し、購入当時の不動産市況に基づいて当時の取得費を鑑定評価してもらう方法です。これが税務署に認められれば、5%ルールよりはるかに有利になる可能性が高いです。
相続した家の売却、税金シミュレーション
では、実際にどれくらいの税金がかかるのか、簡単なシミュレーションをしてみましょう。取得費が分かるか分からないかで、こんなに違ってきます。
【シミュレーション】
- 売却価格(売却収入):4,000万円
- 譲渡費用(仲介手数料など):150万円
- 所有期間:長期(親が30年前に購入)
ケース1:親の購入価格(取得費)が2,000万円と判明している場合
計算:
譲渡所得 = 4,000万円(売却収入) – (2,000万円(取得費) + 150万円(譲渡費用))
= 1,850万円
納税額:
1,850万円 × 20.315% ≒ 約375万円
ケース2:取得費不明で「5%ルール」が適用された場合
計算:
取得費 = 4,000万円(売却収入) × 5% = 200万円
譲渡所得 = 4,000万円(売却収入) – (200万円(取得費) + 150万円(譲渡費用))
= 3,650万円
納税額:
3,650万円 × 20.315% ≒ 約741万円
(結論)
取得費が分かるかどうかだけで、納税額に約366万円もの差が出ることになります。当時の書類を探すことが、いかに重要かお分かりいただけるかと思います。
ご実家の売却価格、まずは把握しませんか?
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取得費不明のケースは本当に多いです。私がお手伝いしたケースでは、親御さんが購入した当時の不動産会社にダメ元で連絡したら、奇跡的に当時の販売パンフレットが残っていて、それが取得費の根拠として認められたこともあります。諦めずにあらゆる可能性を探ることが、手元に残るお金を最大化するコツですよ。
相続した家売却税金の特例と申告


さて、ここからが税金対策の「本番」です。たとえ取得費が不明で不利な計算になったとしても、相続不動産の売却には強力な節税の「特例(ボーナスルール)」が用意されています。
特に重要なのが、利益そのものを大幅に減らせる「3,000万円の特別控除」と、相続税を納めた人だけが使える「取得費加算の特例」です。これを知っているか、知らないかで、納税額が0円になることさえあります。どちらがご自身のケースで使えるのか、しっかり確認していきましょう。
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節税の鍵「3000万円控除」とは
「3000万円控除」とよく聞くと思いますが、実は相続不動産の場合、大きく分けて2種類の制度があります。どちらも「利益(譲渡所得)から最大3,000万円を差し引ける」という非常に強力な特例です。
もし利益が2,500万円だった場合、この控除を使えば利益は0円となり、納税額も0円になります。この2つは全く別の制度であり、両方同時に使うことはできません。
1. 空き家の3,000万円控除(空き家特例)
正式名称:被相続人の居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の特別控除の特例
これは、相続した実家が「空き家」になっていた場合に使える特例です。ただし、適用要件が非常に複雑なことで知られています(詳しくは次項で解説します)。
2. 居住用の3,000万円控除(居住用財産特例)
正式名称:居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例
こちらは、相続人がその実家に「一度住んでから」売った場合に使える特例です。空き家のまま売るのではなく、ご自身がマイホームとして利用した後に売却するケースですね。
【最重要】特例利用には「確定申告」が必須!
これらの特例は、自動的に適用されるものではありません。
特例を使った結果、計算上の納税額が0円になったとしても、必ず売却した翌年に「確定申告」が必要です。
「0円だから申告しなくていいや」と自己判断してしまうと、後日、税務署から「特例は適用されていません。本来の税金とペナルティを納めてください」という恐ろしい通知が来ることになります。
空き家特例の複雑な要件


相続不動産の売却で最も多くの人が利用を検討するのが「空き家の3,000万円控除(空き家特例)」ですが、これは「耐震性の低い空き家の増加を抑制し、流通を促進する」という政策目的があるため(出典:国土交通省「空き家の発生を抑制するための特例措置」)、要件が非常に厳格に定められています。
主な要件を詳しく見ていきましょう。
要件1:建物の要件(旧耐震)
昭和56年5月31日以前に建築された家屋(いわゆる旧耐震基準)であることが必要です。新耐震基準(1981年6月1日以降)で建てられた家は、この特例の対象外となります。
要件2:居住の要件(一人暮らし)
相続開始の直前まで、被相続人(故人)が「一人暮らし」であったことが原則です。もし被相続人が亡くなる直前に老人ホームに入所していた場合でも、以下の要件をすべて満たせば適用できる可能性があります。
- 被相続人が「要介護認定」または「要支援認定」を受けていたこと。
- 特定の施設(老人福祉法などに規定される施設)に入所していたこと。
- (重要)子の家や親族の家、一般の賃貸住宅に転居していた場合は対象外です。
- 入所後、その家を事業用や貸付用、本人以外の居住用にしていないこと。
要件3:売却時の要件(解体 or 耐震)
これが最大のハードルです。以下のどちらかを満たす必要があります。
- 売却時までに耐震リフォームをして、新耐震基準を満たした状態で売却する。
- 家屋を「解体・撤去」して更地で売却する。
古い家をそのままの状態で売却した場合は、この特例は使えません。(こうした旧耐震などの訳あり不動産の売却には、特有のノウハウが必要です。)解体費用やリフォーム費用がかかる点を考慮する必要があります。
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要件4:期限の要件
相続開始日から「3年を経過する日が属する年の12月31日まで」に売却すること。この「3年後の年末まで」という期限が少しややこしいです。
- 例1(年の初めに相続):2024年1月15日に相続発生 → 3年後は2027年1月15日 → 期限:2027年12月31日
- 例2(年の終わりに相続):2024年11月1日に相続発生 → 3年後は2027年11月1日 → 期限:2027年12月31日
年のどの時点で相続が発生しても、期限は「3年後の年末」となります。
要件5:手続きの要件
確定申告の際に、家の所在地がある市区町村から交付を受けた「被相続人居住用家屋等確認書」という書類を添付することが必須です。この書類の取得には時間がかかるため、売却活動と並行して早めに準備を始める必要があります。
要件6:金額の要件
売却代金が「1億円以下」であることも要件の一つです。
空き家そのものの売却手順を具体的に知りたい方へ
空き家売却の全手順を専門家が解説!法改正と税金対策 では、「誰に相談して・どの順番で・何を準備するか」を空き家特有のポイントとあわせて解説しています。
共同相続でも特例は使える?
「実家を兄弟3人で相続した」といった共同相続のケースも多いですね。この場合の売却と税金について解説します。
換価分割(かんかぶんかつ)とは
不動産は物理的に分割するのが難しいため、最も公平な分割方法として「換価分割(かんかぶんかつ)」がよく用いられます。これは、相続した不動産をいったん売却して現金化し、その現金を相続人間で(法定相続分や遺産分割協議で決めた割合で)分配する方法です。
登記の方法と注意点
換価分割を行う前提として、相続登記(名義変更)が必要です。登記には主に2つの方法があります。
- 共同登記(共有名義): 相続人全員の共有名義(例:長男 1/2、次男 1/2)で登記してから売却する方法。
- 単独登記(代表者名義): 相続人の代表者1名(例:長男)の名義で登記し、その人が売主となって売却し、後で現金を分配する方法。
【贈与税リスク】単独登記の場合の注意点
手続きが簡単なため単独登記を選ぶケースもありますが、注意が必要です。必ず「遺産分割協議書」に、「代表者(長男)は売却手続きを円滑に行うため単独で登記するが、売却代金は兄弟で 1/2 ずつ分配する」という旨を明記してください。
これを怠ると、売却後に長男から次男へ代金を渡した行為が「長男から次男への贈与」とみなされ、高額な贈与税がかかる最悪の事態を招くリスクがあります。
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特例控除は「各人」に適用
共同相続において、空き家特例(特例2)を使う場合、非常に大きなメリットがあります。
朗報:「空き家特例」の3,000万円控除は、相続人「それぞれ」が最大3,000万円まで利用可能です。
例えば、兄弟3人(全員が要件を満たす)で相続した家を9,000万円(利益9,000万円)で売却した場合。各人の利益は3,000万円です。この時、兄弟それぞれが3,000万円控除を使えるため、
- 長男:利益3,000万円 – 3,000万円控除 = 0円
- 次男:利益3,000万円 – 3,000万円控除 = 0円
- 三男:利益3,000万円 – 3,000万円控除 = 0円
となり、全員の納税額が0円になります。家一軒あたり3,000万円ではなく、相続人一人ひとり(の持分)に対して最大3,000万円の枠が適用されるのが、共同相続における最大の税務メリットの一つです。
相続した家売却税金についてよくあるご質問FAQ


確定申告はいつまでに必要か
相続した家を売却した手続きの最終関門が「確定申告」です。忘れると大変なことになりますよ。
申告・納税の時期:売却した年の「翌年」の2月16日から3月15日まで
この期間内に、管轄の税務署で確定申告を行います。前述の通り、売却して利益が出た場合はもちろん、特例(3,000万円控除など)を使って税金が0円になった場合でも、申告は必須です。「申告する」ことによって、初めて特例の適用が認められるからです。
もし、利益が出ているにもかかわらず申告しなかった場合(無申告)や、申告を忘れた場合、税務調査によって本来の税額が追徴されるだけでなく、ペナルティとして以下の附帯税が課されます。
- 無申告加算税:期限までに申告しなかったことに対する罰金。
- 延滞税:納付が遅れた日数に応じて課される、利息に相当する税金。
確定申告の主な必要書類
申告書を作成する際、多くの書類が必要になります。売却が決まった時点から、領収書などをしっかりまとめておきましょう。
【主な必要書類の例】
- (全員共通)
- 譲渡所得の内訳書(確定申告書付表兼計算明細書)
- 売却時の売買契約書の写し(売却価格がわかるもの)
- 購入時の売買契約書の写し(取得費がわかるもの)
- 譲渡費用(仲介手数料など)の領収書の写し
- (特例を適用する場合)
- 【取得費加算の特例】:相続税申告書の写し など
- 【空き家特例】:被相続人居住用家屋等確認書、耐震基準適合証明書または解体証明書 など
- 【居住用財産の特例】:戸籍の附票の写しなど(売却した家に居住していたことを証明する書類)
必要書類は適用する特例や状況によって異なりますので、必ず国税庁のホームページや税務署で確認してください。
税務申告に関するご注意
この記事でご紹介した税金の計算や特例の適用条件は、2025年11月現在の情報に基づく一般的な概要です。税制は非常に複雑であり、毎年のように改正が行われる可能性もあります。
また、個々の事情(相続税の納税額、被相続人の居住実態、登記の内容など)によって、適用できる特例や納税額が大きく変わります。最終的な税務判断や申告手続きは、ご自身で税務署にご確認いただくか、必ず税理士などの専門家にご相談ください。



相続不動産の売却は、税務署も「大きな利益が出ていないか」を厳しくチェックするポイントです。特に特例の適用ミスは、後から数百万円の追徴課税につながることも。申告書の作成は非常に複雑ですので、「ちょっと不安だな」と感じたら、無理せず税理士の先生にお願いするのが一番の安全策ですよ。その相談費用も、安心を買うための必要経費だと思います。
相続した家売却税金は終活だよドットコムで解決


ここまで、相続した家を売却する際の税金について、計算方法から特例、申告手続きまで網羅的に解説してきました。
相続不動産の売却は、多くの方にとって初めての経験であり、「取得費が分からない」「どの特例を使えばいいか分からない」といった不安が尽きないものです。しかし、基本的な仕組みと、ご自身が使える可能性のある「特例」を理解しておくだけで、余計な税金を払うリスクを大きく減らすことができます。
特に「取得費加算の特例(相続開始から3年10ヶ月以内)」と「空き家特例(相続開始から3年後の年末まで)」は、適用できる期限が決まっています。「まだ時間がある」と油断せず、相続が発生したら、まずは売却のスケジュールと税金対策について、早めに専門家へ相談することをおすすめします。
「終活だよドットコム」では、これからも相続や終活に関する皆さまのお悩みを解決できるような情報を発信していきます。分からないことがあれば、ぜひ他の記事も参考にしてみてくださいね。
相続税の申告、プロに任せて不安を解消しませんか?
相続税の申告は、専門家でも判断が分かれるほど複雑です。ご自身の状況で最適な節税対策を見つけ、手続きの漏れを防ぐためにも、まずは相続税に強いプロに無料相談してみることを強くおすすめします。
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訳あり不動産や相続・遺品整理をまとめて整理したい方へ
訳あり不動産・相続・遺品整理の総合ガイド|孤独死・共有名義・再建築不可まで状況別にやさしく解決 では、このページを含む関連テーマを「状況別」に一覧でまとめています。
【今日からできるアクションプラン】
- 当時の書類を探す(取得費の確認) まずは実家(またはご自宅)で、親御さんがその家を購入した時の「売買契約書」や「領収書」が残っていないか徹底的に探してみましょう。それが数百万円の節税につながる第一歩です。
- 登記簿謄本(全部事項証明書)を取得する 法務局(オンラインでも可)で、相続した家の登記簿謄本を取得し、「いつ」「誰が」取得したのか、抵当権(ローン)の情報はないかを確認しましょう。相続登記がまだなら、司法書士に相談を。
- 使える特例の「期限」をカレンダーに書き込む 相続が開始した日(故人が亡くなった日)を基準に、「取得費加算の特例(3年10ヶ月以内)」と「空き家特例(3年後の年末)」の正確な期限日を計算し、カレンダーや手帳に書き込んでください。
不安な時こそ、最初の一歩が大切です。まずは情報収集と現状把握から始めてみましょう!
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