相続不動産 売却 手続きの完全ガイド

相続不動産 売却 手続きの完全ガイド
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こんにちは!終活だよどっとコムの運営者、終活・相続・不動産の専門家のカズです。

いざご実家などを相続したものの、相続不動産 売却 手続きっていったい何から始めたらいいのか、途方に暮れてしまいますよね。相続税の申告期限は迫ってくるし、売却の流れや税金、費用がどれくらいかかるのか、専門用語だらけで分からないことばかりだと思います。

特に、共有名義になっていたり、古い家で3000万円控除が使えるのかどうか、不安は尽きないはずです。

この記事では、そんな複雑で難解な「相続不動産売却手続き」の全体像を、法務・実務・税務の3つの側面から徹底的に解剖していきます。私の専門家としての経験も踏まえ、手続きの順番、知らないと大損する税金の特例、そして専門家の選び方まで、初心者の方にも分かりやすく解説します。

この記事を読めば、あなたの疑問や不安がスッキリ解決し、損しない売却に向けた第一歩を踏み出せるはずです。

相続した不動産の売却、まずは「いくらで売れるか」を知ることから始まります。ご実家や土地の価値を正確に把握していますか?信頼と実績No.1の専門家に、まずは無料査定を依頼してみませんか?

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この記事のポイント
  • 相続不動産売却の全体像と法的な期限
  • 名義変更(相続登記)と遺産分割の進め方
  • 売却にかかる費用と税金(譲渡所得税)の計算
  • 知らないと損する節税特例(3,000万円控除など)
目次

相続不動産 売却 手続きの全体像と流れ

相続不動産 売却 手続きの全体像と流れ

相続した不動産の売却は、単なる不動産売買とは全く異なります。「法務(権利確定)」「実務(売却活動)」「税務(税金計算)」という3つの分野が複雑に絡み合う長期プロジェクトです。まずは、この全体像と法的な流れを把握することから始めましょう。

コンサルタント @KAZU

相続不動産売却で最も重要なのは「期限」を意識することです。特に「相続税(10ヶ月)」と「節税特例(約3年)」という2つのタイムリTットがあります。法務手続き(遺産分割)が長引いて期限を逃し、数百万円の節税機会を失うケースは本当によくあります。まずは全体像と期限の把握が、金銭的な損失を避ける第一歩です。

売却までの流れと3つの重要期限

相続不動産の売却は、ゴール(現金化)から逆算して、大きく3つのフェーズ(段階)で進んでいきます。それぞれで専門家も登場人物も変わってくるので、全体像をしっかり掴んでくださいね。

フェーズ1:法務(権利確定フェーズ)

これは売却の「大前提」を整える、最も重要で、時に最も時間のかかる段階です。相続が発生した直後からスタートします。

  1. 遺言書の確認: 故人が遺言書を残していないか確認します。もしあれば、原則その内容が最優先されます。
  2. 相続人の確定: 故人の「出生から死亡まで」の連続した戸籍謄本(除籍謄本、改製原戸籍謄本も含む)をすべて集め、法的な相続人を一人残らず確定させます。これが非常に大変な作業なんです。
  3. 相続財産の調査: 不動産や預貯金といったプラスの財産だけでなく、住宅ローンや借金などのマイナスの財産(負債)もすべて調査します。負債が多ければ「相続放棄」も検討が必要です。

もし借金やローンなどマイナスの財産が多く、「そもそも相続すべきか迷っている…」という場合は、相続放棄した家はどうなる?3つの結末と義務もあわせてご覧ください。相続放棄後の家の行方や注意点を、具体的なパターン別に解説しています。

  1. 遺産分割協議: 相続人全員で「誰が」「何を」「どう分けるか」を話し合います。
  2. 相続登記(名義変更): 話し合い(遺産分割協議)の結果に基づき、不動産の名義を故人から相続人へ変更します。

このフェーズ1が完了して初めて、法的に不動産を売れる状態になります。

フェーズ2:実務(現金化フェーズ)

相続登記が完了したら、いよいよ不動産を「現金」に変える実務活動の開始です。

  1. 不動産会社の査定: 複数の会社に査定を依頼し、売却価格の相場と、信頼できるパートナー(不動産会社)を見つけます。
  2. 媒介契約の締結: 売却を依頼する会社と契約(一般媒介、専任媒介など)を結びます。
  3. 売却活動: 広告掲載や内覧対応など。相続不動産の場合、遺品整理や解体などもこのタイミングで検討します。
  4. 売買契約: 買主が見つかったら、価格や条件を交渉し、売買契約を締結します。
  5. 決済・引き渡し: 買主から残代金を受け取り、司法書士が所有権移転登記を行い、鍵を引き渡して完了です。

フェーズ3:税務(精算フェーズ)

売却が完了して安心、ではありません。最後にお金に関する「精算」が待っています。

  1. 相続税の申告・納税: これはフェーズ1の段階から並行して進めますが、相続発生から「10ヶ月以内」という短い期限があります。
  2. 譲渡所得税の確定申告・納税: 不動産売却で利益(譲渡所得)が出た場合、売却した翌年に確定申告が必要です。税金がゼロになる特例を使う場合でも、申告そのものは必須です。

相続税や譲渡所得税の申告は非常に複雑です。申告漏れや特例の適用ミスで損をしないためにも、早めに専門家に相談しましょう。→相談しやすい相続専門の税理士を探すなら【税理士ドットコム】

このプロセスで、特に注意すべき「3つの重要期限」があります。これらは独立しているのではなく、相互に連鎖していることを絶対に忘れないでください。

経過期間期限の名称概要と重要性
7日以内死亡届の提出役所への届出。すべての始まりです。
3ヶ月以内相続放棄・限定承認の申述負債が多い場合などの重要な判断期限。これを過ぎると原則放棄できません。
10ヶ月以内相続税の申告・納税基礎控除を超える場合の最重要期限。納税資金を売却代金で賄うのは困難な場合が多いです。
3年以内相続登記の義務化期限2024年4月施行。未登記は10万円以下の過料の対象。そもそも売却の大前提です。
3年を経過する年の12月31日空き家の3,000万円控除期限最も影響額が大きい節税特例の期限。登記の期限とほぼ同じ点に注意が必要です。
3年10ヶ月以内相続税の取得費加算の特例期限相続税を支払った場合の節税特例の期限です。

期限連鎖の罠

「相続登記の期限は3年あるから大丈夫」と油断してはいけません。本当に恐れなければならないのは、最も強力な節税策である「空き家の3,000万円控除」の期限も、ほぼ同じ「3年」であるという点です。

遺産分割協議が長引いて(例えば、共有名義で揉めて)3年が経過すると、10万円の過料(罰則)を支払うだけでなく、その裏で「数百万円単位の節税機会(3,000万円控除)」を永久に失うことになります。法務手続き(フェーズ1)の遅れが、税務上(フェーズ3)の甚大な損失に直結するのです。

遺産分割協議で揉めない進め方

遺産分割協議で揉めない進め方

相続人が複数いる場合、故人の財産は一時的に「相続人全員の共有」状態となります。これを具体的に「誰が」「何を」もらうか決める話し合いが「遺産分割協議」です。不動産のように分けにくい財産がある場合、この協議が売却成功の最大の山場となります。

分割方法には主に4つの方法があり、売却を前提とするか否かで最適解が全く異なります。

方法1:現物分割(げんぶつぶんかつ)

「不動産(実家)は長男Aさん、預金は次男Bさん、有価証券は長女Cさん」というように、財産を現物のまま分ける方法です。手続きがシンプルですが、各財産の価値が異なるため、公平に分けるのが難しく、価値評価で揉めやすいデメリットがあります。

方法2:代償分割(だいしょうぶんかつ)

相続人の一人(例:長男Aさん)が不動産(5,000万円相当)を取得する代わりに、他の相続人(例:次男Bさん)に対して、その人の法定相続分に見合う現金(代償金)を支払う方法です。

不動産を売却せずに残せるメリットがありますが、不動産を取得する相続人に、代償金を支払うだけの十分な現金(自己資金)がなければ成立しません。

方法3:換価分割(かんかぶんかつ)

売却を前提とした場合の最適解です。不動産を第三者に売却して現金化し、その売却代金(諸費用や税金を引いた後)を、相続人間で合意した割合(例:法定相続分どおり、または均等割)で分配する方法です。

物理的に分けられない不動産を、1円単位で公平に分割可能な「現金」に変えるため、相続人間のトラブルを最も防ぎやすい合理的な方法と言えます。

方法4:共有分割(きょうゆうぶんかつ)

不動産を、法定相続分などの割合で「共有名義」にする方法です。遺産分割協議の段階では「とりあえず共有で」と合意が容易なため、一見すると円満解決に見えます。

しかし、これは単なる「問題の先送り」に過ぎません。次のセクションで詳しく解説しますが、売却を前提とする場合、この共有分割は絶対に避けるべき選択肢です。

換価分割のポイント

換価分割を選択した場合、相続人全員で「遺産分割協議書」を作成します。この書類には、全員が実印を捺印し、印鑑証明書を添付します。この協議書に、

  • 「不動産を売却(換価)し、その代金を分配する」という合意
  • 「売却活動(不動産会社との契約など)を行う代表相続人」(通常、名義人となる人)
  • 「売却代金の具体的な分配割合」

これらを明確に記載することが、後の売却手続き(フェーズ2)や税務申告(フェーズ3)をスムーズに進める鍵となります。

相続登記の義務化と必要書類

相続登記とは、不動産の名義を被相続人(故人)から相続人(または遺産分割協議で合意した代表者)へ変更する法務局での手続きです。これが完了しない限り、相続人は第三者(買主)に不動産を売却できません。

そして、この手続きは従来「任意」でしたが、所有者不明土地問題の解決のため、法改正が行われました。

(最重要)2024年4月1日施行「相続登記の義務化」

2024年4月1日から、相続登記(名義変更)が義務化されました。(出典:法務省「相続登記が義務化されました(令和6年4月1日制度開始)」

  • 期限: 相続により所有権を取得したことを知った日から3年以内の登記申請が義務。
  • 罰則: 正当な理由なく申請を怠った場合、10万円以下の過料の対象。
  • 遡及適用: この法律の施行日(2024年4月1日)より前に相続した(登記が未了の)不動産も、すべて義務化の対象となります。

売却する・しないに関わらず、相続したら登記は必須になった、と覚えてください。

相続登記の手続きと必要書類

相続登記は、以下の流れで進めます。

  1. 必要書類の収集: これが最も大変です。
    • 被相続人(故人)の出生から死亡までの連続した戸籍謄本一式
    • 相続人全員の現在の戸籍謄本
    • 不動産を取得する相続人の住民票
    • 遺産分割協議書(相続人全員の実印・印鑑証明書付)
    • 固定資産評価証明書(登録免許税の計算用) など
  2. 登記申請書の作成: 法務局の書式に基づき申請書を作成します。
  3. 法務局への申請: 管轄の法務局に書類一式を提出します。(郵送やオンライン申請も可)

特に「出生から死亡までの戸籍」の収集は、故人が転籍を繰り返していたり、古い「改製原戸籍(かいせいげんこせき)」を読み解いたりする必要があり、専門家(司法書士)でないと非常に困難なケースが多いです。

かかる費用

相続登記には、主に「実費」と「専門家報酬」がかかります。

  • 実費(登録免許税): 登記の際に国に納める税金です。計算式は「固定資産税評価額 $\times 0.4\%$」です。(例:評価額2,000万円の場合、税額は8万円)
  • 専門家報酬(司法書士): 司法書士に依頼した場合の報酬です。約6万円〜10万円が相場ですが、戸籍収集の難易度や相続人の数によって変動します。

手続きの迅速性と確実性(特に売却を急ぐ場合)を考慮すれば、司法書士への依頼が推奨されます。書類収集から登記完了まで、通常1〜2ヶ月程度の期間を見込む必要があります。

共有名義不動産の売却リスク

共有名義不動産の売却リスク

遺産分割協議が難航した際、「とりあえず法定相続分(例:兄弟3人なら各1/3)で共有名義にしておこう」という選択をしがちです。しかし、前述の通り、売却を前提とする場合、これは最悪の選択肢と言えます。

登記(法務)の段階では問題を先送りできても、売却(実務)の段階で必ず「デッドロック(行き詰まり)」に陥ります。

共有名義のデッドロック(売却不能の罠)

なぜなら、共有名義の不動産を売却するには、共有者「全員」の同意(売買契約書への署名・捺印、印鑑証明書の提出)が法的に必要不可欠だからです。

例えば3人兄弟(持分1/3ずつ)で相続し、2人が「5,000万円で売りたい」と賛成しても、残りの1人が「いや、6,000万円じゃないと売らない」「そもそも売りたくない」と反対すれば、その不動産は法的に一切売却できなくなります。

この対立が長期化するうちに、前述した「3年」という節税特例(空き家控除)の期限 が過ぎ去り、全員が金銭的に大損をするというのが、最も典型的な失敗パターンです。

共有名義の将来的なリスク

さらに恐ろしいのは、時間が経過するほど問題が悪化することです。もし共有者の一人(例:反対していた兄弟)が亡くなると、その持分はさらにその妻子へと相続されます。

いわゆる「ねずみ算式」に権利者が増えていき、最初は3人だった共有者が、数年後には7人、8人…と増え、もはや合意形成が不可能な「塩漬け不動産」になってしまうのです。

共有持分のみの売却は可能か?

理論上、自分自身の「持分(1/3など)」だけを第三者に売却することは可能です。しかし、不動産の一部の権利だけを購入したいという一般の買主は存在しません。

結果として、共有持分を専門に買い取る不動産業者に依頼することになりますが、その買取価格は市場価格の半額以下、場合によっては1/3程度まで買い叩かれることを覚悟しなければなりません。

もし共有者間の話し合いが難航し、ご自身の持分だけでも早く現金化したい場合は、専門の買取業者に相談するのも一つの手です。→他社で断られた共有持分物件でも買取りが可能な「ワケガイ」に無料相談する

売却を前提とするならば、遺産分割協議の段階で「共有分割」は絶対に避け、「換価分割」または「代表者1名の単独名義」で合意形成を図るべきです。

共有名義不動産の売却リスクについては、当サイトの別記事でも詳しく解説していますので、ご不安な方はそちらもご覧ください。

共有名義の不動産については、具体的なトラブル事例や解決パターンを知っておくと、よりイメージしやすくなります。詳しくは、共有名義の不動産売却 困難な理由と解決策で、ケース別の対処法もチェックしてみてください。

司法書士に相談するタイミング

司法書士は「登記」と「相続手続き」の専門家です。彼らに相談する最適なタイミングは、実はいくつかあります。

タイミング1:相続発生直後(戸籍収集・相続人確定の依頼)

最も早いタイミングがここです。前述の通り、「出生から死亡までの戸籍収集」は非常に煩雑です。これを相続発生後すぐに司法書士に依頼することで、相続人を法的に確定させる作業を迅速かつ正確に進められます。売却スケジュールを少しでも早めたい場合に有効です。

タイミング2:遺産分割協議書の作成支援

相続人全員での話し合い(遺産分割協議)は相続人自身で行う必要がありますが、その合意内容を法的に有効な「遺産分割協議書」という書面に落とし込む作業は、司法書士の専門分野です。

この時、単に登記をお願いするのではなく、「この不動産は、最終的に換価分割(売却)を前提としています」と明確に伝えることが重要です。

その意向を伝えることで、司法書士は売却手続き(フェーズ2)がスムーズに進むような遺産分割協議書(例:売却活動を行う代表相続人を明記する、売却代金の分配割合を記載する)の作成をサポートしてくれます。

タイミング3:遺産分割協議後(相続登記の申請)

最も一般的とも言えるタイミングです。相続人間で遺産分割協議書(と印鑑証明書)がすべて整った段階で、司法書士に「相続登記の申請手続き」だけを依頼します。費用を最も抑えられる可能性がありますが、協議書の作成や戸籍収集に不備があると、かえって時間がかかる場合もあります。

売却を円滑に進めるためには、相続税申告を担当する税理士とも連携してもらえる司法書士を選ぶと、さらに安心です。

また、相続手続きはもちろんですが、もしご両親がご健在なうちに認知症などで資産が凍結されるリスクに備えたい場合は、司法書士などの専門家が関与する「家族信託」という方法もあります。→認知症による資産凍結から親を守る|家族信託のおやとこに資料請求する

相続不動産 売却 手続きの費用と税金対策

相続不動産 売却 手続きの費用と税金対策

相続登記が完了し、いよいよ売却(実務)フェーズに入ります。ここでは「いくらで売れて、いくら費用がかかり、最終的にいくら税金を払うのか」という、手取り額に直結するお金の話を徹底解説します。

コンサルタント @KAZU

相続不動産の税金計算で、私が最も恐れているのが「取得費不明の罠」です。故人がいつ、いくらでその不動産を買ったかを示す「売買契約書」が見つからないと、税金が数百万円単位で跳ね上がります。
不動産会社を探す前に、まず実家の金庫や押入れを捜索してください。その紙切れ一枚が、現金500万円以上の価値を持つこともあります。

売却にかかる費用と仲介手数料

不動産が5,000万円で売れたとしても、その全額が相続人の手元に残るわけではありません。売却価格(収入)から、まず売却にかかった「諸費用」が差し引かれます。

これらの費用の多くは、後で説明する「譲渡所得税」の計算上、「譲渡費用」として利益から差し引くことができます。領収書は必ず保管しておきましょう。

仲介手数料

売買を仲介した不動産会社に支払う「成功報酬」です。あくまで成功報酬なので、売買契約が成立して初めて発生します。
法律上の上限額が定められており、速算式:[売買価格 × 3% + 6万円] + 消費税 で計算されます。
(例:売却価格5,000万円の場合、上限は (5,000万円 × 3% + 6万円) × 1.1 = 171.6万円(税込)となります)

印紙税

売買契約書に貼付する収入印紙代です。売却価格によって変動しますが、例えば5,000万円超1億円以下の場合、軽減措置が適用されて2万円(2024年3月31日まで、延長の可能性あり)となります。

その他の諸費用

物件の状況に応じて、以下のような費用が発生します。

  • 登記費用: フェーズ1で発生した「相続登記」の費用(登録免許税、司法書士報酬)に加え、売却時に故人の抵当権(住宅ローン)が残っていた場合の「抵当権抹消登記」の費用(数万円程度)がかかります。
  • 測量費用: 土地の境界が不明確な場合や、隣地との境界線がはっきりしない場合、売却の条件として「境界確定測量」が必要となります。費用は土地の形状や隣地の数にもよりますが、35万円〜80万円程度が相場です。
  • 解体費用: 古家を解体して「更地」にして売却した場合。木造家屋でも100万円〜200万円以上かかることもあります。この判断は税金(空き家控除)とも密接に関わるため、慎重な判断が必要です。
  • 遺品整理費用: 売主(相続人)は、買主に引き渡すまでに家の中を空っぽにする(遺品をすべて撤去する)義務があります。この遺品整理費用も、物量によっては20万円〜50万円、あるいはそれ以上かかる場合があります。

また、家財道具の中には価値がつくもの(骨董品、着物、古銭など)が眠っているかもしれません。処分する前に、一度専門の買取業者に見てもらうと、整理費用が(買取金額で)相殺できることもありますよ。

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費用項目概要概算費用(5,000万円で売却時)
仲介手数料不動産会社への成功報酬約171.6万円(上限・税込)
印紙税売買契約書に貼付2万円(軽減措置適用時)
相続登記費用名義変更の登録免許税+司法書士報酬評価額による(例:15万円〜)
測量費用土地の境界確定が必要な場合35万円 〜 80万円
解体費用更地にして売却した場合100万円 〜 200万円以上
遺品整理費用家財道具の撤去20万円 〜 50万円

※これらの費用はあくまで目安であり、物件の状況によって大きく変動します。必ず事前に不動産会社や各専門家に見積もりを取りましょう。

「どこでどれくらい損をしてしまうのか」を具体的に知りたい方は、実際の事例をまとめた不動産売却の失敗談|数百万円損した売主に学ぶ!リアルな回避法もチェックしてみてください。やってはいけない判断や、避けるべきポイントがリアルに分かります。

売却で発生する税金(譲渡所得税)

売却で発生する税金(譲渡所得税)

相続不動産売却で最大の支出となり得るのが「税金」です。相続時に「相続税」が課税される可能性がありますが、それとは全く別に、売却によって利益(儲け)が出た場合には、その利益に対して「譲渡所得税」が課税されます。

譲渡所得(=利益)の計算方法

譲渡所得税は、売却価格(5,000万円)そのものではなく、以下の計算式で算出される「譲渡所得(=利益)」に対して課税されます。

譲渡所得 = 売却価格 – (取得費 + 譲渡費用)

  • 売却価格: 買主に売った金額(5,000万円)。
  • 譲渡費用: 売却するためにかかった費用(上記Aの仲介手数料や印紙税、解体費用など)。
  • 取得費: その不動産を「取得」した際にかかった費用。

取得費とは?

「取得費」とは、被相続人(故人)がその不動産を購入したときの価格(購入代金、購入時の仲介手数料、登記費用、不動産取得税など)の合計です。

所有期間と税率

税率は、不動産の所有期間によって異なります。

  • 長期譲渡所得(所有期間5年超)20.315%(所得税15.315% + 住民税5%)
  • 短期譲渡所得(所有期間5年以下)39.63%(所得税30.63% + 住民税9%)

ここで極めて重要なルールがあります。相続不動産の場合、所有期間は「相続人が相続した日」からカウントするのではなく、「被相続人(故人)がその不動産を取得した日」から通算してカウントします。被相続人が何十年も前に購入した不動産であれば、相続後すぐに売却したとしても、所有期間は「5年超」となり、税率の低い「長期譲渡所得(約20%)」が適用されるケースがほとんどです。

取得費不明の「税務爆弾」

ここで最重要ポイントとなるのが「取得費」です。これは、故人がその不動産を購入したときの価格(売買契約書)です。

問題は、相続した不動産が数十年前(例:被相続人の親の代)に購入したもので、故人が購入した当時の「売買契約書」や「領収書」が見つからず、取得費が不明なケースです。

この場合、税法上「概算取得費」というルールが適用されます。これは、取得費を「売却価格の5%」として計算するというものです。

これがどれほど恐ろしい結果を招くか、シミュレーションで示す必要があります。

【衝撃】契約書1枚で納税額が559万円変わるケース

前提:売却価格5,000万円、譲渡費用200万円、長期譲渡(税率20.315%)

ケースA:故人の売買契約書(3,000万円)が「見つかった」場合
取得費: 3,000万円
譲渡所得: 5,000万円 – (3,000万円 + 200万円) = 1,800万円
譲渡所得税: 1,800万円 × 20.315% = 約365万円

ケースB:故人の売買契約書が「見つからなかった」場合
取得費: 不明のため、概算取得費(5,000万円 × 5%)を適用
取得費: 250万円
譲渡所得: 5,000万円 – (250万円 + 200万円) = 4,550万円
譲渡所得税: 4,550万円 × 20.315% = 約924万円

売買契約書という一枚の紙が見つからないだけで、納税額が約559万円も増加します。これが、私が「取得費不明の罠」を最も恐れる理由です。相続が始まったら、不動産会社を探す前に、まず実家の金庫や押入れを徹底的に捜索してください。

相続不動産の税金は、特例の使い方次第で手取りが数百万円単位で変わることもあります。より踏み込んだ節税の考え方や具体例は、【衝撃】相続した家 売却 税金で数百万円得する“裏ワザ”とは?で、シミュレーション付きで詳しく解説しています。

税金計算の前に、まずはあなたの不動産が「いくらで売れるのか」正確な価値を知ることが第一歩です。相続不動産の売却実績が豊富な専門家に、現状を相談してみませんか?

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相続不動産 売却 手続きについてよくあるご質問FAQ

相続した不動産、売却はいつまでにしなければなりませんか?

売却自体に法律的な期限はありません。ただし、節税特例(例:空き家の3,000万円控除)の適用期限が「相続開始から3年後の年末まで」などと定められているため、特例を使いたい場合はその期限内に売却を完了させる必要があります。

故人(亡くなった親)名義のまま不動産を売却できますか?

できません。不動産を売却するには、必ず故人から相続人へ名義を変更する「相続登記」を完了させる必要があります。これが売却活動の法的な大前提となります。

親が買ったときの売買契約書が見つからない場合、どうなりますか?

税金計算(譲渡所得税)で著しく不利になる可能性があります。取得費が不明な場合、「売却価格の5%」を取得費とみなす「概算取得費」ルールが適用され、課税対象額が非常に大きくなり、納税額が数百万円単位で増えることがあります。

兄弟で「共有名義」にして相続登記しても大丈夫ですか?

売却を前提とする場合、共有名義は非推奨です。共有不動産を売却するには共有者「全員」の同意が必要となるため、一人でも反対すれば売却できなくなります。その結果、節税特例の期限を逃すリスクが極めて高くなります。

空き家の3000万円控除の条件

空き家の3000万円控除の条件

相続不動産売却で、最もインパクトの大きい節税策が「被相続人の居住用財産(空き家)の3,000万円控除」です。(正式名称:被相続人の居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の特別控除の特例)

これは、一定の要件を満たせば、譲渡所得(利益)から最大3,000万円を控除(差し引く)ことができるという、非常に強力な特例です。

例えば、譲渡所得が2,500万円だった場合、この特例を使えば全額控除(2,500万円 – 3,000万円)され、譲渡所得税は0円になります。

ただし、その適用要件は極めて複雑かつ厳格です。一つでも満たせないと適用できません。

「空き家の3,000万円控除」主な適用要件の徹底解説

(出典:国税庁「No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」

対象物件の要件

  • 被相続人が亡くなる直前まで居住用として使っていた家であること。
  • (重要)被相続人が「一人で」住んでいたこと。(※老人ホーム等に入所していた場合は、要介護認定を受けていたなど、別途詳細な要件を満たす必要があります)
  • 区分所有建物(マンションなど)も対象になります。

時期の要件

  • 相続開始日(死亡日)から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売却すること。(これが約3年のタイムリミットです)
  • 特例の適用期限は2027年(令和9年)12月31日までの売却となっています。(2023年税制改正で延長)

建築年と売却方法の要件(最重要)

  • 昭和56年 (1981年) 5月31日以前に建築された家屋(いわゆる「旧耐震基準」)の場合、以下のいずれかを満たす必要があります。
    1. 売却時までに耐震リフォームを行う。
    2. または、家屋を解体し、土地のみで売却する。
  • 売却方法は、家屋(+敷地)または解体後の土地、どちらでも構いません。

その他の要件

  • 売却価格が1億円以下であること。
  • 売却先が、親子や夫婦、生計を一つにする親族など、特別な関係の相手でないこと。

特に「旧耐震」の実家を相続した場合、「解体費用(100万円以上)」という目先のコストを負担してでも、「3,000万円控除(数百万円の節税)」という将来のメリットを取りに行くか、という高度な税務的判断が必要になります。

この判断は、相続人だけでは不可能です。必ず、不動産会社(解体費用や更地価格の査定)と税理士(節税額のシミュレーション)の両方と連携して決定すべき最重要戦略です。

節税特例の比較と選択方法

相続不動産の売却時には、主に3つの強力な節税特例がありますが、これらは互いに「併用不可」という重大な制約(排他性)があります。

  1. 戦略1:相続税の取得費加算の特例相続時に「相続税」を納税した人が、その相続で取得した不動産を売却する際、支払った相続税の一部を、売却時の「取得費」に上乗せ(加算)できる制度です。取得費が増えるため、利益(譲渡所得)が圧縮され、結果的に譲渡所得税が安くなります。
  2. 戦略2:被相続人の居住用財産(空き家)の3,000万円控除上記で解説した、空き家売却時の特例。譲渡所得そのものから最大3,000万円を差し引きます。
  3. 戦略3:居住用財産の3,000万円控除これは「空き家特例(戦略2)」とは全く別の制度です。相続した家に、被相続人と同居していた相続人が引き続き居住した場合、または、相続人がその家に引っ越して自らの「マイホーム」とした場合。その相続人が、自らの「居住用財産(マイホーム)」としてその家を売却した際に使える3,000万円の控除です。

【最重要ルール】これらの特例は、互いに併用(同時使用)ができません。

  • 「取得費加算(戦略1)」と「各種3,000万円控除(戦略2または3)」は、併用できません。
  • 「空き家3,000万円控除(戦略2)」と「居住用3,000万円控除(戦略3)」も、当然ですが併用できません。

相続人は、これらのうち、自身の状況に適用可能なものから、最も有利になるもの(=納税額が最も少なくなるもの)を「1つだけ」選択し、確定申告 をしなければなりません。

シミュレーションが不可欠な理由

この選択は、単純に控除額の大小(3,000万円)だけで決めてはなりません。

ケースA:譲渡所得4,000万円、相続税(取得費加算額)1,200万円の場合

  • 戦略1(取得費加算): 4,000万円 – 1,200万円 = 課税所得 2,800万円
  • 戦略2(空き家控除): 4,000万円 – 3,000万円 = 課税所得 1,000万円
  • → この場合は「空き家3,000万円控除(戦略2)」が圧倒的に有利です。

ケースB:譲渡所得1,000万円、相続税(取得費加算額)1,200万円の場合

(不動産以外の財産(預金など)が多く、相続税を高額納税したケース)

  • 戦略1(取得費加算): 1,000万円 – 1,200万円 = 課税所得 0円
  • 戦略2(空き家控除): 1,000万円 – 3,000万円 = 課税所得 0円
  • → どちらも課税所得は0円です。しかし、共同相続人(兄弟など)が複数いる場合、「空き家控除(戦略2)」は3,000万円の枠を相続人全員で分け合う必要がありますが、「取得費加算(戦略1)」は各自が支払った相続税に応じて個別に適用できます。状況によっては戦略1が有利になることもあり得ます。

このように、自身の譲渡所得の額、支払った相続税の額、共同相続人の数、という複数の変数を組み合わせてシミュレーションしなければ、最適解は導き出せません。この選択は不可逆的であり、税理士との綿密な相談が不可欠です。

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訳あり物件や事故物件の売却

訳あり物件や事故物件の売却

すべての相続不動産がスムーズに売却できるわけではありません。中には、価格を大幅に下げても買主が現れない、いわゆる「負動産(ふどうさん)」を相続してしまうケースも増えています。

これらの物件は、通常の不動産会社では仲介を断られたり、売れたとしても非常に安価になったりします。しかし、売れない間も、固定資産税や管理費は毎年永続的に発生し、相続人の負担となります。

こうした物件の売却には、専門の知識と販売ルートを持つ「訳あり物件専門の買取業者」への相談が有効な選択肢となります。仲介(一般の買主を探す)ではなく、業者に直接買い取ってもらうため、売却価格は安くなりますが、早期に(最短数週間で)現金化でき、契約不適合責任(売却後の欠陥に対する責任)を免除されるメリットがあります。

→他社で断られた「訳あり物件」の無料査定を専門業者に相談する

また、通常の仲介で売れる可能性もゼロではありません。まずは複数の会社に査定を依頼してみるのも良いでしょう。

→訳あり物件もOK!あらゆる不動産物件を一括査定するなら【いえカツLIFE】

売れない場合の最終手段

どうしても売れない、買取も断られた、という場合の最終手段も知っておきましょう。

  • 相続土地国庫帰属制度: 2023年4月から始まった新制度です。一定の要件(更地であること、建物や抵当権がないこと、境界が明確であること等)を満たせば、国が定めた管理費用10年分(例:20万円)を納付することで、土地の所有権を国に引き取ってもらえます。
  • 相続放棄: 相続開始を知ってから3ヶ月以内であれば、家庭裁判所に申述して「相続放棄」が可能です。これにより、負動産を含むすべての財産(預金も負債も)を放棄できます。ただし、不動産だけを選んで放棄することはできません。

当サイト「終活だよどっとコム」では、こうした訳あり物件や事故物件の売却、あるいは相続放棄や国庫帰属制度に関するご相談も、専門家として承っています。一人で悩まず、まずはご相談ください。

相続不動産 売却 手続きの悩み解決

ここまで見てきたように、相続不動産 売却 手続きは、法務(司法書士)・税務(税理士)・実務(不動産会社)という、異なる分野の専門知識が不可欠な、非常に複雑な手続きです。相続人が一人ですべてを完結させるのは、ほぼ不可能と言えます。

成功の鍵は、これらの専門家と、いかに正しく連携するかにかかっています。

各専門家の役割と相談する「順番」

これらの専門家には、正しい順番で相談することが、手続きをスムーズに進めるコツです。

  1. Step 1(相続発生直後): 税理士まず、相続税申告 が必要か否か(10ヶ月の期限)を判断するため、相続専門の税理士に相談し、財産評価 と相続税のシミュレーションを依頼します。これが遺産分割の土台となります。
  2. Step 2(遺産分割時): 司法書士税理士の評価を基に遺産分割 を行い、その合意内容で「遺産分割協議書」の作成と「相続登記」 を司法書士に依頼します。この時、「売却(換価分割)を前提としている」ことを明確に伝えます。
  3. Step 3(相続登記完了後): 不動産会社名義変更が完了したら、不動産会社 に売却活動 を依頼します。この時、税理士と連携し、節税特例(特に空き家特例の解体要件)を適用するための売却戦略を共有します。
  4. Step 4(売却完了後): 税理士売買契約書など売却データ一式を持って、再度、税理士に「確定申告」 を依頼し、シミュレーションした最適な節税特例 を選択・適用してもらいます。

この「税理士 → 司法書士 → 不動産会社」という流れが、相続不動産売却の王道です。

専門家選びで失敗しないために

最後に、信頼できる専門家パートナーを選ぶためのチェックリストを提示します。

  • 「相続不動産の売却」という特定分野での実績が豊富か?(単なる不動産仲介や、単なる相続登記だけではない、一連のプロセスを理解しているか)
  • 司法書士、税理士、不動産会社が相互に連携し、ワンストップで対応できる体制を持っているか?(情報が分断され、手続きの遅延や税務的ミスが発生するのを防げるか)
  • 最も重要なリスクと対策を、こちらが尋ねる前に提示してくれるか?(例:IV-Dの「取得費不明リスク(概算取得費5%の罠)」や、V-Dの「節税特例の排他性と最適解のシミュレーション」について、専門家の側から proactively に警告と対策を説明してくれるか)

訳あり不動産、共有名義、事故物件、そして複雑な相続不動産の売却手続きや遺品整理のお悩みは、「終活だよどっとコム」が提供する情報と専門家ネットワークで解決できるかもしれません。最終的な判断は、信頼できる専門家にご相談の上、慎重に行ってください。

複雑な相続不動産の売却手続き、ワンストップで相談できるパートナー探しは非常に重要です。まずは信頼できる大手で、あなたの不動産の価値を調べてみませんか?

まずは無料相談で我が家の診断

コンサルタント @KAZU

複雑な相続手続きを前に不安になるお気持ちはよく分かります。しかし、焦って不要な契約を結ぶ必要はありません。まずは「現状把握」が何より大切です。故人の財産がどこにどれだけあるか、そして「売買契約書」が残っていないか。それらを把握するだけでも、専門家への相談の質が格段に上がります。

訳あり不動産や相続・遺品整理をまとめて整理したい方へ
訳あり不動産・相続・遺品整理の総合ガイド|孤独死・共有名義・再建築不可まで状況別にやさしく解決 では、このページを含む関連テーマを「状況別」に一覧でまとめています。

今日からできるアクションプラン

相続不動産の売却に向けて、まず今日から以下の3つの行動を始めてみてください。

  1. 最優先:実家の金庫・押入れを捜索し「売買契約書」を探す
  2. 相続人を確定させるため、故人の「戸籍謄本」の収集準備を始める(または司法書士に相談する)
  3. 相続に強い「税理士」を探し、無料相談を予約してみる

小さな一歩が、未来の大きな金銭的損失を防ぎます。まずは動いてみましょう!

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この記事を書いた専門家

保有資格: 相続診断士 / 宅地建物取引士 / AFP(日本FP協会認定)など20種以上

不動産・金融業界で15年以上の実務経験、1,500件以上の相談実績を持つ相続・終活・不動産相続のプロフェッショナル。法律・税務・介護の専門家と連携し、ご家族に寄り添った円満な終活・相続を実現します。

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