
こんにちは!突然ですが、ご実家やご親族の相続について考えたことはありますか?「うちはまだまだ先の話…」なんて思っていても、相続は意外と突然やってくるものですよね。
特に、相続財産に不動産が含まれていると、何から手をつけていいのやら…。相続した家の査定や、マンションの査定を相続に合わせてどう進めるか、また相続不動産の評価額の調べ方など、疑問は尽きません。円満な不動産の査定と遺産分割のためには、まず終活とは何かを知り、準備しておくことが第一歩。
不動産鑑定士に頼むべきか、相続不動産鑑定の費用はいくらか、土地評価の争いを避けるコツは?さらには相続税の計算事例や、意外と見落としがちな車の相続査定まで、気になるポイントはたくさんあります。
不動産査定が無料の理由も解説しつつ、皆さんの「どうしよう?」をスッキリ解決していきますね。
- 相続不動産の査定が必要な理由がわかる
- 自分で不動産の評価額を調べる方法がわかる
- 遺産分割で損をしないための4つの方法がわかる
- 相続税の基本的な考え方と計算事例がわかる

相続で不動産が出てくると、多くの方が「価値がわからない」という壁にぶつかります。大切なのは、まず客観的な価格を知ること。これが親族間の公平な話し合いの土台となり、後のトラブルを防ぐ鍵になります。この記事で、査定の基本からスムーズな分割方法まで、しっかり学んでいきましょう。
相続不動産査定の必要性と評価額の調べ方


不動産査定はスムーズな遺産分割に不可欠
相続が発生したとき、法律で定められた相続人全員で遺産の分け方を話し合う「遺産分割協議」を行いますが、最も大切なことの一つが、相続人全員が納得する形で財産を分けることです。現金や預貯金であれば金額が明確なので分けやすいですが、不動産はそうはいきませんよね。
そこで不可欠となるのが「相続不動産査定」です。不動産の客観的な価値を価格として把握することで、初めて公平な遺産分割のスタートラインに立つことができます。
相続トラブルの多くは、「自分の取り分が少ないのではないか」という不信感から始まりますが、専門家による査定額は、その不信感を払拭し、冷静な話し合いを促すための客観的な判断材料となります。
不動産査定がもたらす3つのメリット
- 公平性の担保:客観的な価格がわかることで、相続人間の公平な分割が可能になります。
- 分割方法の選択肢が広がる:不動産の正確な価値がわからないと、そもそも分割方法を検討できません。後述する「代償分割」や「換価分割」といった方法も、査定額が基準となります。
- 納税資金の計画が立てやすい:不動産を売却して相続税の納税資金に充てる場合、査定額を基に「いくら現金化できるか」という見通しを立てることができます。
例えば、相続人が兄弟2人で、遺産が3,000万円の価値がある土地と1,000万円の預金だったとします。兄が土地を、弟が預金を相続する場合、このままでは不公平ですよね。
しかし、土地の価格が3,000万円と分かっていれば、兄が弟に差額の半分である1,000万円の代償金を支払う「代償分割」という方法で、円満に解決できる可能性がぐっと高まります。このように、査定は相続トラブルを避けるための羅針盤のような役割を果たしてくれるのです。
相続不動産の評価額の調べ方とは


「専門家に頼む前に、まずは自分で大まかな価格を知りたい」と感じる方も多いのではないでしょうか。不動産の評価額は、ご自身で調べる方法もあります。これらは公的な評価額と呼ばれ、主に税金の計算などに用いられます。
特に重要なのが、相続税の計算の基準となる「相続税評価額」です。これは以下のような方法で調べることができます。
対象 | 評価方法 | 調べ方と概要 |
---|---|---|
土地 | 路線価方式 (主に市街地) | 国税庁のウェブサイト「財産評価基準書 路線価図・評価倍率表」で確認します。土地が面する道路に設定された1㎡あたりの価格(路線価)に、土地の面積を掛けて計算します。路線価は、実際の取引価格のおおむね80%程度が目安とされています。 |
土地 | 倍率方式 (主に郊外) | 路線価が定められていない土地の評価方法です。土地の固定資産税評価額に、国税庁が地域ごとに定める「評価倍率」を掛けて計算します。固定資産税評価額は、毎年市区町村から送付される納税通知書で確認できます。 |
建物(家屋) | 固定資産税評価額 | 毎年送られてくる固定資産税の「納税通知書」に記載されている固定資産税評価額が、そのまま建物の相続税評価額となります。これは実際の建築費の50%~70%程度が目安です。 |
ポイント:市場価格との大きな違いに注意!
ここで最も注意していただきたいのは、これらの方法で算出した評価額は、あくまで相続税や固定資産税を計算するための行政上の価格だということです。
実際に不動産を売却する際の市場価格(時価)とは一致せず、時価の方が高くなることがほとんどです。公平な遺産分割や、売却を検討する際は、必ず不動産会社による時価の査定が必要不可欠となります。
実家や相続した家の査定を進める手順
実家や家を相続し、いざ査定を依頼しようと思っても、何から始めればよいか迷いますよね。後悔しない査定を受けるために、一般的な流れとポイントを詳しく見ていきましょう。
- 不動産会社を選ぶ
まずは査定を依頼する不動産会社を探します。大手から地域密着型まで様々ですが、会社の規模だけでなく「相続案件の実績が豊富か」「そのエリアの売却に強いか」という視点で選ぶのがおすすめです。税理士や弁護士といった専門家と連携している不動産会社なら、さらに心強いでしょう。できれば2~3社に依頼し、査定価格や担当者の対応を比較検討するのが賢明です。 - 査定を申し込む(必要書類の準備)
電話やインターネットで査定を申し込みます。このとき、家の所在地、面積、築年数などの情報が必要になります。可能であれば、以下の書類を手元に準備しておくと、より正確な査定がスピーディーに進みます。- 登記簿謄本(全部事項証明書)
- 固定資産税納税通知書・課税明細書
- 登記済証(権利証)または登記識別情報
- 間取り図、測量図など
- 訪問査定を受ける
不動産会社の担当者が実際に現地を訪れ、家の内外の状態を細かくチェックします。所要時間は1時間程度が目安です。担当者は、建物の劣化状況、日当たり、リフォーム履歴、設備の状況、隣地との境界線の確認など、多角的に物件を評価します。このとき、相続した経緯や、今後の希望(売却したい、住み続けたいなど)を具体的に伝えておくと、より現実的なアドバイスがもらえます。 - 査定結果の報告を受ける
後日、査定価格とその根拠が詳細に記載された「査定報告書」が提出されます。「なぜこの価格なのか」という算出根拠(周辺の類似物件の取引事例など)が明確に示されているかを確認しましょう。不明な点があれば、遠慮なく質問し、納得できる説明をしてくれる担当者を選ぶことが大切です。
この手順を一つひとつ丁寧に進めることで、納得のいく査定を受けることができます。最終的に相続した実家を売却するか賃貸に出すか、判断するための重要な材料が揃うはずです。
相続したマンションの査定で確認すべき点


マンションを相続した場合の査定は、一戸建てとは少し異なる、マンション特有の視点が必要です。お部屋の状態はもちろんですが、マンション全体の価値が査定価格に大きく影響します。
マンション査定の重要チェックポイント
- 立地条件:最寄り駅からの距離や利便性、周辺の商業施設や公共施設の充実度は最も重要な要素の一つです。
- 管理状況:「マンションは管理を買え」と言われるほど重要なポイントです。エントランスや廊下といった共用部分が清潔に保たれているか、管理規約はしっかりしているか、管理員の対応や管理会社の評判も価格に影響します。
- 修繕履歴と積立金:過去に計画的な大規模修繕(外壁塗装など)が適切に行われているかは、建物の寿命に関わります。そして、将来の修繕に備えた修繕積立金が十分に貯まっているかは非常に重要です。積立金が不足していると、将来購入した人が急な一時金の負担や管理費の値上げに直面するリスクがあり、査定額が下がる要因になります。
- 眺望・方角・階数:日当たりや風通し、窓からの景色は住み心地に直結するため、価格に大きく影響します。一般的に南向きや、プライバシー性の高い角部屋、眺望の良い高層階は人気が高い傾向にあります。
- 耐震性:1981年6月以降の「新耐震基準」で建てられているかどうかも、重要な判断基準となります。
これらの専門的な情報は、個人で調べるのが難しい部分も多いです。だからこそ、そのエリアのマンション売却実績が豊富な不動産会社に依頼することが、適正な査定価格を知るための最も確実な近道と言えるでしょう。
なぜ不動産査定が無料で行えるのか理由
「不動産という高価な資産の価値を算出するのに、どうして無料なの?」と不思議に思いませんか。何か裏があるのでは…と心配になる方もいるかもしれませんね。
不動産会社が査定を無料で行う最大の理由は、将来、お客様から不動産の売却を任せてもらう(媒介契約を結ぶ)ための、重要な営業活動の一環だからです。
不動産会社は、不動産の売買が成立した際に、売主や買主から法律(宅地建物取引業法)で上限が定められた「仲介手数料」を成功報酬として受け取ることで利益を得ています。
つまり、査定という入口を通じてお客様との信頼関係を築き、「この不動産を売却する際は、ぜひ当社に仲介をお任せください」とアピールする機会としているのです。
もちろん、査定を依頼したからといって、必ずその不動産会社に売却を依頼しなければならないという義務は一切ありません。
むしろ、複数の会社から査定を取り、サービス内容や査定価格の根拠、担当者との相性をじっくり比較して、最も信頼できるパートナーを選ぶことが、相続不動産の売却を成功させるために非常に大切です。安心して、まずは気軽に専門家の意見を聞く場として活用しましょう。



複数の不動産会社に査定を依頼するのは「相見積もり」と同じ考え方です。1社の意見だけを鵜呑みにせず、各社の査定価格の根拠をしっかり聞きましょう。熱心で、かつ納得のいく説明をしてくれる担当者と出会うことが、相続不動産の売却を成功させる第一歩です。
専門家による相続不動産査定と税金・注意点


不動産鑑定士への依頼と鑑定費用の相場
不動産の価値を知る専門的な方法として、不動産会社の「査定」のほかに、不動産鑑定士による「鑑定評価」があります。この二つは、目的や法的効力において明確な違いがあるため、状況に応じて使い分けることが重要です。
最大の違いは、「法的効力」と「客観性」です。不動産鑑定士は国家資格者であり、中立的な立場で不動産の経済価値を判定します。その結果として作成される「不動産鑑定評価書」は、公的な証明力を持ち、税務署への申告や裁判所における遺産分割調停・訴訟の際に、信頼性の高い証拠として採用されます。
不動産査定(不動産会社) | 不動産鑑定(不動産鑑定士) | |
---|---|---|
実施者 | 不動産会社 | 不動産鑑定士(国家資格) |
目的 | 主に売却活動のための参考価格の算出 | 不動産の適正な経済価値の客観的な判定 |
費用 | 無料が一般的 | 有料(土地・戸建で20万~30万円程度が目安) |
法的効力 | なし | あり(公的な証明書として利用可能) |
相続人間で意見がまとまらず、遺産分割協議が難航している、あるいは調停や訴訟に発展する可能性があるケースでは、費用はかかりますが不動産鑑定士への依頼を検討する価値があります。
一方で、相続人全員が売却に合意しており、あくまで「いくらで売れそうか」という市場価格を知りたいという段階であれば、無料の不動産査定で十分な場合が多いでしょう。
相続トラブルのもとになる土地評価の争い


相続において、残念ながら最もトラブルに発展しやすいのが、この土地の評価をめぐる争いです。裁判所の司法統計によると、遺産分割事件のうち認容・調停成立したものでも、1年〜2年かかるケースが約3割を占めており、長期化しやすい問題であることがわかります。
争いの原因は、相続税評価額と実際の市場価値(時価)とのギャップや、土地ごとの特性の違いに起因することが多いです。例えば、長男が家業を継ぐために評価額の低い農地を相続し、次男が都心にある評価額の高い宅地を相続した場合、相続税評価額だけ見ると不公平に感じるかもしれません。
しかし、宅地はすぐに高値で売却できる一方、農地は買い手がつきにくい、といった市場性の違いもあります。どちらを基準に「公平」と判断するのかで意見が対立してしまうのです。
安易な「共有名義」が将来の火種に
ひとまずの解決策として不動産を相続人全員の「共有名義」にするケースがありますが、これは問題の先送りにしかならず、将来さらに深刻なトラブルを引き起こす可能性があるため注意が必要です。不動産を売却したり、大規模なリフォームをしたりするには共有者全員の同意が必要になります。
誰か一人でも反対すれば何もできず、さらに共有者が亡くなるとその相続人に権利が移り、ネズミ算式に関係者が増えて収拾がつかなくなる恐れがあるのです。
このような争いを避けるためには、相続人全員が同じ客観的な情報(不動産会社の査定書など)を共有し、それぞれの土地の特性や将来性も考慮に入れながら、冷静に話し合うことが何よりも重要です。
相続税についてよくあるご質問FAQ
相続と切っても切れないのが税金の問題です。ここでは、相続税に関するよくある質問とその答えを、少し詳しく解説します。
相続税の申告における注意点とは


前述の通り、相続税の申告・納税は相続開始を知った日の翌日から10ヶ月以内という短い期間に行う必要があります。この期間は長いようで、やるべきことが多岐にわたるため、あっという間に過ぎてしまいます。
特に注意したいのが、2024年4月1日から相続登記が義務化された点です。これは、相続によって不動産を取得したことを知った日から3年以内に、法務局で名義変更の手続き(相続登記)をしなければならないという制度です。正当な理由なく怠った場合は過料の対象となる可能性があります。(出典: 法務省「相続登記の申請義務化について」)
10ヶ月の期限内にやるべきことのチェックリスト
- ✅ 遺言書の有無の確認
- ✅ 相続人の確定(被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本を収集)
- ✅ 相続財産の調査と評価、財産目録の作成
- ✅ 遺産分割協議の実施と遺産分割協議書の作成
- ✅ 相続登記の申請(不動産がある場合)
- ✅ 相続税申告書の作成と提出
- ✅ 相続税の納税
これらの手続きを相続人だけで行うのは非常に大変です。特に不動産の評価や遺産分割協議書の作成、税金の計算など専門的な知識が必要な場面が多々あります。10ヶ月という期限に間に合わせ、かつ適切な申告を行うためには、相続が発生したらできるだけ早い段階で相続サポートなどの専門家(税理士や司法書士など)に相談し、計画的に手続きを進めることが重要です。
事例で見る不動産の相続税の計算方法
では、実際に簡単な事例で相続税がどのくらいになるか、計算の流れを詳しく見てみましょう。具体的なイメージを掴むことが大切です。
【モデルケース】
- 相続人:配偶者と子供2人(法定相続人は合計3人)
- 遺産総額:8,000万円(内訳:不動産評価額5,000万円、預貯金3,000万円)
- 法定相続分:配偶者 1/2、子供 各1/4
- 基礎控除額の計算
まず、税金がかからない範囲(基礎控除)を計算します。
3,000万円 + (600万円 × 3人) = 4,800万円 - 課税遺産総額の計算
遺産総額から基礎控除額を差し引き、相続税の対象となる金額を算出します。
遺産総額8,000万円 - 基礎控除額4,800万円 = 3,200万円 - 相続税の総額の計算
次に、課税遺産総額を「一旦、法定相続分で分けたと仮定」して、各々の税額を計算し、それを合計して「相続税の総額」を算出します。
・配偶者の仮の取得分:3,200万円 × 1/2 = 1,600万円
→ 税額:1,600万円 × 15% – 50万円(控除額) = 190万円
・子供1人分の仮の取得分:3,200万円 × 1/4 = 800万円
→ 税額:800万円 × 10% = 80万円
・相続税の総額:190万円 + 80万円 + 80万円 = 350万円 - 各人の実際の納税額の計算
最後に、算出した「相続税の総額(350万円)」を、実際に遺産を取得した割合に応じて各相続人が負担します。ここで重要なのが「配偶者の税額軽減」という特例です。配偶者は、1億6,000万円または法定相続分のいずれか多い金額まで相続しても相続税がかかりません。このケースでは、配偶者の納税額は0円となり、子供2人が実際の取得割合に応じて350万円を分担して納税することになります。
※上記はあくまで簡略化した計算例です。実際の計算は各種特例や財産の評価方法により変動しますので、必ず税理士にご相談ください。



相続は不動産や預貯金だけでなく、車、有価証券、ゴルフ会員権など、あらゆる財産が対象です。全体像を正確に把握することが、ミスのない申告と円満な分割につながります。財産目録の作成は、面倒でも丁寧に行うことを強くおすすめします。
迷ったら専門家に相談したい相続不動産査定
相続は、誰にとっても経験する機会が少なく、手続きも複雑で分かりにくいものです。特に不動産が関わると、評価額の算出から遺産分割、税金の問題まで、専門的な知識がなければ対応が難しい場面が多く出てきます。この記事が、皆さんの相続手続きをスムーズに進めるための一助となれば幸いです。
- 相続不動産の査定は円満な遺産分割の第一歩
- 不動産の価値を知ることで公平な話し合いが可能になる
- 相続税評価額は自分で調べることができる
- 土地の評価は路線価方式か倍率方式で行う
- 建物の評価は固定資産税評価額が基準となる
- 市場価格を知るには不動産会社の査定が有効
- 不動産査定は無料で依頼できるのが一般的
- マンション査定では管理状況や修繕積立金も重要
- 相続トラブルが予想される場合は不動産鑑定士への依頼を検討
- 不動産鑑定は有料だが法的効力を持つ
- 遺産分割で不動産を共有名義にするのは慎重に判断する
- 相続税には基礎控除があり必ず課税されるわけではない
- 相続税の申告と納税は相続開始から10ヶ月以内
- 期限内に手続きを進めるため計画的な準備が必要
- 困ったときは一人で悩まず専門家(不動産会社・税理士など)に相談する
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