家族信託の落とし穴とは?契約前に知るべき注意点15選

家族信託の落とし穴とは?契約前に知るべき注意点15選
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こんにちは!終活・相続の専門家、カズです!僕がこの世界に飛び込んで15年以上、本当にたくさんの方の「もしも」の備えをお手伝いしてきました。最近、特にご相談が増えているのが「家族信託」についてなんです。

「家族信託って言葉は聞くけど、なんだか難しそう…」と感じていませんか?わかります、その気持ち。親の将来を考えると、家族信託と後見人の違いって何だろうとか、手続きは自分でできるのかなとか、いろいろ気になりますよね。

ネットで調べると、家族信託は危険だとか、後悔したなんて話もあって、ますます不安になるかもしれません。

そもそも我が家には必要ないんじゃないか、家族信託の費用は一体いくらで、毎年かかったりするの?という疑問や、銀行やゆうちょ銀行でも相談できるのか、結局、家族信託はどこで頼めばいいですか?と迷う方も多いでしょう。

そして何より、家族信託の欠点は何ですか?という核心に迫る問い。この記事では、そんなあなたのモヤモヤを全部吹き飛ばしますよ!

この記事のポイント
  • 家族信託のメリットと後見制度との明確な違い
  • 見落としがちな欠点や危険性、そして後悔しないための対策
  • 手続きの流れや自分で進める場合の注意点
  • 気になる費用の相場と相談先の選び方
コンサルタント @KAZU

家族信託、気になりますよね!でも、情報が多すぎて何が本当かわからなくなる…。僕もたくさんのお客様から同じ悩みを聞いてきました。この記事では、15年以上の実務経験で見てきた成功例や失敗談を交え、あなたの疑問に全部お答えします。読み終わる頃には、家族信託のプロに一歩近づけるはずですよ!

目次

家族信託の基本と知っておくべき注意点

家族信託の基本と知っておくべき注意点

日本の高齢者と認知症患者の現状

日本の総務省統計局によると、2023年9月時点で65歳以上の高齢者人口は3,623万人となり、総人口に占める割合は29.1%と過去最高を更新しました。

さらに、厚生労働省の推計では、2025年には高齢者の約5人に1人にあたる約700万人が認知症になると予測されています。判断能力の低下による資産凍結リスクは、もはや他人事ではなく、全ての家族が向き合うべき社会的な課題となっているのが現状です。

(出典:総務省統計局「統計からみた我が国の高齢者」 / 厚生労働省「認知症施策」

家族信託と後見人の違いを解説

「家族信託と成年後見制度、どっちも財産管理の仕組みみたいだけど、何が違うの?」これ、本当によく聞かれる質問ナンバーワンです!一言でいうと、「始まるタイミング」と「財産管理の自由度」が全く違います。

成年後見制度とは?

成年後見制度は、ご本人の判断能力が低下したに、家庭裁判所が選んだ後見人が財産を「守る」ための制度です。あくまでご本人の財産を現状維持することが目的なので、不動産を売却して介護費用に充てるといった積極的な資産活用は、裁判所の許可がないと難しいんです。僕のお客様でも、お父様が認知症になった後、実家を売却しようとしたら手続きがすごく大変だった…というケースがありました。

成年後見制度の利用実態データ

最高裁判所が公表している「成年後見関係事件の概況」によると、成年後見制度の利用開始申立て件数は年間約3万5千件から4万件で推移しています。注目すべきは、後見人等に誰が選任されているかという点です。

令和4年のデータでは、司法書士・弁護士・社会福祉士などの専門職が全体の約8割を占めており、親族が選任されるケースは約2割にとどまっています。

これは、財産管理の複雑さや親族間の対立を避けるため、家庭裁判所が中立的な専門家を選任する傾向が強いことを示しています。

(出典:裁判所「成年後見関係事件の概況」

家族信託とは?

一方、家族信託は、ご本人が元気なうちに、信頼できる家族(受託者)と契約を結び、財産の管理や運用を「託す」制度です。あらかじめ「介護費用が必要になったら不動産を売却する」といった目的を決めておけるので、いざという時にスムーズかつ柔軟な財産管理が可能になります。まさに、家族による家族のためのオーダーメイドの財産管理制度なんですね。

この違いを分かりやすく表にまとめてみました。

項目家族信託成年後見制度
開始タイミング本人が元気なうち(判断能力があるうち)本人の判断能力が低下した後
目的柔軟な財産管理・資産承継本人の財産保護・身上監護
管理者家族など信頼できる人(受託者)家庭裁判所が選任(後見人)
資産活用契約内容に基づき柔軟に可能(不動産売却など)原則として現状維持(積極的な活用は困難)
身上監護できないできる(介護施設の契約など)

このように、成年後見制度が「守り」の制度なら、家族信託は「攻め」の財産管理もできる、と考えるとイメージしやすいかもしれませんね。

家族信託の欠点は何ですか?

家族信託の欠点は何ですか?

さて、柔軟で良さそうに見える家族信託ですが、もちろん万能ではありません。「家族信託の欠点は何ですか?」というご質問も、非常に大切です。メリットばかり見て飛びつくと、後で「こんなはずじゃなかった…」となりかねませんからね。

僕が考える最大の欠点は、「身上監護ができない」ということです。

身上監護とは、介護サービスの契約を結んだり、施設への入所手続きをしたり、入院手続きをするといった、ご本人の生活や療養に関する法律行為のことです。家族信託はあくまで財産の管理を託す制度なので、これらの行為を受託者が代理することはできません。

以前、こんなお客様がいらっしゃいました。お父様と家族信託契約を結び、財産管理は息子さん(受託者)がバッチリ行える状態でした。しかし、お父様が施設に入所することになった際、契約手続きの段階で「息子さんには代理権がありませんね」と指摘されてしまったのです。

結局、このケースでは任意後見契約も併用することで対応しました。

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もう一つの欠点は、直接的な節税効果はないという点です。家族信託は財産の所有権が移るわけではなく、あくまで管理権が移るだけ。財産から生じる利益を受け取るのは受益者(多くの場合は本人)なので、相続税や贈与税が安くなる、ということは基本的にはありません。

「相続税対策に」と考えている場合は、他の制度と組み合わせる必要がありますね。

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【家族信託の主な欠点】

  • 身上監護ができない: 介護施設の契約などは代理できない。
  • 税務上のメリットはない: 相続税などの節税効果は直接にはない。
  • 損益通算ができない: 信託財産から生じた損失を他の所得と合算できない。

これらの欠点を理解した上で、ご自身の家族の状況に本当に合っているのかを検討することが重要です。

家族信託が危険といわれる理由

ネットで検索すると「家族信託は危険」なんて言葉が出てきて、ドキッとしますよね。これは一体どういうことなのでしょうか。僕の経験上、危険と言われる理由は主に2つあります。

1. 受託者の権限が強すぎることによるリスク

家族信託では、財産の管理・処分権限が受託者である家族の一人に集中します。信頼しているからこそ託すわけですが、残念ながら、その権限を悪用してしまうケースもゼロではありません。例えば、受託者が信託されたお金を自分の事業に使い込んでしまったり…なんてことも考えられます。

また、悪気がなくても、受託者が他の家族に財産の状況をしっかり報告しないことで、「兄さん(受託者)が親の財産を独り占めしているんじゃないか?」という疑念が生まれ、家族関係にヒビが入ることもあります。これは本当に悲しいケースです。

2. 専門知識のないまま契約書を作ってしまうリスク

「費用を節約したいから」と、インターネットの雛形を参考に自作の契約書を作る方もいらっしゃいます。しかし、これは非常に危険です。信託契約書は、ご家族の状況や財産内容に合わせて作るオーダーメイドのものです。内容に不備があると、いざという時に銀行口座からお金が下ろせなかったり、不動産が売却できなかったりする可能性があります。

一度判断能力が低下してしまうと、契約内容の修正はできません。安易な契約書作成が、かえって家族を危険に晒すことになりかねないのです。

これらの「危険」は、適切な設計と専門家の関与で十分に回避できます。受託者を監督する「信託監督人」を置いたり、家族への定期的な報告を契約書に義務付けたりすることで、リスクをコントロールすることが可能です。

家族信託で後悔しないためのポイント

家族信託で後悔しないためのポイント

「じゃあ、どうすれば後悔しないの?」と思いますよね。僕がいつもお客様にお伝えしている、最も重要なポイントは2つです。

一つ目は、「家族全員で、とことん話し合うこと」です。

家族信託は「家族」の信託です。財産を託すご本人(委託者)と、託される人(受託者)だけで話を進めてしまうと、他の家族は「何も聞かされていない」と不公平感を抱きがちです。これが後々のトラブル、いわゆる「争族」の火種になります。

僕が担当したあるご家族は、相続で揉めた経験から「自分たちの代では絶対に揉めたくない」という強い想いがありました。そこで、ご両親と3人のお子様、全員で何度も家族会議を開きました。なぜ信託が必要なのか、誰が受託者になるのが良いか、財産をどうしていきたいか…。

時間はかかりましたが、全員が納得する形で信託契約を結ぶことができ、今では「あの時ちゃんと話しておいて本当に良かった」とおっしゃっています。

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二つ目のポイントは、「必ず専門家に相談すること」です。

先ほどもお話しした通り、家族信託の契約書は非常に専門的です。法律や税務の知識はもちろん、不動産が絡む場合は登記の知識も必要になります。ご家族の想いを法的に有効な形に落とし込み、将来起こりうるリスクを先回りして潰しておくのが僕たち専門家の仕事です。

【後悔しないための2大ポイント】

  1. 家族会議を開く: なぜ信託をしたいのか、想いを共有し、全員の合意を得る。
  2. 専門家に相談する: 弁護士や司法書士など、家族信託に精通した専門家と一緒に契約内容を設計する。

この2つを徹底するだけでも、後悔するリスクはぐっと減らせますよ。

家庭裁判所における遺産相続トラブルの実態

最高裁判所の司法統計によると、遺産分割をめぐって家庭裁判所に持ち込まれる調停や審判の件数(「遺産分割事件」)は、毎年1万件を超えています。さらに注目すべきは、その内訳です。

遺産総額が5,000万円以下の事件が全体の約77%を占めており、その中でも1,000万円以下の事件が約34%と最も多くなっています。「うちは財産が少ないから大丈夫」という考えが、実は最も危険な「争族」の入り口になり得ることを、このデータは示唆しています。

(出典:裁判所 司法統計年報(令和3年度)「第19表 遺産分割事件のうち認容・調停成立件数ー遺産価額別」

家族信託が必要ないケースとは

ここまで家族信託の話をしてきましたが、「ちょっと待って、そもそもウチには必要ないかも?」と感じた方もいるかもしれません。その通り、どんなご家庭にも必要なわけではありません。無理に信託を組む必要がないケースももちろんあります。

例えば、以下のようなケースです。

  • 管理すべき財産が預貯金のみで、金額もそれほど多くない場合
  • 相続人が一人しかおらず、将来の相続で揉める可能性が極めて低い場合
  • ご本人が「自分の死後のことは遺言書で指定できれば十分」と考えている場合

家族信託は、財産管理が複雑になったり、認知症などで意思決定ができなくなったりするリスクに備えるための仕組みです。財産構成がシンプルで、家族関係も良好であれば、高額な費用をかけて信託を組成するメリットは少ないかもしれません。

以前、ご相談に来られたお客様で、財産はお住まいのマンションと少しの預貯金、相続人は奥様だけという方がいました。その方には、家族信託ではなく、まずは奥様に全財産を相続させる旨の公正証書遺言を作成することをお勧めしました。

また、ご自身の想いを伝えるためにエンディングノートを併用することも提案しました。ご本人の希望と状況を伺った上で、最適な選択肢を提案するのも専門家の役割だと思っています。

大切なのは、ご自身の家族にとって、どんな備えが本当に必要なのかを見極めることです。流行っているから、勧められたから、という理由だけで始めるのは避けた方が良いでしょう。

コンサルタント @KAZU

ここまで、家族信託の基本と注意点についてお話ししました。少し怖い話もありましたが、これは転ばぬ先の杖。リスクを知っておくことで、初めて万全の対策が取れます。大切なのは、ご家族の状況を客観的に見ること。次の章では、具体的な手続きや費用について、さらに詳しく解説していきますね!

家族信託の手続き・費用・相談先ガイド

家族信託の手続き・費用・相談先ガイド

家族信託の手続きと自分で行う方法

「よし、家族信託を検討してみよう!」となったら、次に気になるのが手続きの流れですよね。ここでは、一般的な手続きの流れと、それを自分で進める場合の注意点について解説します。

家族信託の一般的な手続きの流れ

  1. 専門家への相談・家族会議: まずは専門家に相談し、家族で目的や内容を話し合います。
  2. 信託契約書案の作成: 話し合った内容を元に、専門家が契約書の案を作成します。
  3. 契約書内容の確認・調整: ご家族全員で契約書案を確認し、修正や調整を行います。
  4. 公正証書の作成: 内容が固まったら、公証役場で契約書を公正証書にします。信頼性が高まり、後の手続きもスムーズです。
  5. 信託口口座の開設: 金銭を信託する場合、金融機関で受託者名義の「信託口口座」を開設し、そこにお金を移します。
  6. 不動産の信託登記: 不動産を信託する場合、法務局で所有権移転および信託の登記手続きが必要です。
  7. 信託の開始: 全ての手続きが完了したら、契約に基づき受託者による財産管理がスタートします。

手続きを自分で行うのは可能?

結論から言うと、不可能ではありませんが、極めてハードルが高いです。

特に難しいのが、①信託契約書の作成と、②信託口口座の開設、③不動産の信託登記です。契約書に法的な不備があれば、制度そのものが機能しない恐れがあります。また、多くの金融機関では、専門家が作成した公正証書がないと信託口口座の開設に応じてくれません。

僕のお客様にも、ご自身で手続きを進めようとした方がいました。ネットで雛形を探して契約書を作り、銀行に口座開設に行ったところ、「この契約書では受け付けられません」と何度も断られてしまい、最終的に僕のところに相談に来られました。時間も労力も、かなり無駄にしてしまったと悔やんでいらっしゃいましたね。

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不動産の登記手続きも非常に専門的です。時間と労力、そして何より確実性を考えると、初めから専門家に依頼するのが最も賢明な選択だと僕は思います。

参考情報サイト: 法務局「不動産登記の申請手続」
URL: https://houmukyoku.moj.go.jp/homu/fudousan3.html

家族信託の費用と毎年かかる費用

家族信託の費用と毎年かかる費用

さて、一番気になると言っても過言ではない、お金の話です。「家族信託って、結局いくらかかるの?」という疑問にお答えします。

費用は大きく分けて「初期費用(組成費用)」と「ランニングコスト」があります。

初期費用(組成費用)

これは、信託契約を始めるまでにかかる費用のことです。信託する財産の額によって変動しますが、一般的には信託財産評価額の1%前後が目安と言われています。具体的には、以下のような内訳になります。

費用の種類費用の目安内容
専門家への報酬30万円~100万円以上コンサルティング、契約書作成など。財産額や内容の複雑さによる。
公正証書作成手数料3万円~10万円程度公証役場に支払う手数料。信託財産の価額に応じて決まる。
登録免許税(不動産)固定資産税評価額の0.3~0.4%不動産を信託登記する際の税金。
その他実費数千円~戸籍謄本や印鑑証明書の取得費用など。

例えば、評価額5,000万円の不動産と1,000万円の現金を信託する場合、専門家報酬だけで50~60万円、それに加えて公証人手数料や登録免許税がかかる、というイメージです。

ランニングコスト(毎年かかる費用)

家族信託の大きなメリットは、基本的にランニングコストがかからないことです。受託者は家族なので、高額な報酬は発生しません(もちろん、契約でお小遣い程度の報酬を定めることは可能です)。

ただし、受託者の負担を軽減するためや、財産管理を監督してもらうために、弁護士や司法書士などの専門家と顧問契約を結び、「信託監督人」や「受益者代理人」に就任してもらう場合は、年間数万円~十数万円の費用が毎年かかります。これは必要に応じて検討するオプションですね。

家族信託はどこで頼めばいいですか?

「専門家に頼むのが良いのはわかったけど、その専門家って誰?」となりますよね。家族信託の相談ができる主な専門家は、弁護士、司法書士、そして信託銀行などです。

【主な相談先と特徴】

  • 弁護士: 法律の専門家。将来、親族間で揉める可能性が高い、いわゆる「争族」のリスクがある場合に特に頼りになります。裁判になった場合も代理人になれます。
  • 司法書士: 登記の専門家。僕も司法書士です。不動産を信託財産に含める場合の信託登記手続きを得意としています。比較的、相談のハードルが低いと感じる方も多いようです。
  • 税理士: 税金の専門家。相続税や贈与税など、税務面でのアドバイスが欲しい場合に心強い存在です。ただし、信託契約書の作成や登記はできないため、司法書士などと連携して進めることになります。
  • 信託銀行: 金融機関。資産運用のプロですが、どちらかというとパッケージ化された商品が多く、完全オーダーメイドの柔軟な設計は苦手な場合があります。

誰に頼むべきか、というのはご家庭の状況によって異なります。僕からのアドバイスとしては、「家族信託の組成実績が豊富な専門家」を選ぶことです。ホームページなどで実績を確認したり、初回の無料相談などを活用して、信頼できる人かどうかを見極めるのが良いでしょう。

家族信託の相談は銀行でできる?

「普段使っている銀行で相談できたら楽なのに」と思いますよね。はい、信託銀行や一部の大手銀行では、家族信託に関する相談窓口を設けています。

銀行に相談するメリットは、やはり安心感でしょう。大きな組織ですし、資金管理の面では信頼がおけます。特に、遺言の代わりとしてお金を預ける「遺言代用信託」のような金融商品は、銀行が得意とするところです。

一方で、注意点もあります。前述の通り、銀行が提供するのは商事信託(ビジネスとしての信託)であり、彼らの商品ラインナップの中から提案されることがほとんどです。

そのため、ご家族の状況に合わせた100%オーダーメイドの柔軟な設計は難しい場合があります。また、信託財産に不動産を含めたい場合、対応していない銀行も少なくありません。

「まずは話を聞いてみたい」という段階であれば、銀行の窓口を訪れてみるのも一つの手です。ただし、そこで提案されたものが全てだと思わず、必ず弁護士や司法書士といった他の専門家の意見も聞いて比較検討することをお勧めします。

ゆうちょ銀行の家族信託サービス

「一番身近なゆうちょ銀行ではどうなの?」という声もよく聞きますね。

結論から言うと、2025年8月現在、ゆうちょ銀行では、司法書士などが作成するオーダーメイドの家族信託契約に対応した「信託口口座」の開設は、一般的に取り扱っていません。

ゆうちょ銀行が提供しているのは、主に「遺言代用贈与信託」といった金融商品です。これは、生前に契約しておくことで、亡くなった際に指定した受取人へスムーズにお金を渡せる仕組みで、家族信託とは少し性質が異なります。

したがって、「親の認知症に備えて、不動産や預貯金の管理を柔軟に任せたい」という目的で家族信託を検討している場合、現時点ではゆうちょ銀行をメインの相談先や口座開設先として考えるのは難しいかもしれません。

信託口口座を開設できる金融機関は限られており、対応も各行で異なります。家族信託を依頼する専門家に相談すれば、口座開設が可能な金融機関を紹介してもらえることがほとんどですので、まずは専門家探しから始めるのが近道ですね。

家族信託に関するよくある質問

家族信託の最大の欠点は何ですか?

家族信託の最大の欠点は、財産の管理はできても「身上監護」ができない点です。具体的には、受託者(財産を託された家族)が本人に代わって介護サービスの契約を結んだり、施設への入所手続きを行ったりすることはできません。あくまで財産管理に特化した制度です。

家族信託は「危険」と言われることがあるのはなぜですか?

主に2つの理由があります。一つは、財産管理の権限が受託者である家族の一人に集中するため、権限を悪用されたり、他の家族から不満が出たりするリスクがあることです。もう一つは、専門知識がないままインターネットの雛形などで不備のある契約書を自作してしまい、いざという時に機能しない危険性があるためです。

家族信託を始めるには、どれくらいの費用がかかりますか?

費用の目安は、信託する財産評価額の1%前後です。これには、契約書作成などを行う専門家への報酬(30万円~)や、公証役場で公正証書を作成する手数料、不動産があれば登録免許税などが含まれます。基本的に費用は契約を始める際の初期費用のみで、毎年かかるランニングコストは原則としてありません。

家族信託は誰に相談すれば良いのでしょうか?

弁護士、司法書士、税理士、信託銀行などが主な相談先です。特に、不動産を含む場合は登記の専門家である司法書士、将来の親族間トラブルが心配な場合は弁護士など、ご自身の状況に合わせて「家族信託の実績が豊富な専門家」を選ぶことが重要です。

どのような場合に家族信託は必要ないと考えられますか?

管理すべき財産が預貯金のみで少額の場合や、相続人が一人しかおらず将来揉める可能性が極めて低い場合などです。財産構成がシンプルで家族関係も良好であれば、高額な費用をかけて信託を組むメリットは少ないかもしれません。その場合は遺言

まとめ:専門家と進める家族信託

まとめ:専門家と進める家族信託

お疲れ様でした!今回は家族信託について、かなり詳しく解説してきましたが、最後に大切なポイントをリストでおさらいしておきましょう。

  • 家族信託は元気なうちから始められる柔軟な財産管理の仕組み
  • 成年後見制度との違いは開始タイミングと資産活用の自由度
  • 最大の欠点は介護施設の契約など「身上監護」ができないこと
  • 受託者の権限濫用や家族トラブルが「危険」といわれる主な理由
  • 後悔しないためには家族全員での話し合いと専門家への相談が不可欠
  • 財産がシンプルなら遺言書など他の方法が適している場合もある
  • 手続きは複雑なため専門家に依頼するのが最も安全で確実
  • 初期費用は財産額の1%前後が目安でランニングコストは基本ゼロ
  • 相談先は弁護士や司法書士など実績豊富な専門家を選ぶのが重要
  • 銀行は安心感があるがオーダーメイドの設計は苦手な場合がある
  • ゆうちょ銀行ではオーダーメイドの家族信託の取り扱いは限定的
  • 信託契約書はインターネットの雛形に頼らず専門家と作成する
  • 不動産を信託する場合は法務局での信託登記が必須
  • 金銭を信託する場合は信託口口座を開設して分別管理する
  • 家族信託は節税目的の制度ではないことを理解しておく
コンサルタント @KAZU

家族信託は、正しく使えば、親の想いを未来に繋ぎ、家族を笑顔にするための本当に素晴らしい制度です。でも、少しボタンを掛け違うと、かえってトラブルの原因にもなりかねません。この記事が、あなたの家族にとって最善の選択をするための一助となれば、僕にとってこれ以上嬉しいことはありません。

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この記事を書いた専門家

保有資格: 相続診断士 / 宅地建物取引士 / AFP(日本FP協会認定)など20種以上

不動産・金融業界で15年以上の実務経験、1,500件以上の相談実績を持つ相続・終活・不動産相続のプロフェッショナル。法律・税務・介護の専門家と連携し、ご家族に寄り添った円満な終活・相続を実現します。

▶︎ 詳しいプロフィールは下記リンクマークから

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