
親の財産をめぐって兄弟が揉めた…そんな話、他人事ではありませんよね。
でも、「遺言書書き方がわからない」「何から始めたらいいのか不安」と感じて手が止まってしまう方も多いんです。
しかも、自筆で手書きした遺言書は、書き方にミスがあると無効になることもあるため、慎重さが求められます。
実は、遺言書は自分で作成できますか?という疑問に答える前に、「遺言書にはどんな内容を書けばいいですか?」という基本を押さえる必要があるんです。
この記事では、遺言書書き方の基本から、全財産を子供に渡すケース、相続させない方法、法務局や公正証書の使い分けまでを丁寧に解説していきます。
最も簡単な遺言書は?という素朴な疑問から、遺言書 用紙 ダウンロードまで、実際に使える知識が満載です。
あなたも、正しい遺言書書き方を知って、大切な家族を安心させてあげませんか?
- 自筆と公正証書それぞれの遺言書の書き方と特徴
- 法務局での保管制度やその利用方法
- 相続させないケースや全財産を特定の子供に残す方法
- 無効にならないための記載内容や形式的な注意点
遺言書書き方の基本と正しい手順

遺言書 書き方 自筆 手書きのルールとは
遺言書を手書きで作るときには、ルールを守らないと「無効」になる可能性があるということ、意外と知られていません。
実際、「とりあえずメモみたいに書いておけばいいんでしょ?」と軽く考えて書いた方の中には、せっかくの遺志が正式な遺言として認められなかったというケースもあります。
では、自筆証書遺言の正しい書き方とは、どういうものなのでしょうか。
まず、法律で定められた基本のポイントは以下の4つです。
項目 | 内容 |
---|---|
全文自筆 | パソコンではなく、全文を手書き(自筆)で記載する必要があります |
日付 | 「〇年〇月〇日」と日付を明確に書く必要があります(「令和〇年〇月吉日」は無効) |
氏名 | 戸籍通りの名前を署名することが必要です(ニックネームや旧姓は避けましょう) |
押印 | 必ず印鑑を押す必要があります。実印でなくても認印で問題ありませんが、スタンプ印は避けてください |
また、財産目録はパソコンやコピーでも大丈夫という点はよく勘違いされがちです。
私が聞いた話ですが、「全部手書きが必要」と思って、通帳の残高や不動産の住所を延々と手書きした結果、ミスが多くて家族に迷惑をかけたというご高齢の方がいました。
このような失敗を防ぐには、財産目録についてはコピーや印刷でOKということを正しく理解しておくことが大切です。
ただし、コピーを使う場合は各ページに必ず署名と押印が必要です。
書き間違いの訂正方法にも決まりがあります。
例えば「長女に相続」と書くつもりが「次女に相続」と書いてしまった場合、その箇所に二重線を引いただけでは無効になります。
このようなときは、次のように訂正します。
- 間違えた箇所に線を引く
- 余白に「○行目○字を〇〇に訂正」と訂正の内容を記載
- その近くに署名と押印
このルールを知らずに、「ボールペンで線を引いて消しただけ」の遺言が無効になった例もあります。
私の知人のお父さんがそうでした。
遺言書自体は残っていたのに、肝心な部分の訂正が正しくなされておらず、結局家族の間で相続争いに発展してしまったそうです。
だからこそ、「なんとなく」で書かず、基本ルールをしっかり確認してから作成することがとても大切なのです。
こうしてルールを守っておけば、仮に家庭裁判所の検認手続きを受ける場合でも、スムーズに認められやすくなります。
次は、この自筆証書遺言のルールをふまえたうえで、そもそも遺言書って自分で作れるの?という疑問について解説していきますね。
遺言書は自分で作成できますか?の答え

はい、遺言書は自分で作成することが可能です。
ただし、「可能」と「安全に有効な形で作成できるか」は、別の話になります。
例えば、自筆証書遺言は、誰でも紙とペンさえあれば書けるという気軽さがあります。
実際、多くの方が「専門家に依頼するほどでもない」「お金をかけたくない」といった理由から、自分ひとりで遺言書を書いています。
しかしながら、形式的なミスがあるとすべてが無効になってしまうのが、この自筆方式の落とし穴です。
私が以前聞いた話では、70代の男性が、「子どもたちにはすべて平等に分けてほしい」とだけ書いたメモのような遺言を残して亡くなったことがありました。
ところが、いざそのメモを見た法務局では「これは正式な遺言書ではない」と判断されてしまい、結局、相続人同士の争いが長引いてしまったそうです。
内容の記載も曖昧で、日付も不明確、押印もなかったことが原因でした。
ですから、「書くだけならできる」けれど「ちゃんとしたものに仕上げるには準備が必要」だと考えていただくのがよいかと思います。
以下に、自分で作る場合と専門家に依頼する場合の違いを簡単にまとめました。
比較項目 | 自筆証書遺言(自分で作成) | 公正証書遺言(専門家+公証役場) |
---|---|---|
費用 | 数百円程度(紙・印鑑代など) | 数万円~10万円程度 |
手軽さ | 家で書ける、いつでも可能 | 予約・手続きが必要 |
法的安全性 | 形式ミスで無効になるリスクが高い | 公証人が作成するので安全 |
保管 | 自宅または法務局で保管可能 | 公証役場で保管 |
家庭裁判所の検認 | 必要(自筆) | 不要(公正証書) |
このように、自筆での作成には「安く・手軽」なメリットがある一方で、ミスによるリスクが大きいという側面もあります。
だからこそ、「どうしても費用を抑えたい」「簡易的にメッセージを残したい」ときには自筆方式を。
そして「確実にトラブルを避けたい」「財産が多い」「相続人が複雑」な場合には、公正証書遺言をおすすめしたいところです。
それでも「どうしても自筆で」と考える場合には、法務局の自筆証書遺言保管制度を利用すると安心です。
法務局で預かってもらえるうえ、紛失や改ざんのリスクを防げるという利点があります。
この保管制度については、次の見出し「遺言書 書き方 法務局での注意点」で詳しく解説していきますね。
自筆で遺言するときの例文は?
自筆証書遺言を作成するにあたって、一番悩むのが「どう書けばいいの?」ということではないでしょうか。
内容の正しさはもちろん、形式を守って書かないと、せっかく書いた遺言書が無効になる可能性があるので注意が必要です。
まず、基本の構成から確認してみましょう。
自筆証書遺言の形式は、以下のような流れで書くのが一般的です。
【自筆証書遺言の基本構成】
- タイトル(例:遺言書)
- 遺言者の意思の明示
- 相続または遺贈に関する内容
- 日付の記載(例:令和7年6月20日)
- 氏名と押印
では、実際の例文をひとつご紹介しますね。
【例文】
私は、以下のとおり遺言書を作成します。
私のすべての預貯金、不動産その他の財産は、長男○○○○(生年月日:昭和〇年〇月〇日)に相続させます。
なお、長女○○○○(生年月日:昭和〇年〇月〇日)には、感謝の気持ちとして、○○銀行の普通預金口座(口座番号:XXXXXXX)にある金500万円を遺贈いたします。
以上が私の遺志であり、この内容が確実に実行されることを望みます。
令和7年6月20日
大阪府大阪市○○町○丁目○番地
山田 太郎(実印押印)
こうした形で、財産の記載はできるだけ具体的に、誰に何を渡すのかをはっきり明記することが重要です。
ここでひとつ、よくある失敗談を紹介します。
知人の叔父さんが亡くなった際、「長男に土地を相続させる」と書いた遺言書が見つかりました。
ところが、どの土地かが書かれておらず、地番も面積も明記されていなかったため、裁判所では「遺言の対象が特定できない」として無効扱いになってしまったんです。
このように、書き方の注意点は次の通りです。
- 財産は「種類・金額・場所・口座番号」などを明記する
- 受け取る人は「氏名・生年月日」などで特定する
- 曖昧な表現(例:「感謝の気持ちで少しだけ」など)は避ける
また、書いた後に加筆や修正をしたくなることもありますが、その際は正式な方法で訂正しないと、訂正した部分ごと無効になります。
この訂正方法については「遺言書 書き方 法務局での注意点」の項目で詳しくご紹介しますね。
それでは次に、「そもそも遺言書にはどんな内容を書けばいいの?」という点についても掘り下げてみましょう。
遺言書にはどんな内容を書けばいいですか?

遺言書には、「財産をどう分けるか」だけでなく、家族への気持ちやお願いごとも含めることができます。
ただし、法的な効力がある部分と、気持ちとして残すだけの部分(付言事項)はきちんと区別して書く必要があります。
ここでは、遺言書に記載すべき主要な内容を5つのカテゴリに分けてご紹介します。
内容区分 | 具体的な記載例 | 法的効力 |
---|---|---|
相続分の指定 | 「全財産を長男に相続させる」 | あり |
遺贈の指示 | 「金500万円を孫に遺贈する」 | あり |
相続人の廃除・排除 | 「次男には相続させない」 | 申立て必要 |
付言事項(メッセージ) | 「今まで育ててくれてありがとう」 | なし(感情的効力) |
執行者の指定 | 「遺言執行者に○○○○を指名する」 | あり |
たとえば、相続人にあえて何も相続させたくない場合は、「遺言書 書き方 相続 させない場合の記載」のルールに従う必要があります。
単に名前を外すだけではなく、理由や背景をしっかり記載し、できれば家庭裁判所に「相続人の廃除」を申し立てる形にするのが安全です。
ちなみに、実際に起こった失敗談としては、母親が「長男には全財産をあげたい。でも次男にも悪いから、車くらい渡したい」と手紙に書いた例があります。
ところが、その文面が法的には遺言と認められず、結果として法定相続分での分配となってしまいました。
このようなケースでは、遺言書としての形式や必要な要素をきちんと満たしていなかったことが原因でした。
また、近年は、相続財産が不動産や預貯金だけでなく、株式・暗号資産・デジタル資産に及ぶケースも増えてきています。
これらをしっかりとリストアップし、誰に、どう扱ってほしいかを丁寧に記載しておくことがトラブルを防ぐ鍵となります。
こうして見ると、「遺言書=財産分け」とだけ考えていると、大切な部分を見落としてしまうこともあります。
次は、そのような注意点をふまえて、法務局を利用して遺言書を作成・保管する方法についてご説明していきます。
遺言書書き方と法務局での手続き

遺言書 書き方 法務局での注意点
自筆証書遺言を法務局に預けることで、紛失や改ざんの心配がなくなるという安心感があります。
ただし、利用する際にはいくつかの重要な注意点があるんです。
ここでは、法務局で遺言書を保管してもらう際に、見落としがちなポイントや失敗しやすい部分をわかりやすく解説していきますね。
まず、押さえておきたいのが「遺言書の保管制度=内容のチェックをしてくれるわけではない」ということです。
これ、意外と勘違いされている方が多いんです。
例えば、「法務局に預けたから、内容的にもちゃんと有効なはず!」と思い込んでしまうケース。
ですが、法務局は遺言書の形式(自筆か、押印・日付の有無など)だけを確認するものであり、内容が法的に正しいかどうかまでは見てくれません。
実際にあった事例では、遺言書に「預金全額を〇〇に渡す」とだけ書かれていて、口座番号が書かれていなかったため、家族間で「どの口座?どの銀行?」と揉めたという話がありました。
このようなトラブルを避けるためには、以下の点に特に注意する必要があります。
【法務局で保管する前の注意点】
チェック項目 | 解説 |
---|---|
全文が自筆か | 自筆証書遺言は全文が手書きである必要があります(財産目録を除く) |
日付が明確に記載されているか | 「令和〇年〇月〇日」と日まで記載していないと無効になる可能性 |
氏名と押印があるか | 押印は認印でもOKですが、シャチハタはNGです |
財産の記載が具体的か | 「預金」だけではなく、銀行名・支店名・口座番号まで書くのがベスト |
誰に何を渡すかが明確か | 受取人の氏名・生年月日を書くことでトラブルを防げます |
また、手続きの際には「本人が必ず出向く必要がある」という点にも注意してください。
ご家族や代理人では手続きできません。
私の知人が高齢の母親のために「一緒に書いてあげて、代理で出せばいいでしょ?」と法務局に行ったのですが、「ご本人じゃないとダメです」と言われて手間が倍になったとのことでした。
さらに、保管された遺言書は家庭裁判所の検認が不要になるのが大きなメリットです。
ですが、それでも相続手続き時には法務局が発行する「遺言書情報証明書」が必要となりますので、完全に手間ゼロというわけではありません。
このように、「書き方が正しければ安心」ではなく、「保管前の確認が命」ということを意識しておく必要があります。
それでは次に、実際にこの制度を利用する際に「どんな流れで提出すればいいの?」という手続きの詳細を見ていきましょう。
遺言書 法務局に提出する流れ

法務局への提出は、思ったよりもシンプルですが、事前準備がカギです。
書いた遺言書をただ封筒に入れて持って行けばいい、というわけではありませんので、ひとつずつ手順を追って確認していきましょう。
まず、以下が法務局へ遺言書を提出する一連の流れになります。
【自筆証書遺言を法務局に提出する流れ】
- 事前予約をする
- 必要書類を準備する
- 指定された法務局に本人が出向く
- 保管申請を行う
- 受理証を受け取る
それぞれのステップをもう少し詳しく解説しますね。
① 事前予約をする
法務局では、遺言書の保管業務は事前予約制になっています。
希望する法務局に電話かオンラインで予約しましょう。
どの法務局でもよいわけではなく、「保管業務に対応している法務局」に限定されていますので注意が必要です。
② 必要書類を準備する
持参する書類は以下の通りです。
- 遺言書(封筒に入れずに裸で提出)
- 本人確認書類(運転免許証、マイナンバーカードなど)
- 住民票の写し(発行から3ヶ月以内)
封筒に入れてしまうと、その場で中身を確認できないためNGです。
また、住民票は戸籍ではなく、あくまで現住所の確認のためのものです。
③ 法務局に本人が出向く
当日は予約時間に、本人が直接法務局の窓口に行きます。
代理人による提出は認められていません。
これは、遺言書の「真意」を確認するためにも、非常に重要なポイントです。
④ 保管申請を行う
書類の確認が済んだら、保管申請書を記入します。
この時点で、遺言書の内容のチェックはされません。あくまで形式的な確認です。
⑤ 受理証を受け取る
すべてが問題なければ、「保管証」または「遺言書保管所の証明書」を発行してもらえます。
この証明書は、後に相続手続きをする際に重要な書類となるので、大切に保管してください。
費用についても簡単にまとめておきます。
内容 | 金額(税込) |
---|---|
保管申請手数料 | 3,900円 |
閲覧(画像で確認) | 1,400円 |
証明書交付 | 800円(1通) |
実際にこの制度を利用したある50代の男性は、「遺言書を金庫に入れていたら、火災で金庫ごと焼けた。これを機に法務局に預けて安心できた」とおっしゃっていました。
災害や盗難リスクがある自宅保管より、国家機関で保管される安心感はやはり大きいですよね。
このように、手続き自体は難しくないものの、準備とルールの理解が何より重要です。
次は、法務局での保管と並んでよく比較される「公正証書遺言」について、その違いや活用ポイントを見ていきましょう。
遺言書 用紙 ダウンロード方法と注意
最近では、遺言書の用紙がネットで簡単にダウンロードできるようになりました。
「どこで手に入るのか?」「自由に書いていいのか?」といった疑問を持つ方も多いと思います。
まず、遺言書に専用の用紙は法律で決まっていません。
ですので、文房具店で売っている白紙の便せんやA4コピー用紙でも問題ありません。
ただし、書きやすくて見やすい罫線付きのテンプレートを使うことで、書き間違いや抜け漏れを防げるので、最近は多くの方が「ダウンロード用紙」を活用している印象です。
主なダウンロード先は以下の通りです。
【遺言書用紙のダウンロード先一覧】
サイト名 | 特徴 | ダウンロード形式 |
---|---|---|
法務省公式サイト | 信頼性が高く、記載例付き | |
各自治体の終活支援ページ | 地域情報もあわせて入手可能 | PDF/Word |
民間の法律事務所・行政書士サイト | 実務に沿った構成・注意点解説付き | PDF/Word |
それでは、ダウンロードした遺言書用紙を使う際の注意点をしっかり確認しておきましょう。
まず大前提として、「自筆証書遺言」は全文を自筆で書かなければ無効になるという点です。
たとえテンプレートがあっても、ワープロ打ちや印刷してしまうと、その部分が効力を持たなくなります。
私の知人でも、遺言書の一部をワープロで書いてしまい、相続の際に「無効扱い」になってトラブルになったというケースがありました。
次に注意したいのが「記載する項目」です。
最低限、以下の要素が正しく書かれている必要があります。
【遺言書に必要な記載内容】
- 作成した日付(例:令和7年6月20日)
- 氏名
- 押印(シャチハタ不可)
- 財産の内容と所在
- 誰に何を渡すか(相続または遺贈)
特に日付の記載ミスは非常に多く、例えば「令和〇年6月吉日」といった曖昧な書き方では無効となる可能性があります。
また、押印の押し忘れも意外と多いので要注意です。
テンプレートの便利さに甘えすぎて、内容を十分に見直さないまま提出してしまう方もいます。
ですので、用紙を使う前に「内容の正確さと法的な形式」をしっかり確認することが大切です。
それでは、実際にダウンロード用紙を活用して、全財産を子供に残すようなケースについて、具体的にどう書けばよいかを次に見ていきましょう。
遺言書 書き方 全財産 子供への残し方

「自分の全財産を子供に渡したい」というのは、多くの親が願うことですよね。
ただ、「全財産を長男に」と一文だけ書いた遺言書では、実際の相続手続きでトラブルが起こる可能性が高いんです。
実際、あるご家庭で「すべて長男に相続させる」とだけ書かれた遺言書が見つかりました。
しかし、次男が「何の説明もない」と不満を持ち、家庭裁判所での調停に発展。
結果として、時間もお金もかかり、結局遺言書どおりにはならなかったというケースがあります。
このようなことを防ぐには、「具体的な財産を、誰に、どんな形で渡すか」まで明記する必要があります。
【記載例(具体的な内容)】
私の有する以下の財産を、長男〇〇(昭和◯年◯月◯日生)に相続させる。
・東京都港区◯丁目◯番地の自宅土地建物(固定資産税評価額:1,500万円)
・○○銀行△△支店の普通預金(口座番号1234567)残高すべて
・所有する国債(証券番号000-000-000)額面500万円上記財産のすべてを長男〇〇に相続させ、他の相続人に対しては特別受益を考慮しない。
このように、財産の種類・所在・評価額・受取人を明確に記載することで、相続手続きがスムーズになり、誤解も減ります。
また、法的には「遺贈」という形を使ってもOKですが、遺贈は相続人以外に渡す場合に使う用語なので、子供などの法定相続人には「相続させる」と記載する方が適切です。
ちなみに、「全財産」と書いても、実際には負債も含まれている場合があります。
つまり、マイナスの財産(借金)も相続されるリスクがあるので、「特定の財産に限定して相続させる」ほうが無難なケースもあります。
【「全財産を子供に残す」ときの注意点まとめ】
項目 | 注意点 |
---|---|
表現の仕方 | 「全財産を相続させる」は簡潔すぎて危険。詳細な記載が必要 |
財産の明記 | 預金・不動産・証券など具体的に書く |
押印・日付 | 押し忘れ・不明確な日付は無効の可能性あり |
他の相続人への配慮 | なぜ子供だけなのか、メモ書きなどで伝えることも有効 |
親としては「わが子にしっかり残してやりたい」という気持ちがあると思いますが、その思いがうまく伝わるように、形式だけでなく内容にも丁寧さが求められるんですよね。
では次に、このような自筆証書遺言の内容をもっと確実に法的に強めたいときに選ばれる「公正証書遺言」についてご紹介していきます。
遺言書 書き方 相続 させない場合の記載
「家族の誰かに相続させたくない」という思いがある方も、実は少なくありません。
それでも、口で言っただけでは無効ですし、うまく遺言書に記載しておかないと、逆に争いの火種になることもあります。
まず大切なのは、法定相続人の“相続する権利”は法律で守られているという点です。
ですので、単純に「〇〇には一切財産を相続させない」と書いただけでは、遺留分(いりゅうぶん)という最低限の取り分を請求される可能性があるんです。
例えば、以前知り合いの方がこんなことを話していました。
長男に家業を継がせたいから、「次男には一切財産を渡さない」と自筆証書遺言に書いたそうです。
ところが、遺言書にきちんとした理由や背景が書かれていなかったため、次男が遺留分侵害請求をしてきて、結果として長男が予定以上の財産を渡す羽目になったんです。
こういったトラブルを防ぐためには、以下のようなポイントを意識して記載することが重要です。
【相続させない場合に記載するポイント】
記載項目 | 説明 | 注意点 |
---|---|---|
該当者の氏名・続柄 | 誤認を防ぐために明確に | フルネーム+生年月日が望ましい |
相続させない理由 | 感情的ではなく、冷静に記載 | 「反抗的だった」などはNG |
遺留分の対処 | 相続させないだけでなく、遺留分請求も想定する | 除外の意思と理由をセットで書く |
さらに、以下のような文例も参考になります。
【記載例】
私の次男 〇〇(昭和◯年◯月◯日生)は、過去に多額の金銭援助を行ったこと、また長年にわたって家業を継ぐ意思がなかったため、相続財産を与えないものとする。
なお、遺留分についても主張しないことを強く希望する。
このように書いておくことで、「なぜ相続させないのか」の意思表示がはっきりし、トラブル予防に大きくつながります。
もちろん、最終的に遺留分の請求をされるかどうかは相手次第ですが、遺言にきちんとした記載があると、交渉や調停の場でこちらの主張が有利になることもあります。
また、自筆証書遺言でこのような記載をする際は、押印や日付の記入もれにも注意してください。
法的に有効でなければ、すべてが水の泡になってしまいます。
このように、感情的な一文で終わらせず、冷静で具体的な理由と共にしっかりと記載することが、円滑な相続手続きのためには欠かせません。
それでは次に、自筆証書遺言とよく比較される「公正証書遺言」との違いについて確認していきましょう。
遺言書 公正証書との違いと選び方

「遺言書は自分で書けるって聞いたけど、公正証書って何が違うの?」と思っている方も多いのではないでしょうか。
実際、自筆証書遺言と公正証書遺言には、費用・手間・安全性など、いくつもの違いがあるんです。
では、まず両者の違いをわかりやすく表にまとめてみましょう。
【自筆証書遺言と公正証書遺言の比較】
項目 | 自筆証書遺言 | 公正証書遺言 |
---|---|---|
作成方法 | 本人がすべて手書きで作成 | 公証人が聞き取り・作成 |
押印 | 必要(実印が望ましい) | 公証人立会いのもと押印 |
日付 | 手書きで明記が必要 | 公証人が記録 |
保管 | 自宅など(法務局保管も可) | 原本が公証役場で保管 |
家庭裁判所の検認 | 必要 | 不要 |
費用 | 無料~数百円 | 数万円(財産額で変動) |
安全性 | 紛失・改ざんリスクあり | 極めて高い |
それぞれのメリット・デメリットも見ておきましょう。
【自筆証書遺言のメリット・デメリット】
- メリット:費用がほぼかからず、いつでも書ける
- デメリット:形式不備や記載漏れが原因で無効になることが多い
【公正証書遺言のメリット・デメリット】
- メリット:法律の専門家が作成し、法的に最も強い効力を持つ
- デメリット:作成費用がかかり、手続きに時間がかかる
例えば、以前私が相談を受けた60代の女性のケースでは、家族が揉めないようにと思って自筆証書遺言を残されたそうです。
ところが、日付が曖昧だったり、押印がシャチハタだったために、家庭裁判所で無効と判断され、相続が大混乱に。
その後、「もし公正証書で残しておけば…」と悔やんでいたご家族の姿が忘れられません。
このようなことを防ぐためにも、財産額がある程度ある方や、相続で争いが予想される場合は、公正証書遺言の方が安心です。
一方、財産が少なくシンプルな内容なら、自筆証書遺言でも十分なケースもあります。
つまり、どちらを選ぶかは「あなたの財産の状況」と「家族構成・関係性」によって変わってくるということですね。
では次に、法務局での保管制度を活用した自筆証書遺言の提出手続きについて見ていきましょう。
最も簡単な遺言書は?その特徴と落とし穴
「とにかく簡単に、今すぐにでも遺言書を作成したい」という方には、自筆証書遺言が最も手軽な方法といえます。
自宅にある紙とペン、印鑑さえあれば始められて、費用も基本的にかかりません。
ですが、簡単さの裏には大きな注意点と落とし穴があることも、しっかり理解しておく必要があります。
まず、自筆証書遺言がなぜ最も簡単なのかをまとめると以下のようになります。
【自筆証書遺言の特徴まとめ】
項目 | 内容 |
---|---|
作成方法 | すべて本人が手書き(パソコン不可) |
必要なもの | 紙、ペン、押印(認印でもOKだが実印が望ましい) |
保管場所 | 自宅・法務局いずれも可(自己管理だと紛失リスクあり) |
費用 | 基本的に0円(法務局保管は1通3,900円) |
有効性 | 法的に有効だが、形式不備で無効になるリスクも大 |
たしかに手軽に作成できるのは大きな魅力です。
ただし、「書けばいいんでしょ?」という気持ちで適当に済ませてしまうと、あとから無効になるケースが多いのもこの方式なんです。
例えば以前、私の知人で80代の男性がこんな失敗をしました。
「急に体調が悪くなって…」と、急いでノートに財産を渡したい相手の名前と金額だけを書いたそうです。
けれど、日付の記載がなかったことと、押印がされていなかったことで、家庭裁判所の検認の際に正式な遺言と認められず無効に。
結果的に、その方の意向とは異なる形で相続が進んでしまいました。
ここで、自筆証書遺言の落とし穴を3つに絞ってお伝えします。
【簡単だけど落とし穴が多いポイント】
- 形式不備が命取りになる
→「日付」「署名」「押印」のいずれかが欠けると無効になる可能性が高いです。 - 財産の記載があいまいだとトラブルの元に
→「預金通帳」とだけ書かれていても、どの銀行・支店・口座かが不明だと遺言として機能しません。 - 保管方法によっては破棄・紛失・改ざんの恐れがある
→自宅に保管していた場合、相続人によって隠されたり、破られてしまうことも現実に起きています。
このようなリスクを避けたい場合には、法務局の自筆証書遺言保管制度を活用するのもおすすめです。
この制度なら、自筆で書いた遺言書を法務局に預けることができ、検認手続きが不要になるメリットがあります。
費用も1通3,900円とそこまで高くありませんし、安心感がグッと高まります。
つまり、最も簡単な遺言書=自筆証書遺言であることは間違いありません。
ただし、「簡単=安全・確実」ではないということを忘れないでください。
必要最低限のルールを押さえて、しっかり記載すべきこと(相続や遺贈の内容・日付・押印)を漏らさずに書くことが、何より大切です。
遺言書書き方の基本と注意点を総まとめ

- 遺言書は法的効力を持たせるために形式要件を守って作成する必要がある
- 自筆証書遺言は本人の手書きが原則で、日付・署名・押印が必須
- 財産の記載は具体的にしないと無効や争いのもとになる
- 相続させない場合は理由や法的手続きを明記する必要がある
- 公正証書遺言は公証人が関与し、信頼性と安全性が高い
- 自筆証書遺言は法務局で保管すると検認不要で手間が省ける
- 押印は実印が望ましく、印影が鮮明であることが求められる
- 日付は年月日を明記し、曖昧な表現は避けることが重要
- 用紙は市販やダウンロード可だが、形式不備に注意が必要
- 相続では遺留分にも配慮しないと紛争になる可能性がある
- 自分で書く場合でも内容の正確性と法的根拠の確認が必要
- 遺贈は相続人以外にも財産を遺せる手段として有効である
- 書き直す場合は新しい遺言書に「これ以前を破棄」と明記する
- 家庭裁判所の検認が必要な遺言書は相続開始後に手続きを要する
- 弁護士や司法書士に相談することでトラブルを未然に防げる
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