
「亡くなった親に多額の借金が発覚した…もしかしたら相続放棄できないかもしれない」そんな風に、インターネットの知恵袋で情報を探しながら、不安な夜を過ごしていませんか?親が借金を残して死んだら子供はどうするか、親の借金はどうすればいいのか、考えれば考えるほど頭が真っ白になりますよね。
結論から言うと、原則として、親の借金を理由に相続放棄ができないということはありません。法律で認められた正当な権利ですから、安心してください。
ただし、相続放棄が認められない事例も確かに存在します。特に、親の借金を知らなかった場合や、離婚した父親の借金、さらには親の死を知らなかった相続放棄といった複雑な状況では、手続きの進め方に注意が必要です。
万が一、相続放棄が認められない理由に該当する行動をうっかり取ってしまうと、借金の返済義務を負うことになりかねません。そうなると親の借金で自己破産…なんて最悪の事態も考えられます。
この記事では、相続の専門家である私が、親の借金は誰が返すのですか?といった基本的な疑問から、死んだ親の借金を調べる方法、そして巷で噂される相続放棄の抜け道はあるのか?といった点まで、親の借金相続放棄できないというあなたの悩みを解決するために、知恵袋よりも詳しく、分かりやすく解説していきます。
『親の借金かもしれない』と思った瞬間って、夜ひとりで考え込んでしまいますよね。今の状況を一度紙に書き出すようなつもりで、専門家に整理を手伝ってもらうのも一つの方法です。
\相続手続き・遺産分割・相続税などの総合相談サービス /
- 相続放棄が認められなくなる具体的なNG行動
- 故人の借金の有無を正確に調査する方法
- 3ヶ月の熟慮期間が過ぎてしまった場合の対処法
- 相続放棄すべきか、他の方法を検討すべきかの判断基準
コンサルタント @KAZUどうも!終活・相続の専門家、カズです!
親御さんの借金問題、本当に心中お察しします。僕もこれまで多くのご相談を受けてきましたが、皆さん最初は「どうしよう…」と途方に暮れていらっしゃいます。
でも、大丈夫。正しい知識を持って、一つずつ手順を踏めば、必ず道は開けます。この記事が、あなたの不安を少しでも和らげるお守り代わりになれば嬉しいです!
親の借金相続放棄できない知恵袋|基本と認められない例


年間26万件以上が相続放棄を選択
裁判所の司法統計によると、2022年(令和4年)に全国の家庭裁判所で受理された相続放棄の申述件数は260,494件にのぼり、10年前(2012年)の168,143件と比較して約1.5倍に増加しています。
これは、親の借金問題などで悩んだ末に、多くの方が法的な手続きを経て問題を解決していることを示すデータです。
相続放棄が認められない理由は何ですか?
「相続放棄をしたいのに、認められないことなんてあるの?」というご不安、とてもよく分かります。相続放棄は強力な法的効果を持つため、認められるためには厳格なルールを守る必要があります。認められない主な理由は、大きく分けて2つあります。
1. 法定単純承認が成立してしまった
最も大きな理由は「法定単純承認」(民法第921条)が成立してしまうケースです。これは、法律が「あなたは相続する意思があるとみなしますよ」と判断する特定の行動を取ってしまった状況を指します。
一度この状態になると、後から「やっぱりやめます」と相続放棄の申述をしても、原則として認められません。
具体的には、以下のような「処分行為」が該当します。
- 故人の預貯金を引き出して使用する(葬儀費用など一部例外あり)
- 故人名義の不動産や自動車を売却したり、名義変更したりする
- 故人が受け取るはずだった賃料や売掛金などを取り立てて受け取る
- 故人の借金を、故人の財産から返済する
- 故人の株式や投資信託を解約・売却する
要するに、故人の財産を自分のものとして扱った時点で、「相続します」と宣言したのと同じことになってしまうのです。
「保存行為」と「処分行為」の違い
相続財産を守るための行為(保存行為)は、法定単純承認にはあたらないとされています。例えば、「壊れそうな家屋の屋根を最低限修理する」「腐りやすい生鮮食品を捨てる」といった行為です。
しかし、この判断は非常に難しく、リフォームのように価値を高める行為は「処分行為」とみなされる可能性があります。判断に迷う場合は、絶対に手を付けず専門家に相談してください。
2. 熟慮期間を過ぎてしまった
もう一つの重要な理由が「熟慮期間の徒過(とか)」です。相続放棄の手続きは、原則として「自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内」に、故人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に申述しなければなりません。
この3ヶ月という、相続方法をじっくり考えるための期間を「熟慮期間」と呼びます。
この期間を1日でも過ぎてしまうと、自動的にすべての財産(借金も含む)を相続する「単純承認」をしたとみなされてしまうのが原則です。
財産の調査や相続人の確定に時間がかかり、3ヶ月以内に判断が難しい場合は、家庭裁判所に「相続の承認又は放棄の期間の伸長」を申し立てることで、期間を延長してもらえる可能性があります。この申し立ては、必ず熟慮期間内に行う必要があります。(参考:裁判所ウェブサイト「相続の承認又は放棄の期間の伸長」)
熟慮期間の起算点に注意!
「相続の開始があったことを知った時」とは、通常は被相続人が亡くなった日、そして自分が相続人であることを知った日を指します。
しかし、前順位の相続人が放棄したことで自分が相続人になった場合は、「前順位者が相続放棄したことを知った日」から3ヶ月となります。起算点がいつになるかは状況によって異なるため、注意が必要です。
これらの理由から、相続放棄を成功させるためには、「財産には一切手を付けない」「期限を厳守する」という2つの鉄則を徹底することが、何よりも重要なのです。
とはいえ、『どこまでがセーフで、どこからがアウトなのか』を自分だけで判断するのは難しいところです。迷う場面が少しでもあるなら、期限内に一度だけでも専門家の意見を聞いておくと安心です。
▶︎相続放棄の期限やNG行動について、今の状況を専門家に整理してもらう(相続サポート)
\相続手続き・遺産分割・相続税などの総合相談サービス /
相続放棄が認められない事例について


理論は分かっていても、実際の行動が「処分行為」にあたるのかどうか、判断に迷う場面は多いものです。ここでは、ご相談でよく伺う典型的な失敗事例を、より詳しく掘り下げてご紹介します。一つでも当てはまると危険信号です。
事例1:故人の預貯金を使ってしまった
これは本当に多い事例です。故人の口座が凍結される前に、キャッシュカードで現金を引き出し、様々な支払いに充ててしまうケースです。
- 医療費や公共料金の支払い:「故人がお世話になった病院だから」「滞納して迷惑をかけられないから」という善意からの行動であっても、故人の財産から支払うと「債務の弁済」という処分行為にあたり、単純承認とみなされるリスクが極めて高いです。支払うのであれば、必ず相続人自身の財産から立て替えてください。
- 葬儀費用への充当:これは社会通念上、例外的に認められることが多いです。しかし、あまりにも身分不相応に豪華な葬儀を行い、多額の費用を遺産から支出した場合は、処分行為と判断される可能性もゼロではありません。常識の範囲内の費用にとどめ、領収書は必ず保管しておきましょう。
事例2:形見分けのつもりで財産を処分した
「これはただの古い服だから」「もう誰も乗らない古い車だから」といった自己判断は非常に危険です。財産的価値が客観的に見てゼロであると証明できない限り、どんなものでも処分は避けるべきです。
「財産価値ゼロ」の証明は難しい
例えば、故人が趣味で集めていた切手や骨董品などは、素人目には価値が分からなくても、専門家が見れば高額な値が付くこともあります。
価値がないだろうという思い込みで親族に譲ったり、廃棄したりした時点で「処分行為」とみなされます。形見分けは、家庭裁判所から「相続放棄申述受理通知書」が届き、手続きが完全に完了してから、慎重に行いましょう。
事例3:遺産分割協議に参加し、署名・捺印してしまった
相続人が複数いる場合、親族間で「遺産の分け方」について話し合いが持たれることがあります。この話し合い自体が「遺産分割協議」です。
この場で、「兄さんが家を継ぐなら、私は何もいらないよ。その代わり借金もお願いね」といった合意がなされ、その内容を記した「遺産分割協議書」に署名・捺天印してしまうと、法的には「一度は財産を相続する権利を認めた上で、その権利を他の相続人に譲った」と解釈されます。
これは相続人間の内部的な取り決めに過ぎず、家庭裁判所で行う「相続放棄」とは全くの別物です。債権者(お金を貸した側)から見れば、あなたは相続人の一人であり、返済請求をされた場合、「協議書で放棄した」という主張は通用しません。
これらの事例に共通するのは、「相続人としての権利を行使してしまった」という点です。相続放棄を少しでも考えているのであれば、他の相続人から遺産分割協議を求められても、「借金の調査が終わるまで判断できないため、協議には参加できない」とはっきりと意思表示をすることが重要です。
こまで読んで、『あ、これやってしまったかもしれない…』とドキッとした方もいらっしゃると思います。いきなり責められる場ではなく、状況を一緒に整理してくれる人がいるだけでも、気持ちが少しラクになります。
\相続手続き・遺産分割・相続税などの総合相談サービス /
死んだ親の借金を調べる方法はありますか?
親が亡くなり、悲しみに暮れる間もなく借金の心配をしなければならないのは、本当にお辛いことだと思います。しかし、正確な状況把握が、最適な選択をするための第一歩です。焦らず、以下の方法で網羅的に調査を進めていきましょう。
1. 自宅や所持品の徹底的な確認(アナログ調査)
まずは、故人の生活空間に眠る手がかりを探します。デジタルな時代ですが、重要な書類は意外と手元に保管されているものです。
- 書類関係:金融機関からの郵便物は最重要です。消費者金融やクレジットカードの契約書・利用明細書、銀行からのローン返済予定表、督促状はもちろん、固定資産税の納税通知書(不動産の有無を確認)、確定申告書の控え(事業収入や不動産収入の有無を確認)、裁判所からの通知(訴訟や支払督促の有無を確認)などもチェックしましょう。個人間の貸し借りを示す借用書やメモが見つかることもあります。
- 通帳・キャッシュカード:預金通帳を記帳し、定期的な引き落とし項目を確認します。「カ)〇〇ファイナンス」のような見慣れない引き落としがあれば、それが借金の返済である可能性が高いです。
- その他:カレンダーや手帳に返済日の書き込みがないか、財布の中に消費者金融のカードが入っていないかなども確認します。
亡くなった後も数ヶ月は郵便物が届く可能性があるため、郵便局で転送手続きをしておくと、見落としを防げます。
2. 信用情報機関への情報開示請求(デジタル調査)
アナログ調査で何も見つからなくても、安心はできません。そこで最も強力なのが「信用情報機関」への情報開示請求です。これにより、故人の金融取引の履歴を客観的なデータで確認できます。
信用情報機関は法律で定められた機関
記事で紹介されているCIC、JICC、KSCの3つの機関は、貸金業法や割賦販売法に基づき、内閣総理大臣から指定を受けた「指定信用情報機関」です。
- CIC:主にクレジット会社の共同出資により設立
- JICC:主に消費者金融会社を会員とする
- KSC:主に銀行や信用金庫などが加盟
これらの機関は、消費者の信用情報を適正に管理し、金融機関に提供することで、健全な金融取引を支える公的な役割を担っています。
出典:金融庁|信用情報機関関係
信用情報開示請求のステップ
- 必要書類の準備:故人の死亡が確認できる戸籍謄本(除籍謄本)、請求者が相続人であることがわかる戸籍謄本、請求者本人の確認書類(運転免許証など)が必要です。
- 各機関への申込:CIC、JICC、KSCの3機関それぞれに申し込みます。郵送での手続きが基本となります。各機関のウェブサイトで申込書をダウンロードし、必要事項を記入します。
- 手数料の支払い:1機関あたり1,000円~1,500円程度の手数料を、定額小為替などで支払います。
- 開示報告書の受領:申込から1~2週間程度で、信用情報が記載された報告書が郵送されてきます。
どこに借金があるか全く分からない状況では、必ず3つの機関すべてに開示請求を行ってください。消費者金融はJICC、クレジットカードはCIC、銀行ローンはKSCと、加盟している機関が異なるため、一つでも欠けると全体像を見誤る危険性があります。この調査は、相続問題を解決するための羅針盤となります。
親の借金を知らなかった場合の知恵袋情報


「親が亡くなってから1年後、突然聞いたこともない金融業者から督促状が!借金なんて一言も聞いていなかったのに…もう3ヶ月の期限は過ぎているから、全額返済しないといけないの?」
知恵袋などでも頻繁に見られる、非常に切実なご相談です。しかし、ここで諦めるのはまだ早いです。判例上、借金などマイナスの財産の存在を全く知らず、そう信じることに相当な理由があった場合には、熟慮期間が過ぎていても相続放棄が認められる道が残されています。
法律で定められた熟慮期間の起算点「自己のために相続の開始があったことを知った時」について、裁判所は柔軟に解釈しています。
具体的には、「①被相続人の死亡の事実」と「②これによって自分が相続人となった事実」を知っただけでは不十分で、「③相続すべき財産(特に、判断の前提となる借金)の全部または一部の存在を認識した時」から熟慮期間がスタートすると考えるのが一般的です。
つまり、「親が亡くなったことは知っていたけれど、生前の暮らしぶりや家族からの話から、プラスの財産もマイナスの財産もないと固く信じていた。
そして、最近になって督促状が届き、初めて借金の存在を知った」という状況であれば、その督促状が届いた日(借金の存在を知った時)から3ヶ月以内であれば、相続放棄の申述が受理される可能性が十分にあるのです。
「相当な理由」を客観的に説明できるかが重要
ただし、この例外を認めてもらうためには、家庭裁判所に対して「なぜ今まで借金の存在に気づけなかったのか」という事情を、感情論ではなく、論理的かつ客観的に説明する必要があります。そのために「事情説明書(上申書)」という書類を作成し、申述書に添付します。
【事情説明書に記載すべき内容の例】
- 生前の被相続人との関係性(例:何年も会っておらず、生活状況を全く知らなかった)
- 被相続人の生活状況(例:質素な暮らしぶりで、借金があるとは到底思えなかった)
- 相続財産がないと信じた経緯(例:他の親族から「財産は何もない」と聞かされていた)
- 借金の存在を知った経緯(例:〇年〇月〇日、〇〇債権回収会社から督促状が届いた)
この手続きは、法的知識と経験が大きく影響するため、個人での対応は非常に困難です。熟慮期間経過後の相続放棄を検討する場合は、必ず弁護士などの専門家に依頼し、万全の体制で臨むことを強くお勧めします。
「もうダメだ」と一人で判断せず、まずは専門家の意見を聞いてみてください。そこに、解決への道筋が見えるかもしれません。
親の死を知らなかった場合の相続放棄
様々な事情から親と疎遠になり、何年も、場合によっては何十年も連絡を取っていないという方もいらっしゃるでしょう。そしてある日、他の親族や役所からの通知で、親が随分前に亡くなっていたことを初めて知る、というケースです。この場合、相続放棄はできるのでしょうか。
答えは明確です。たとえ親の死から何年経過していても、あなたが「親の死亡の事実」と「それによって自分が相続人になったこと」の両方を知った時から、3ヶ月の熟慮期間はスタートします。法律は、知りようがなかった人に対して、不利益を負わせることはしないのです。
このケースで相続放棄を申述する際、家庭裁判所が最も重視するのは、「本当に今まで知らなかったのか」そして「いつ、どのようにして知ったのか」という点です。これを客観的な証拠とともに示す必要があります。
- いつ知ったかの証明:例えば、他の親族から死亡の事実を知らせる手紙が届いたなら、その手紙と消印のある封筒が証拠になります。電話で知らされた場合は、その日時や相手、内容を詳細に記録したメモが重要です。
- なぜ知らなかったかの説明:戸籍謄本などを取得する過程で、親の死亡日と、自分がその事実を知った日との間に大きな隔たりがあることが明らかになります。その期間、なぜ連絡が途絶えていたのか、その経緯を事情説明書で丁寧に説明します。



カズです!この状況は、法的な手続きの前に、まずご自身の心の整理が必要ですよね。
長年疎遠だった親の死を知り、同時に借金の問題に直面する…その精神的な負担は計り知れません。焦る必要はありません。
まずはご自身の気持ちを落ち着けることを最優先してください。その上で、法的な手続きは専門家を頼るのが一番です。
あなたは一人ではありませんからね。
手続き自体は通常の相続放棄と大きくは変わりませんが、事情説明が非常に重要になるため、やはり専門家のサポートを受けながら進めるのが賢明な判断と言えるでしょう。重要なのは、「知った日から3ヶ月」というタイムリミットを逃さないことです。事実を知ったら、速やかに行動を開始してください。



いやー、ここまで読んでいただいてありがとうございます!
相続放棄って、言葉は知っていても、具体的なNG行動とか期限の話になると「え、そうなの!?」って思うことが多いんですよね。
特に財産調査は重要です。僕のお客様でも、信用情報機関に開示請求したら、知らなかったカードローンがゴロゴロ出てきた…なんてこともありました。
面倒でも、この最初の調査をしっかりやるかどうかが、後々の運命を分けると言っても過言ではありませんよ!
親の借金相続放棄できない知恵袋|具体的な対処法


親の借金は誰が返すのですか
親が亡くなった際、その借金の返済義務は、民法で定められた「法定相続人」が、法律で定められた割合(法定相続分)に応じて引き継ぐのが原則です。誰が法定相続人になるかには、明確な順位が定められています。
法定相続人の順位と相続分の基本
法定相続人は、被相続人(亡くなった方)との関係によって順位が決まっています。先順位の相続人がいる場合、後順位の人は相続人になりません。誰が相続人になるのか正確に把握するためには、相続人調査の方法と必要書類を理解しておくことが第一歩です。
| 順位 | 相続人 | 備考 | 法定相続分(配偶者がいる場合) |
|---|---|---|---|
| 常に | 配偶者 | 法律上の婚姻関係にある夫または妻。常に相続人となる。 | – |
| 第1順位 | 子 | 実子、養子、認知された子を含む。子が既に死亡している場合は、その子(被相続人の孫)が代襲相続する。 | 配偶者 1/2, 子 1/2 (複数いる場合は均等割り) |
| 第2順位 | 直系尊属 | 父母。父母が死亡している場合は祖父母。第1順位の相続人がいない場合に相続人となる。 | 配偶者 2/3, 直系尊属 1/3 (複数いる場合は均等割り) |
| 第3順位 | 兄弟姉妹 | 第1順位も第2順位もいない場合に相続人となる。兄弟姉妹が死亡している場合は、その子(甥・姪)が代襲相続する。 | 配偶者 3/4, 兄弟姉妹 1/4 (複数いる場合は均等割り) |
この順位がなぜこれほど重要かというと、先順位の相続人全員が相続放棄をすると、相続権が次の順位の相続人に移るからです。これを「相続権の移動」と呼びます。
例えば、第1順位である子供全員が相続放棄をした場合、次に第2順位である父母(故人の親)が相続人となり、借金の返済義務を負うことになります。
そして、父母も既に亡くなっていたり、相続放棄をしたりすると、今度は第3順位である兄弟姉妹に義務が移っていくのです。
自分だけ放棄しても問題は解決しない!親族トラブルの火種に
「自分さえ相続放棄すれば借金から逃れられる」と安易に考え、誰にも相談せずに手続きを進めてしまうのは非常に危険です。
ある日突然、高齢の祖父母や、事情を全く知らない叔父・叔母のもとに金融業者から督促状が届いたらどうなるでしょうか。
パニックになるのはもちろん、あなたに対して「なぜ何も教えてくれなかったんだ」と強い不信感を抱き、深刻な親族トラブルに発展する可能性があります。
相続放棄をする場合は、必ず次に相続人になる可能性のある親族に事前に連絡し、事情を丁寧に説明しておくことが、無用な争いを避けるための絶対的なマナーです。
借金の請求は、この相続順位に沿って行われます。まずは戸籍謄本を取り寄せて誰が相続人になるのかを正確に把握し、関係者全員で情報を共有しながら対応方針を決める必要があります。
親が借金を残したら子供はどうするか


親が借金を残して亡くなったと知った時、子供として選べる道は、法的に3つ用意されています。それぞれの選択肢には一長一短があり、財産の状況やご自身の考え方によってベストな方法は異なります。
どの方法を選ぶにしても、原則として3ヶ月の熟慮期間内に決断し、必要な手続きを行わなければなりません。
1. 単純承認:すべてを受け継ぐ
これは、預貯金や不動産といったプラスの財産も、借金や保証債務といったマイナスの財産も、すべてを無条件で引き継ぐという選択です。特別な手続きは必要ありません。
熟慮期間内に相続放棄も限定承認もしなければ、自動的に単純承認したとみなされます。また、相続財産を処分した場合も同様です。
【選ぶべきケース】明らかにプラスの財産が借金を上回っており、財産を引き継ぎたい場合。
2. 相続放棄:すべてを手放す
この記事のメインテーマである、プラスの財産もマイナスの財産も一切引き継がないという選択です。家庭裁判所への申述という法的な手続きが必要です。一度受理されると、原則として撤回はできません。
【選ぶべきケース】明らかに借金がプラスの財産を上回っている場合や、相続トラブルに一切関わりたくない場合。特に不動産を相続放棄したいときは、管理責任の問題も残るため、より慎重な検討が必要です。
3. 限定承認:プラスの範囲でマイナスを精算する
これは、相続によって得たプラスの財産の範囲内でのみ、借金などのマイナスの財産を引き受けるという、いわばハイブリッドな方法です。相続したプラスの財産で借金を返済し、もし財産が残ればそれを取得できます。もし借金の方が多くても、相続した財産以上に自分の財産から支払う必要はありません。
【選ぶべきケース】借金の額がはっきりしないが、どうしても手放したくない財産(先祖代々の土地や自宅など)がある場合。
限定承認は「伝家の宝刀」だが…
一見すると非常に合理的で便利な限定承認ですが、実務上はめったに使われません。その理由は、手続きのハードルが非常に高いからです。
- 相続人全員の同意が必須:相続人が一人でも反対すれば利用できません。
- 手続きが極めて複雑:申述後、債権者に対して公告(官報への掲載)を行ったり、財産の換価(競売など)を行ったりと、清算手続きが必要となり、時間も費用もかかります。弁護士など専門家への依頼がほぼ必須となります。
このように、限定承認は非常に使い勝手が悪いため、「伝家の宝刀」のような特別な選択肢とされています。利用を検討する場合は、法テラス(日本司法支援センター)などの公的機関や弁護士に相談し、そのメリットとデメリットを十分に比較検討する必要があります。
どの方法を選ぶべきか。その判断のすべては、正確な財産調査から始まります。まずはプラスとマイナスの財産を一覧表にまとめ、全体像を可視化することから始めてください。
離婚した父親の借金と相続放棄
「両親が幼い頃に離婚し、それ以来、父親とは一度も会っていません。その父が亡くなったと親族から連絡があり、どうやら借金を残しているようです。全く関わってこなかったのに、私が返済しなければならないのでしょうか?」
これは感情的には非常に納得しがたい状況ですが、法律上は明確な答えがあります。たとえ両親が離婚し、何十年も音信不通であったとしても、戸籍上の親子関係が解消されるわけではありません。
そのため、あなたは法律上の「子」として、第一順位の法定相続人となります。つまり、相続権があり、同時に借金を引き継ぐ義務も発生するのです。
したがって、借金を引き継ぎたくないのであれば、他のケースと全く同様に、ご自身が相続人になったことを知ってから3ヶ月以内に、家庭裁判所で相続放棄の手続きを行う必要があります。
疎遠だった親の相続では、特有の難しさがあります。
疎遠な親の相続で直面する3つの壁
- 感情の壁:「なぜ今さら自分が…」という割り切れない気持ちが、冷静な判断を妨げることがあります。しかし、感情と法律は別問題と割り切り、淡々と手続きを進めることが重要です。
- 情報の壁:故人の財産状況が全く分からず、調査が困難を極めるケースが多いです。どこに住んでいたのか、どんな仕事をしていたのかすら知らないこともあります。この場合も、まずは戸籍の附票で最後の住所地を調べ、信用情報機関への開示請求を行うのが基本の対応となります。
- 他の相続人の壁:父親が再婚し、自分には面識のない配偶者や異母兄弟(姉妹)がいる可能性も十分に考えられます。戸籍を遡って調査する中で、そうした存在が判明することがあります。相続放棄の手続き自体は単独で行えますが、後々のトラブルを避けるためにも、判明した他の相続人には、弁護士などを通じて連絡を取っておくのが望ましい対応です。
特に、亡くなった父親が元妻(あなたの母親)に養育費を支払う義務を負っていた場合、その未払い分も相続債務となります。
相続放棄をすれば、この未払い養育費の請求権も放棄することになります。何十年も会っていなかった親の借金問題に直面するのは精神的に大きな負担ですが、ご自身の生活を守るためにも、法的な義務と権利を正確に理解し、冷静に行動することが何よりも大切です。
最終手段としての親の借金と自己破産


自己破産は経済的再起のための公的制度
万が一、借金を相続してしまい返済が困難になった場合でも、自己破産という救済制度があります。裁判所の司法統計によれば、2022年(令和4年)の破産事件のうち、個人(自然人)の申立て件数は64,749件でした。
これは、自己破産が多重債務などから生活を立て直すために、一般的に利用されている法的手段であることを示しています。
万が一、相続放棄の3ヶ月の期限に間に合わなかった、あるいは、そうとは知らずに故人の財産を処分してしまい法定単純承認が成立してしまった…。
その結果、到底返済できないほどの多額の借金を背負うことになってしまった場合、どうすればよいのでしょうか。
絶望的な状況に思えるかもしれませんが、日本の法律には、こうした状況から経済的に再起するための救済制度が用意されています。その最終的な法的手段が「自己破産」です。
自己破産とは、自身の収入や財産では借金の返済が不可能(支払い不能)であることを裁判所に認めてもらい、税金や社会保険料など一部の債務を除いて、法律上、借金の支払い義務を免除(免責)してもらう手続きです。もちろん、相続した借金が原因で自己破産をすることも可能です。
自己破産だけが選択肢ではない
ただし、自己破産は最終手段です。その前に検討できる債務整理の方法として、「任意整理」や「個人再生」もあります。
| 手続き | 概要 | 主な特徴 |
|---|---|---|
| 任意整理 | 裁判所を通さず、弁護士などが代理人として債権者と直接交渉し、将来の利息カットや分割払いの計画を立てる。 | 手続きが比較的簡易。整理する借金を選べるため、保証人がいる借金を除外できる。元金は減らないことが多い。 |
| 個人再生 | 裁判所に申し立て、借金を大幅に(通常1/5~1/10程度に)減額してもらい、残りを原則3~5年で分割返済する計画を立てる。 | 持ち家などの財産を手元に残したまま、借金を大幅に圧縮できる可能性がある(住宅ローン特則)。 |
| 自己破産 | 裁判所に申し立て、支払い不能と認められれば、原則として全ての借金の支払い義務が免除される。 | 借金がゼロになる最も強力な手続き。一方、高価な財産は処分され、資格制限などのデメリットもある。 |
相続した借金の額、ご自身の収入や財産の状況によって、どの手続きが最適かは異なります。例えば、返済は難しいけれど自宅だけはどうしても手放したくないという場合は、個人再生が適しているかもしれません。
重要なのは、返済が難しいと感じた時点で、一人で抱え込まず、できるだけ早く弁護士や司法書士といった債務整理の専門家に相談することです。
専門家はあなたの状況を客観的に分析し、自己破産が本当に最善の道なのか、それとも他のもっと良い方法があるのかを一緒に考えてくれます。早めの相談が、ダメージを最小限に抑え、再スタートへの道を切り開く鍵となります。
相続放棄に抜け道のような方法はあるか
「相続放棄の期限は過ぎたけど、どうにかならないか」「プラスの財産だけもらって、借金だけを放棄するような裏ワザはないの?」…。追い詰められた状況で、こうした「抜け道」を探したくなるお気持ちはよく分かります。
しかし、ここで明確にお伝えしなければなりません。法律のルールを捻じ曲げるような、相続人にだけ都合の良い「抜け道」や「裏ワザ」は一切存在しません。
相続放棄は、相続人の権利を守るための制度であると同時に、債権者(お金を貸した側)の権利にも関わる厳格な法的手続きです。そのため、定められた要件を満たさなければ、決して認められることはありません。
巷の噂やインターネット上の不確かな情報に惑わされてはいけません。例えば、こんな誤解をしている方はいませんか?
危険な誤解:「借金を無視し続ければ時効になる?」
借金には確かに消滅時効(通常は最終返済から5年または10年)がありますが、「ただ無視していればいつか時効が成立して借金が消える」というのは大きな間違いです。
債権者は時効が成立しそうになると、裁判上の請求(訴訟や支払督促)といった法的手段に出てきます。裁判を起こされた時点で時効の進行はストップ(時効の中断・更新)し、判決が確定すれば時効期間はさらに10年延長されてしまいます。
督促を無視し続けるのは、問題を先送りするだけでなく、遅延損害金を膨らませ、事態をさらに悪化させるだけの非常に危険な行為です。絶対にやめましょう。
ただし、前述の通り、「抜け道」ではなく、法律が認める正当な「例外的な救済措置」は存在します。それが、「熟慮期間経過後の相続放棄」です。
これは、借金の存在を知らなかったことに「相当な理由」があると裁判所が認めた場合に限り、借金の存在を知った時から3ヶ月以内であれば申述が認められる、というものです。
これはルールを掻い潜る裏ワザではなく、予期せぬ借金によって人生が立ち行かなくなる人を救うための、法律に則った正当な手続きなのです。
結論として、あなたが取るべき道は、不確かな抜け道を探すことではありません。ご自身の状況を正確に把握し、法律の専門家のアドバイスを受けながら、法律という決められたルールの中で、ご自身にとって最も有利な解決策を見つけ出すことです。
それが、問題を根本的に解決するための、唯一かつ最も確実な方法と言えるでしょう。
「借金の話って、家族や友人にはなかなか打ち明けづらいですよね。『怒られたらどうしよう』と心配される方も多いですが、専門家は責めるのではなく、今できる選択肢を一緒に探してくれます。
\専門家が今できる選択肢を一緒に探してくれます。 /
親の借金の相続放棄についてよくあるご質問FAQ


ここでは、親の借金の相続放棄に関して、皆さんからよく寄せられる質問にお答えしていきます。



お疲れ様です!カズです。
いやはや、相続って本当にケースバイケースですよね。特に離婚した親御さんの相続とか、親の死を知らなかったとか…ドラマみたいな話ですが、現実に起こるんです。
僕がいつもお伝えするのは、「一人で悩んでください」ということ。今はネットで色々な情報が手に入りますが、あなたの状況にピッタリ当てはまる答えは、専門家と話す中でしか見つからないことも多いんですよ。
まとめ:親の借金相続放棄できない知恵袋の要点
- 親の借金があっても原則として相続放棄は可能
- 相続放棄が認められない主な理由は「法定単純承認」と「熟慮期間の徒過」
- 故人の預金を使うなど財産処分行為をすると放棄できなくなるリスクがある
- 相続放棄の期限は原則「知った時から3ヶ月以内」
- 親の借金の調査は郵便物確認と信用情報機関への開示請求が有効
- 借金を知らなかった正当な理由があれば3ヶ月過ぎても放棄できる可能性がある
- 親の死を後から知った場合、知った時から熟慮期間が始まる
- 相続放棄をすると次の順位の相続人に返済義務が移る
- 次の順位の相続人には事前に連絡を入れておくのがマナー
- 子供が取れる選択肢は「単純承認」「相続放棄」「限定承認」の3つ
- 限定承認は相続人全員の同意が必要で手続きが複雑
- 離婚して疎遠な親の借金も相続の対象となる
- 放棄できず返済不能な場合は自己破産という最終手段がある
- 法律を無視するような都合のいい「抜け道」は存在しない
- 困ったら一人で悩まず弁護士など専門家に相談することが解決への近道
▼今日からできるアクションプラン▼
相続放棄を検討するために、まずはこの3つのアクションから始めてみましょう。
- 【書類の確保】故人宛の郵便物や預金通帳、契約書など、手元にある書類をすべて一箇所に集めて、借金の手がかりがないか確認する。
- 【期限の確認】故人が亡くなった日(または、その事実を知った日)を確認し、カレンダーに「3ヶ月後の期限日」を大きく書き込む。
- 【相談先のリストアップ】市役所の無料法律相談や、法テラス、お近くの弁護士・司法書士事務所など、相談できそうな窓口をインターネットでいくつか探しておく。
不安な気持ちはよく分かりますが、まずは落ち着いて行動することが大切です。あなたなら、きっとこの問題を乗り越えられます!
ここまで読み進められたということは、それだけ真剣に向き合ってこられた証拠だと思います。あとは一人で抱え込まず、少しだけ外の力も借りてみませんか。
\専門家が今できる選択肢を一緒に探してくれます。 /
▼あわせて読みたい関連記事▼











