
死後の手続きって、思っている以上にたくさんありますよね。
私も親の葬儀を経験したとき、想像以上にバタバタして、「あれもこれも…誰がやるの?」と頭を抱えました。
そこで最近注目されているのが「死後事務委任」です。
この死後事務委任という制度を利用すると、亡くなった後の手続きを信頼できる人に任せることができます。
でも、「死後事務は誰がやるべきですか?」「費用が高いんじゃないの?お金がないと無理?」という不安もありますよね。
実際、死後事務委任の費用はいくらですか?という声や、行政書士に頼むべきか、社会福祉協議会や自治体にも相談できるのか悩んでいる方も多いです。
さらに、イオンのような民間サービスや、銀行では対応できないことも知っておく必要があります。
もし「どこに頼むのが正解?」「トラブルやできないことって何?」と感じているなら、この記事がきっとお役に立てるはずです。
では、死後の事務処理を委託する契約や死亡事後委任とは?といった内容を、一緒に整理していきましょう。
- 死後事務委任で依頼できる内容とできないことの違い
- 費用の相場やお金がない場合の対応方法
- 行政書士や自治体など依頼先の選び方
- トラブルを防ぐための注意点と契約の基本
死後事務委任の意味と必要性とは

死後事務は誰がやるべきですか?
もし突然ご家族が亡くなったら、何をどうすればいいのか戸惑う方は多いと思います。
中でも「死後事務」と呼ばれる手続きは、思っている以上にやることが多く、想像以上に大変です。
死後事務とは、死亡届の提出や葬儀の手配、住んでいた家の解約、保険や年金の手続きなど、亡くなった後に発生するさまざまな事務処理のことをいいます。
では、実際にこれを「誰がやるべきなのか?」というと、多くの場合は家族や親族が行います。
ただ、現代ではそれが難しいケースも増えてきているのが実情です。
例えば、ある60代の女性のケースをご紹介します。
その方は「おひとりさま」として長年一人暮らしをしており、兄弟姉妹はすでに他界。
身寄りもなく、地域の見守りサービスに登録していましたが、万が一の時に死後の事務処理を誰に頼めばいいか悩み続けていたそうです。
結果として、行政書士との間で「死後事務委任契約」を結び、すべての事務を任せることで安心感を得たというお話でした。
このように、家族に頼れない人や、家族がいても負担をかけたくないと考える人にとって、死後事務を誰かに委任することは大きな意味があります。
死後事務は相続や遺言のような財産面の処理とは異なり、法律上の相続人が自動的にやるべきと決まっているわけではありません。
そのため、委任契約を結んでおかないと、誰も手続きをしてくれず、困った状況になる可能性もあるんです。
具体的には、以下のような方が死後事務の担い手になり得ます:
担い手の種類 | 特徴 |
---|---|
家族・親族 | 一般的に最も多いが、負担が重い場合も |
友人 | 信頼できる関係性があるなら可能 |
行政書士・弁護士などの専門職 | 費用はかかるが、手続きがスムーズ |
社会福祉協議会や自治体 | 一部支援はあるが、全体を任せるのは難しい |
中には、「知り合いが亡くなった後、誰も手続きをしなかったため、数週間も遺体が引き取られなかった」というケースもあります。
これを防ぐためにも、生前に誰に死後事務を任せるのかを決めておくことがとても大切です。
このとき締結するのが「死後事務委任契約」と呼ばれるものです。
この契約があると、たとえ法的な相続人でなくても、葬儀や家の片付け、公共料金の解約などを代行してもらえるため、周囲に迷惑をかけずにすみます。
そして、死後の安心を自分で準備できる手段の一つとして注目されています。
では、実際にこの契約を結ぶ際に必要な費用はどれくらいなのでしょうか?
死後事務委任の費用はいくらですか?

結論から言えば、「死後事務委任の費用は内容や委任先によって異なりますが、おおよそ10万円〜100万円**ほどかかるのが一般的です」。
ただ、これはあくまでも目安であり、依頼する範囲や相手によって金額は大きく変わります。
まず、費用の内訳をわかりやすくまとめてみました:
項目 | 費用の目安 | 内容 |
---|---|---|
契約書の作成費用 | 約3〜5万円 | 行政書士・弁護士への依頼料 |
公正証書化の手数料 | 約1〜2万円 | 契約の信頼性を高めるための手続き |
委任報酬 | 約50〜100万円 | 死後の手続き実施にかかる基本報酬 |
預託金 | 実費相当(10〜50万円) | 葬儀や遺品整理などに備える前払い金 |
例えば、私の知人の父が地方に住んでいた際、遺品整理を含むすべての死後事務を行政書士に依頼しました。
その時の費用は合計約85万円で、内訳は葬儀代が40万円、遺品整理が20万円、契約手数料が10万円、その他雑費が15万円程度だったと聞いています。
結果的には、「自分たちではできなかったことをすべて専門家に任せられた」という安心感があったそうです。
一方で、死後事務委任契約の費用をできるだけ抑えたいという方も多いと思います。
そういった場合は、次のような工夫が考えられます。
- 必要最低限のサービスだけに絞る(葬儀+死亡届の提出など)
- 民間ではなく、社会福祉協議会や自治体のサービスを活用する
- 事前に「遺言書」を併用して、支払い方法を明確にしておく
ただし、気をつけていただきたいのは、「安さ」だけで委任先を選ぶと、事務が不十分だったり、希望どおりに手続きされないリスクもあることです。
ある高齢の男性は、費用が安いからとネットだけで契約した業者に任せたものの、葬儀が希望していた方法とまったく違った形で行われてしまったという失敗談もありました。
これは契約内容が不十分だったことと、確認不足が原因でした。
つまり、費用は大事ですが、信頼できる相手としっかり契約内容を確認することが最も重要です。
費用感と信頼性、この両方をバランスよく考えて準備することが、後悔しない死後事務委任につながります。
そして次に、もし「お金がない場合」はどうするのか、という問題についても触れておきたいところですね。
死後の事務処理を委託する契約は?
亡くなった後の手続きというのは、想像以上に多くて複雑です。
たとえば、死亡届の提出、葬儀の準備、家の片づけ、公共料金の解約、SNSの削除、遺品整理やペットの行き先の確保まで──これらの「死後の事務処理」を、生前のうちに誰かに任せておくための方法が、「死後事務委任契約」です。
これは正式には「委任契約の一種」で、自分が亡くなった後に行ってほしい手続きを、生前のうちに信頼できる第三者に委託する仕組みです。
例えば、「生涯独身で、遠方の親戚としかつながりがない」という方がいらっしゃいました。
その方は、生前に行政書士と死後事務委任契約を結び、亡くなった後の連絡・葬儀・遺品整理・公共料金の手続きまでをすべて依頼していたため、スムーズに事務処理が行われたとのことです。
逆に、契約をしていなかった別の事例では、知人が亡くなってから2週間、誰も遺体を引き取れず、自治体による「無縁仏」としての対応になってしまったという悲しい出来事もありました。
では、どのような項目を委託できるのか、主な項目を表にまとめてみました。
委託できる主な死後事務 | 内容の例 |
---|---|
葬儀関連 | 火葬、納骨、葬儀の内容指定、喪主の代行など |
事務手続き | 死亡届、年金・健康保険の抹消、公共料金の解約など |
財産の整理 | 遺品整理、部屋の明け渡し、契約解約など |
デジタル関連 | SNSアカウント削除、ネットバンクの停止など |
対人連絡 | 親族や知人への連絡、勤務先への連絡など |
このように、多岐にわたる死後の手続きを他人に任せるには、法的にしっかりと効力のある契約書の作成が必要です。
特に葬儀や財産の扱いなどは、遺言と組み合わせることで、より強固な意思表示が可能になります。
死後事務委任契約は、単に「誰かにお願いする」だけでは足りません。
例えば、私が以前聞いた話では、亡くなった方が知人に口頭で「葬儀を頼む」と伝えていたにもかかわらず、遺族と連絡がつかず、結果的に遺志と異なる形で葬儀が行われてしまったそうです。
このようなことを防ぐためにも、正式な書面による契約が非常に重要なんです。
この契約を結ぶには、行政書士や弁護士に依頼するのが一般的です。
ただし、費用や対応範囲が異なるため、複数の専門家に見積もりをとって比較することが大切です。
そして次に、この「死後事務委任契約」と似たような名称で混同されがちな「死亡事後委任」についても正しく理解しておくことが大切です。
死亡事後委任とは?

「死亡事後委任」とはあまり聞き慣れない言葉ですが、これは実際には法的な契約名ではなく、通称や誤用として使われるケースが多い言葉です。
多くの方が「死後の手続きを誰かに任せたい」という意図でこの言葉を使われますが、正式には「死後事務委任契約」を指している場合がほとんどです。
つまり、「死亡事後委任=死後事務委任契約」と考えて問題ないのですが、注意点があります。
それは、「死亡したあとに契約を結ぶことはできない」という点です。
例えば、「亡くなった後、知人がすべての手続きをやってくれるだろう」と思っていても、法的に何の効力もない場合、手続きを進められないことがあるんです。
これは実際にあったケースですが、ある男性が「死後は友人に全部お願いする」と言って、何も書類を残さずに亡くなってしまいました。
その結果、遺体の引き取り、賃貸物件の退去、家財道具の処分、どれ一つとしてスムーズに進まず、友人が行政や管理会社と長期間にわたって交渉する羽目になったのです。
しかも法的権限がないために、結局は身元引受人でもない親戚に手続きが引き継がれ、友人の好意が報われなかったという苦い話でした。
こうしたトラブルを避けるためにも、正式な「委任契約」としての手続きを生前に行っておくことが必要になります。
つまり、死後の委任内容は、必ず「生前」に契約しておかないと意味がないということなんですね。
言い換えれば、「死亡事後委任」とは「死後事務委任契約」の別表現であり、その意味を正しく理解し、必要な契約と手続きを事前に済ませておくことが、本人の意思を尊重し、家族や知人の負担を軽減するためのカギとなります。
このように考えると、次に重要になってくるのが「死後事務委任で実際にどこに依頼できるのか?」という選択肢です。
死後事務委任の費用や依頼先の選び方

費用 お金がない人はどうする?
「死後のことに備えたいけど、お金がないから何もできない…」と不安を感じていらっしゃる方は、少なくありません。
実際、死後事務を誰かに委任するには契約書の作成費用や手続きに必要な諸費用が発生するため、決して気軽にできることではないように見えるかもしれません。
ですが、「お金がないから何もできない」わけではありません。
実は、費用を抑える方法や支援制度を活用することで、無理なく備えることも可能なんです。
例えば、ある70代の男性は「年金だけで生活しており、預貯金は数万円」という状態でした。
「誰にも迷惑をかけたくない」と考えていたものの、死後事務委任契約を締結するだけの金銭的余裕はなかったため、地域の行政書士会に相談。
その結果、「最低限の葬儀と連絡・解約手続きに特化した簡易的な契約」で、必要最小限の費用に抑えた委任契約を結ぶことができたそうです。
このように、「費用がない人」が取れる選択肢には以下のような方法があります。
対応策 | 内容 | 費用感の目安 |
---|---|---|
最低限の委任内容に絞る | 死亡届提出・葬儀・納骨だけ依頼する | 10万〜30万円程度 |
預託金なし契約にする | 費用を後払いにし、遺産や保険で清算する方式 | 前払い不要(遺言併用) |
行政・支援団体に相談する | 社会福祉協議会や自治体の相談窓口を利用 | 要相談(無料〜低額) |
NPOや公益法人を活用する | 無料または低額の死後事務支援あり | 内容により無料も可 |
「預託金方式」で契約すると、事前にまとまった金額を預ける必要があり、これはお金に余裕のある方向けの方法です。
しかし、「遺産清算方式」といって、死後に発生する費用を遺言で指定した財産から支払う形式であれば、生前に多額の費用を準備する必要がありません。
注意点としては、財産がほとんどない場合や、相続人との関係が悪く、支払いに協力してもらえないケースでは、葬儀や清算が滞ってしまうリスクもあることです。
こうした事態を避けるためには、「遺言」や「死後事務委任契約」をセットで整えておくことが理想的です。
また、先ほどの男性のように、行政書士に直接相談することで柔軟に費用プランを提案してもらえる場合もあるので、「費用が払えないから無理」と諦める前に、まずは相談してみることをおすすめします。
そして、こうした費用問題の相談先として、実は多くの方にとって身近な存在があるのです。
自治体や社会福祉協議会は頼れる?

はい、自治体や社会福祉協議会は、費用や契約に不安を抱える方にとって、非常に心強い味方です。
特に「身寄りがない方」や「家族と疎遠な方」など、死後の事務について頼れる人がいない場合は、最初の相談窓口として頼りになります。
例えば、ある60代の女性が「子どももおらず、頼れる親族もいない」という状況で、地域の**社会福祉協議会(社協)**に相談したところ、「無料で行える葬儀サポート」や「公的支援制度の案内」を受けられたとのことです。
その結果、行政と連携して死後の事務を進める体制が整い、費用の心配も最小限で済んだそうです。
では、どんなサポートがあるのか、以下に代表的な支援をまとめてみました。
支援元 | 内容 | 対象者 | 費用負担 |
---|---|---|---|
自治体(福祉課) | 生活保護受給者向けの葬祭扶助制度 | 生活保護世帯など | 無料または公費負担 |
社会福祉協議会(社協) | 死後事務の相談・連携、専門家紹介 | 高齢者・障害者など | 無料〜相談内容により実費 |
成年後見センター | 任意後見や死後事務の連携支援 | 判断能力の不安がある方 | 実費(内容による) |
NPO・福祉団体 | 死後の整理、遺品・葬儀サポート | 高齢者、単身者など | 数千〜数万円程度から |
特に「葬祭扶助制度」は、生活保護を受けている方に対して、葬儀にかかる最低限の費用(約20万円前後)を自治体が負担してくれる制度で、多くの方が存在自体を知らずに困ってしまっています。
また、社協では無料の終活セミナーや勉強会を定期的に開催していることもあり、初めての方でも安心して相談できる雰囲気があります。
ただし、自治体によって制度の内容や対応の差があるため、「必ず同じサービスが受けられる」とは限りません。
一部の地域では、サポートが限定的だったり、申請に時間がかかる場合もあります。
そのため、早めに地元の自治体や社協に問い合わせて、自分に合った支援を探しておくことが大切です。
このように、公的支援をうまく活用すれば、「お金がないから死後の準備ができない」と思っていた方でも、自分らしい最期に近づくことができます。
そして次に、そうした公的支援ではカバーしきれない細かな手続きや思いの実現には、「誰に依頼するか」という視点が大切になってきます。
イオンの死後事務サービスとは?
イオンが提供する死後事務サービスは、近年注目を集めている民間型の終活支援サービスのひとつです。
「家族に迷惑をかけたくない」「生前にできる限りの準備を整えたい」と考える方に向けて、葬儀から各種手続き、納骨や遺品整理までを一括でサポートするプランが用意されています。
特に、イオンライフが提供している「おひとりさまの終活支援プラン」は、死後事務委任契約をベースとしながらも、わかりやすいパッケージ内容と価格設定が特徴です。
以下のように、サービス内容と費用が明確になっている点が、多くの人から評価されています。
プラン名 | 主なサービス内容 | 費用の目安(税込) |
---|---|---|
シンプルプラン | 葬儀・死亡届提出・火葬手配 | 約33万円〜 |
ベーシックプラン | 上記+住居の原状回復・公共料金解約など | 約55万円〜 |
フルサポートプラン | 上記+納骨・遺品整理・年金や保険の解約など | 約88万円〜 |
実際、ある60代の女性がこのプランを利用したとき、「すべてお任せできる安心感と、イオンという信頼感が決め手になった」と話していました。
彼女は子どもも身内もいない「おひとりさま」で、「万が一のときに誰が動いてくれるのか」と強い不安を抱えていました。
しかしこのプランでは、契約後すぐに専任担当がつき、遺言作成のアドバイスや、委任契約の公正証書作成までを丁寧にサポートしてもらえたそうです。
ただし、注意しておきたい点もあります。
このサービスはあくまで「パッケージ型の死後事務代行」であるため、個別のニーズには完全に対応できない場合もあるということです。
また、費用面についても、「パッケージ料金+オプション費用」が加算されることがあるため、契約時にきちんと確認しておくことが必要です。
このような民間型のサービスは、自分で契約内容を管理できる人や、生前のうちに費用を準備できる人には向いています。
一方で、より柔軟で法律的に確実なサポートを求める場合には、行政書士などの専門家に相談するのも良い選択肢になります。
行政書士に依頼するメリット
死後事務を確実に、そして法律的に整えておきたいと考える方にとって、行政書士に依頼するのは非常に有効な選択肢です。
行政書士は契約や遺言、公正証書の作成などの法務手続きに強い国家資格者であり、生前から死後までをトータルでサポートできる点が最大のメリットです。
たとえば、ある70代の男性が行政書士に相談したケースでは、「相続人がいないため、死後の財産整理や手続きに不安がある」ということでした。
その方は、以前に知人の死後に発生した遺品整理や公共料金の未納問題に巻き込まれ、大変な思いをしたことがあり、自分のときは誰にも迷惑をかけたくないと強く思っていたそうです。
行政書士に依頼したことで、以下のようなサポートを受けることができました。
- 死後事務委任契約の作成
- 遺言書の文案作成と公証人手続きの代理
- 財産管理や相続手続きの準備
- 関係者への説明や相談支援
このように、行政書士は「事務のプロ」であると同時に、「人との橋渡し」もしてくれる存在です。
費用については依頼内容によって異なりますが、以下の表を参考にしてください。
項目 | 相場(税別) | 備考 |
---|---|---|
死後事務委任契約書の作成 | 約5万〜10万円 | 公正証書にする場合は別途手数料必要 |
遺言書の作成支援 | 約3万〜10万円 | 証人費用・公証人費用が別途必要 |
財産・相続整理準備 | 約10万円〜 | 遺産額により変動あり |
なお、行政書士に依頼する場合は、信頼できる人物かどうか、対応経験が豊富か、死後事務に特化した実績があるかなどを必ず確認するようにしましょう。
中には「死後事務に詳しくない」行政書士もいますので、ホームページや相談時の対応から見極めることが大切です。
このように、イオンなどのパッケージ型と違い、オーダーメイド型で対応してくれるのが行政書士の魅力でもあります。
そして、次に迷いやすいのが「そもそも、誰に依頼すればいいのか?」という判断ポイントかもしれませんね。
銀行は死後事務をしてくれる?

銀行が死後事務を全面的に代行してくれるわけではありません。
多くの方が「大手銀行なら、死亡後の手続きや事務を全部やってくれるんじゃないの?」と期待されますが、実際にはかなり限定的な業務しか対応していません。
例えば、口座の凍結や残高の払い戻し、相続人への資産引き渡しなどは、銀行の役割の範囲に含まれます。
しかし、葬儀の手配や行政への死亡届の提出、公共料金の解約や遺品整理などのような生活実務に関わる死後事務は、銀行では原則対応していません。
具体的に、銀行が関わる代表的な死後手続きを表にまとめると、以下のようになります。
手続き内容 | 銀行対応の有無 | 備考 |
---|---|---|
預金口座の凍結と残高証明書発行 | ◯ | 死亡届の提出が必要 |
相続手続き(遺産分割協議後) | ◯ | 戸籍や遺言書など書類が必要 |
公共料金や携帯電話の解約 | × | 家族または委任者が対応 |
葬儀手配・納骨の段取り | × | 完全に対象外 |
クレジットカード・保険の解約 | × | 対象外。契約先に直接連絡が必要 |
年金や税金の届出関係 | × | 家族や専門家が対応 |
たとえば、私の知人が実際に経験した例ですが、父親が急逝し、銀行にすべて任せられると思っていたら、対応は預金の相続のみ。
公共料金の引き落としや年金の返納手続きなどはまったく対象外で、結果的に自分で20か所以上に連絡して回る羽目になったという話を聞いたことがあります。
また、銀行によっては「死後事務支援サービス」のような形で、生前からの信託契約を提案してくることもありますが、これは高額な信託手数料がかかるため注意が必要です。
それに、内容も限定的で「遺言執行」や「資産移転」の範囲にとどまるケースがほとんどです。
このように考えると、銀行はあくまで相続手続きに関する一部分だけを担う存在であり、死後事務の全般を任せられる相手ではありません。
そのため、もし家族や親戚に頼るのが難しい場合は、死後事務委任契約を専門に扱う行政書士や法人への依頼を検討したほうが安心です。
では、そういった死後事務委任で実際に気をつけなければならない**「トラブルの可能性」**についても見ておきましょう。
死後事務委任で起こりうるトラブル
死後事務委任契約は便利な制度である反面、内容や相手選びを間違えるとトラブルの原因になります。
特にトラブルの多くは、「信頼性のない相手との契約」「契約内容の不明確さ」「費用の事前確認不足」などが引き金になっています。
たとえば、ある60代の女性が、知人に紹介されたNPO法人と死後事務の委任契約を結んだのですが、実際に亡くなった後、そのNPO法人が連絡が取れない状態になっていたという事例があります。
遺された家族が困り果て、結局すべての手続きを自分たちで行うことになり、「あんなに信頼して契約したのに…」と後悔されたそうです。
起こりやすいトラブルのパターンを以下にまとめました。
トラブル内容 | 主な原因 |
---|---|
契約した相手と連絡が取れない | 個人や小規模法人などで信頼性に欠けた |
委任内容に含まれない事務があった | 契約内容の確認不足、説明不足 |
追加費用が発生しトラブルになった | 生前に費用の詳細や内訳の確認を怠った |
相続人と委任先との間で揉めた | 家族への説明不足、遺言と契約内容の不一致 |
契約書が公正証書になっていなかった | 無効リスクのある私文書契約のままだった |
このような失敗を防ぐには、信頼できる専門家(行政書士や士業法人)との契約を基本とし、必ず契約内容を公正証書にすることがポイントです。
また、家族や相続人にも事前に内容を共有しておくことで、死後のトラブルをぐっと減らせます。
いくら制度として優れていても、実行する相手が信頼できなければ意味がないという点を忘れてはいけません。
では、具体的に「どこに死後事務を頼むべきか?」という疑問についても、次に掘り下げていきましょう。
死後事務委任でできないこととは?

死後事務委任でカバーできる範囲は広いのですが、すべての死後手続きが可能というわけではありません。
実は、委任契約を結んだとしても、「法律で制限されていること」や「相続人にしかできないこと」など、一部の事務には対応できないケースがあります。
例えば、「相続に関わることや遺産分割の判断」は、死後事務委任の範囲外です。
これは、遺産分割協議や相続放棄などが法律上、法定相続人にしか権限が与えられていないためです。
委任された行政書士や法人が代わりに判断したり、署名したりすることはできません。
また、「遺言の作成・変更」も、たとえ生前に信頼できる委任先を見つけていたとしても、本人の意思がなければ無効になります。
つまり、遺言に関する手続きは本人の生前中に済ませておく必要があるということです。
以下に、死後事務委任でできること・できないことを、比較表で整理してみました。
内容 | 委任で対応可能 | 備考 |
---|---|---|
葬儀・火葬の手配 | ◯ | 死後事務の基本 |
公共料金・携帯・賃貸契約の解約 | ◯ | 通常の死後手続きとして対応可能 |
遺品整理・住居の明け渡し | ◯ | 整理業者への依頼や立会いも可能 |
遺産分割協議 | × | 相続人にしか権限がない |
相続放棄や限定承認の申述 | × | 法定相続人が家庭裁判所で行う必要あり |
年金・保険の受取手続き | × | 相続人が直接申請しなければならない |
遺言の作成や撤回・変更 | × | 本人の生前意思に基づくため委任不可 |
知人のケースで印象に残っているのが、「委任契約で全部できると思い込んでしまっていた」という例です。
生前に高齢の母親が行政書士に死後事務を依頼していたのですが、その契約書には遺産分割のことが含まれていなかったそうです。
いざ相続の話になったとき、相続人同士での話し合いが必要となり揉めてしまったのです。
結果として、弁護士を立てて調整することにまで発展し、想定外の費用と時間がかかってしまったという話を伺いました。
このように、「死後事務委任」と言っても、何でもできる万能な契約ではないことを理解することが重要です。
できることとできないことをしっかり把握しておくことが、家族のトラブル防止にもつながると思います。
そしてもうひとつ大切なのが、「そもそも、どこに依頼すれば安心なのか?」という点です。次はその疑問について深掘りしていきましょう。
死後事務委任を検討する際に知っておくべき重要ポイント
- 死後事務委任は生前に結ぶ委任契約の一種
- 委任契約により死後の事務手続きを第三者に託すことができる
- 相続や遺産分割には関与できないため注意が必要
- 家族が遠方にいる人や独居高齢者にとって特に有効
- 死亡届の提出や火葬許可申請などが依頼可能
- 携帯電話や電気などの解約手続きも含められる
- 葬儀の手配や遺品整理まで任せることができる
- 委任契約の費用相場は10万〜30万円程度が多い
- 死後事務委任は遺言書とは目的と役割が異なる
- お金がない場合は自治体や社協への相談も一つの選択肢
- イオンなど大手企業のサービスも選択肢として存在する
- 行政書士に依頼することで契約書の信頼性が高まる
- 銀行では死後の事務全般を担うことはできない
- 死後事務委任でできないことも明確にしておくべき
- トラブル防止のため契約内容は事前に家族と共有することが望ましい
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